実相院の秋のライトアップへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年11月20日(日)


実相院のライトアップへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

秋に全然なってくれない、2011年の秋。
11月も下旬だというのに、昼間は未だにシャツ1枚でも汗ばむ陽気が続いてます。
もちろんこの気温では紅葉も進まず、例年なら真っ赤に染まるはずの葉も、青きこと、春の如し。
先週は周山街道を北上して神護寺まで行きましたが、そこでさえまだ三分から五分の色づき。
じゃあ今度はもっと北へ行ったろかいとも思いましたが、足代がかさむので早々に止め、
そこそこ北にある実相院へ行ってみました。地図上では神護寺より実相院の方が北ですが。
実相院。岩倉にある、天台宗の門跡寺院です。またの名を、実相院門跡 or 岩倉門跡。
皇族とのゆかりは江戸初期に現在地へ移転してから特に深まり、「忍」の後水尾天皇もしばしば御幸。
皇孫の入寺も続き、1720年には東山天皇中宮の承秋門院大宮御所旧殿を賜りました。
四脚門・御車寄・客殿といった重要な建築遺構は、善阿弥の孫の又四郎の作と伝わる庭園、
そして各室にはりめぐらされた狩野永敬をはじめとする狩野派の襖絵などとともに、
優雅な女院御所の佇まいを老朽化に耐えながら保っています。
岩倉というのは、北山から宝ヶ池や国際会館をさらに北上したエリア。
現在はかなり宅地化されてますが、それ以前は寺以外は農地ばかりだったところであり、
ゆえにテロられるのを恐れた幕末期の岩倉具視がしばし「忍」してたことでも知られる土地ですが、
とにかくここなら紅葉が拝めるはずだろうと、出かけました。


叡電岩倉駅を出て、岩倉川に沿ってひたすら北上、実相院へ向かいます。
夜とはいえ、南部の人間には京都市内とは思えないくらい、牧歌的かつのどかな風景です。
そういえば免許更新で羽束師へ行った時、岩倉から来たという単車の兄ちゃんが、
ドブ川で泳ぐ亀を見て「こんな汚いのに・・・」と驚いてたのを思い出します。
ドブ川化してた頃の八幡・放生川を見て育った私の目には、その川、そんなに汚く見えなかった・・・。


で、到着した、実相院の山門。
川沿いを20分くらい歩き、岩倉具視幽棲旧宅の前を通り、やっとこさたどり着きました。
御所から移築された四脚門が、もったいなくもそのまんま入り口になってます。
門前が異常にダダっ広いですが、京都バスの終点になってるので、しょっちょう回転してます。


門跡提灯が並ぶ四脚門の前で、やはり御所ゆかりの御車寄をチラ見するの図。
紅葉に邪魔されてますが。しかもその紅葉の色づきは、微妙・・。


しっかり寄って色を確かめてみるの図。しっかり見ても、やっぱり、微妙・・。


御車寄の横にある玄関にある受付で、拝観料500円也を支払い、靴を脱いで中へ。
しかし、堂内一切撮影禁止。襖絵などだけでなく、床紅葉も何もかも、全部ダメです。
しょうがありません。「忍」です。暗黒をバックに、文字だけで門跡の優美さをご堪能下さいませ。


まず玄関付近では、実相院グッズ各種を優美に販売中。
目玉は、何と言っても後水尾天皇宸翰「忍」の字を石に刻んだ「忍のにぎり石」
徳川からの屈辱を耐え忍んだ後水尾天皇の心を思い、ぎゅっと握れば心が軽くなるという逸品。
私もぎゅっと握れば、写真が撮れないことを納得できるかと思いましたが、買いませんでした。


実相院グッズは他にも、確か松栄堂製だったと思う門跡印のお香、一般的なお守り系、
さらには撮影禁止の紅葉がばっちり印刷されたポストカードなど、いろいろありました。


グッズ販売スペースの横では、かの実相院日記の一部をガラスケースで展示中。
歴代の住職らが300年近くに渡って綴った日記が、1998年に武者隠しから発見されたもの。
管宗次 『京都岩倉実相院日記』 では幕末の坊官の冷ややかな視線がフィーチャアされてますが、
こちらの展示でも「近藤勇とかいうの」「竜馬とかいうの」みたいなノリの記述が、面白し。


