梅宮大社・嵯峨天皇祭での梅津六斎念仏を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年8月28日(日)


梅宮大社・嵯峨天皇祭での梅津六斎念仏を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

梅宮大社。祭神は名前の通り、梅宮辰夫です。もちろん、嘘です。
本当の祭神は、本殿に酒解神・大山祇神をはじめとする、四柱。
相殿には、平安京を完成させたといわれる嵯峨天皇と、その后である橘嘉智子ら、四柱。
橘氏の氏神として山城国相楽郡に創建されましたが、遷都に伴い現在地の梅津へ移転。
一門から皇族に嫁いだ橘嘉智子が、この神社に祈願+仁明天皇を懐妊したことは有名であり、
「梅」という言葉の響きもあってか、子授け・安産の神としても崇拝されてます。
そんな梅宮大社の夏の大きなお祭りが、嵯峨天皇祭。
浅からぬ縁があることを反映して、嵯峨天皇の命日8/28に近い8月最終日曜に、祭礼を開催。
といっても、雅かつ堅苦しいものではなく、午前中には小学生らによる奉納相撲、
午後らは参道に露店が並び、夜には盆踊りも完備の、地元密着系のアーシーな祭りであります。
で、何といってもこの祭りの目玉は、梅津六斎保存会による奉納公演。
現在でこそ郊外住宅地の梅津ですが、昭和に入って高度成長期に至るまではずっと、農村。
京都の都市郊外の他の農村と同じく、ここでも大いに六斎念仏は隆盛したといいます。
中断や再興を経ながらも、その精神は現在の講中にもたっぷりと受け継がれ、
トップ画像を見てもらえば一発でお分かりの通り、六斎ならではのディープさを放っているのです。


梅宮大社は、梅津にあります。梅津があるのは、えと、四条通の西の果ての方です。
四条通をずっと西へ向かって真っ直ぐ進んだら、そのうち着きます。
写真は、近所の岩澤の梵鐘の資料館予定地。ただし、これが四条通に立ってるわけではありません。
これを目印にして西進すると、梅津を通り越して松尾に到達するので、気をつけましょう。


ビルの影に隠れてる「梅宮大社」の案内柱が立つ交差点で、四条通から参道へ入り、
ちょっと北上したあたりに現れる、梅宮大社。完全なる祭りモードであります。
ちなみに右の櫓は、盆踊り用。


参道は、屋台と子供で超満員状態。
狭い上に屋台が林立、そこへ人が集中して、かなりな混雑です。
楼門付近では座り込んでる人、多し。地べたに置かれた食い物を踏まないよう、気をつけましょう。


六斎の奉納は、境内にある舞殿で行なわれます。
舞殿を取り囲むように椅子が設置されてますが、おおむね満員状態。人気ですね。


19時開演予定ですが、5分前には早くも大太鼓による寄せ太鼓が打ち鳴らされ、
挨拶に続いて『発願』が開始です。そのまま、『六段』『さらし』『うかり』と、太鼓曲のメドレーへ。


開始5分で早くも、六斎定番演目の『四つ太鼓』へ突入。
こちらは、シンプルなソロがメイン。ひとりひとりが、丁寧にバチ裁きを見せてくれます。
今夜の奉納は、1時間のいわばショートエディット。なので、展開はかなりスピーディーです。


さらに早いことに、土蜘蛛登場。『頼光と土蜘蛛』であります。
といっても六斎の「獅子 vs 土蜘蛛」ではなく、狂言の「頼光×土蜘蛛」超ショートバージョンですが。
あ、写真は土蜘蛛ではなく、見栄を切る頼光。土蜘蛛はしっかり糸を吐いてます。


そして梅津六斎名物、『越後さらし』。
歌舞伎舞踊の芸を取り入れたという、サラシの手さばきを見せる芸物です。
中堂寺六斎では女の子たちがやってましたが、こちらは男たちが披露。
2メートルほどの長いさらしを絡ませることなく新体操のリボンのように巧みに踊らせます。


続いて『祇園囃子』。太鼓踊り打ちのバトルに加え、中盤は「入れ事」で盛り上げます。
どこの講中でも何でもあり化する演目ですが、梅津ではひょっとこが乱入。
ひょっとこ = 火男ゆえか、これも梅津六斎名物「火の用心」の巻物を披露してました。


ひょっとこが引っ込むと、今度はお腹がボテっとしたオタヤン、乱入。
オタヤンといっても、オタクヤンキーではありません。おたふくさんとか、そんなのです。
小さい娘を連れて愛嬌を振りまきながら、妊婦らしからぬハードさで太鼓を打ち込みます。


ラストはもちろん、『獅子と土蜘蛛』。土蜘蛛、再登場して、今度も大量に糸を吹きまくり。
獅子も、足が高過ぎて天井に隠れる倒立を楽々に決めてくれます。
客席にも糸を吹いて、めでたく終了。1時間ちょっとの熱演でございました。


六斎終了直後、門の外から音がすると思ったら、速攻で盆踊りが始まってました。
櫓を預かるのは、江州音頭の音頭取り。江州というのは、お隣の滋賀県のこと。
洛北の超古典的なものを除けばこれといってメジャーな音頭を持たない京都では、
江州音頭、かなりな勢力を誇っています。ダンスフロアは、輪を組む人々で早くも満員状態。


音楽は、ありもののテープではなく、櫓の上での生演奏。ライブですよ、ライブ。
といっても、歌うおじさんとちょっとしたパーカッション、それに合いの手だけですが。
なのにダンスミュージックとして普通に成立してるのが、凄いです。
特に歌のグルーヴが、凄い。リズムではなくメロで踊る日本人のソウルを見ました(本当か)。

人、多いです。人数自体も多く、境内が狭いため体感混雑度も、高し。
客層は、徹底的に地元仕様。観光客はおろか、近隣からの見物人さえ、いる気がしません。
親子連れが多く、若い家族連れからお年寄り同士のグループまで、とにかくネイティヴ感が炸裂状態。
ここに小中高生、DQN予備軍の子供達が混ざる、実に正しい祭りの光景が広がります。
カップルは、いたんでしょうか。いたかも知れませんが、完全に周囲に埋もれてます。
屋台と六斎では子供の量が変わりますが、友達が出るのをみるためずっと見物してる子も多し。
カメラマンは少なめ。単独者は、男女ともあまり見かけませんでした。
ディープサウスほどDQN全開ではないけれど、市内中心部ほど行儀もよくない、という感じでしょうか。

そんな、梅宮大社・嵯峨天皇祭での梅津六斎念仏。
好きな人と観たら、より六斎なんでしょう。
でも、ひとりで観ても、六斎です。


【客層】 (客層表記について)
カップル:若干
女性グループ:1
 (地元のDQNな姉ちゃんと子供)
男性グループ:1(地元の中高生)
混成グループ:若干(地元の中高生)
子供:1
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:1
中高年団体 or グループ:5
 (地元の家族連れを主体とした烏合の衆)
単身女性:若干
単身男性:若干

【ひとりに向いてる度】
★★★
アウェーといえば果てしなくアウェーであり、
再生産系のプレッシャーはなくもないが、
色気のプレッシャーは皆無。
人が多いので、細かいことが気にならない。

【条件】
日曜 18:45~20:30

梅宮大社
京都市右京区梅津フケノ川町30
拝観自由

阪急電車嵐山線 松尾駅下車 徒歩約10分
京都市バス 梅ノ宮神社前下車 徒歩3分

嵯峨天皇祭
8月最終日曜日 8:30~
六斎念仏奉納 19:00~

公式 – 梅宮大社
Wikipedia – 梅宮大社