そしてもちろん、後水尾天皇宸翰 「忍」 の本物も展示、というのは嘘です。


狩野永敬による障壁画も展示中、というのは嘘です、というのは嘘です。


本堂の中から観る紅葉。見えますか。見えませんか。
額縁効果が強力に効いた紅葉は、極めて美しい。この美しさ、写真になど撮れるはずがありません。
でも、撮れないのが、惜しい。まだ紅葉に至ってない青葉でさえ、ここから見ると、美しい。


美しい。「忍」です。


美しい。「忍」です。


ただただ、美しい。「忍」です。


堂内では、実相院名物の砂雪隠も展示されてます。
砂雪隠というのは、公家のお便所。もちろん、平民の我々が用を足してはいけません。
といっても、現代人なら誰もがことを躊躇するような開放的な作りになってますが。


そして実相院名物、つっかい棒。
あちこちに施された棒が、建物の老朽化がシャレにならんレベルであることを示してます。
「忍」だけではどうにもならんことであり、資金集めのコンサートなどもやってるようです。


で、紅葉です。お堂の外の庭はいくら撮ってもOKなので、盛大に撮りまくります。
まずは奥の書院と客殿との間にある、山水庭園。もう一歩の感はありますが、でも紅葉、全開です。


座り込んでじっと眺める人がいっぱいの、山水庭園。
とはいえ、それを混雑と感じることはなく、むしろこの景色を共有する「縁」こそを意識させられます。
隅っこには、携帯でどうでもいい話を延々としてるおばはんがいましたが。「忍」です。


庭はもう一つあって、こちらは枯山水。
比叡の山並を借景とした雄大な石庭だそうですが、夜なので、塀の向こうに見えるのは暗闇のみ。
いや、民家の明かりがチラっと見えました。あと、民家の音や声もかなり聞こえました。


こちらの紅葉はかなりもうひとつなので、砂のアップを。
ちょっぴり、「忍」です。でも、これでいいのです。簡単に満たされては、いけないのです。

人出は、まあまあという感じでしょうか。
実数は少ないですが、寺が狭い上に撮影が庭だけに限られてるので、客はそこへ集中。
ピンポイントで混みますが、前述の通り、印象としては混雑感はさほどありません。
全体の年齢層は若いです。というか、不思議なくらい、中高年や老人が見当たりません。
たまたま?交通が不便だから?ライトアップに興味を持たない見識眼があるから?
観光客か移民系の近隣住民かはわかりませんが標準語の人が多く、
また男同士のグループも結構見かけました。男グループはやっぱり幕末好きでしょうか。
カップル率は、夫婦らしき連中も含めると非常に高いですが、
はしゃいだり色気垂れ流し状態からは遠く、落ち着いてます。観光ハイの人は、ほぼいません。
単独は、独臭漂う若&中年男と、ディープな女。

そんな実相院門跡の秋のライトアップ。
好きな人と見たら、より紅葉なんでしょう。
でも、ひとりで見ても、紅葉です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:4
女性グループ:0
男性グループ:1
混成グループ:0
修学旅行生:0
中高年夫婦:2
中高年女性グループ:1
中高年団体 or グループ:0
単身女性:1
単身男性:1
【ひとりに向いてる度】
★★★★
客層は割と観光寺院的だが、
人数的にも雰囲気的にもプレッシャーはあまりない。
ひとりに向いてるとまでは言わないが、
ひとりでも割と落ち着いて拝観できると思う。

【条件】
日曜 18:55~20:10

 

実相院
京都府京都市左京区岩倉上蔵町121
通常拝観 9:00~17:00
(2012年度はライトアップはありません)

京都バス岩倉実相院下車 すぐ
叡電岩倉駅下車、徒歩約20分

京都 岩倉 実相院 – 公式

実相院 – Wikipedia