法住寺の身代不動尊大祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2013年11月15日(金)


法住寺の身代不動尊大祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

まつろわぬ者としての、
そんな鬼認識が生まれたのは、一説では平安末期からとも言われてます。
元来は、闇や異界といった不可視なる 「おぬ」 の世界を体現する存在だったという鬼は、
末法の世に入り、武家の台頭や盗賊の跋扈などで 「外部」 の都への侵入が常態化し始めると、
「可視化されたアウトサイダー」 ともいうべき新たな相貌が付加されるようになったそうです。
彼岸へ出かけて退治する存在から、此岸へ恐怖をデリバリーする存在と化した、鬼。
平安末期にそんな変貌を遂げた鬼が、同時代の帝である後白河上皇の法住寺陵を参拝するのは、
実に奇妙なことのようであると同時に、ある意味で実にもっともなことと言えるかも知れません。
法住寺陵があるのは、その名の通り、法住寺三十三間堂のすぐ傍にある寺であります。
藤原為光創建の元祖・法住寺の跡地に、後白河院は院政の舞台として広大な法住寺殿を築き、
熊野狂いを反映した新熊野神社や頭痛を具現化した三十三間堂など、多くの伽藍もばんばか建立。
それらは、三十三間堂を除いて大半が消失し、後にいずれも小じんまりと再興されましたが、
法住寺も木曾義仲に焼討された後に小じんまりと再興、以来、後白河院の御陵を守り続けてます。
そんな法住寺で11月15日に行われるのが、身代不動尊大祭。身代、すなわち身代わり。
この寺の不動明王像が、義仲の焼討の際に後白河院の身代わりになった伝説に由来するこの大祭、
狭い境内が視界ゼロとなる護摩や、狭い境内が炊き出し場化するうどん&ぜんざい奉仕など、
ネイティブ色濃い催しですが、何よりの目玉は鬼たちによる後白河院御陵参拝と鬼法楽でしょう。
ここだけ宮内庁管轄である御陵へ、金棒片手で堂々と入り参拝する、 「まつろわぬ者」 たち。
その姿は確かに奇観であり、ある種のアイロニカルなユーモアを感じさせるものですが、
同時に、鬼を遥かに凌ぐ 「アウトサイダー」 的な 「闇」 をその心の中に抱えていたかも知れず、
また実際に 「アウトサイダー」 の歌ばかりで歌集を編纂したりもした後白河院の御霊に、
鬼たちが鬼なりの流儀で真なるリスペクトを捧げてるように見えたりもします。
そんな妙なる法住寺の鬼法楽と墓参り、見に行ってきました。


法住寺へ向かうべく13時前に到着した、三十三間堂の巨大なる南大門。
イントロでも述べた通り、三十三間堂は後白河院が築いた法住寺殿の中で唯一現存する建物。
といってもこの門は、豊臣秀頼の建造ですが。また、実は三十三間堂自体も鎌倉時代の再建ですが。
三十三間堂は無論、修学旅行生や観光客で賑わってます。法住寺は、門をくぐったちょっと先。


音曲奉納が既に始まってるのか、笛の音に導かれて着いた、法住寺山門。
三十三間堂と違い、ネイティブな中高年ばかりが続々と集まって来る中に混じって、私も入山。
山門では、身代わりグッズ各種と共に、1本200円の護摩木を販売中。あ、入山自体は無料ですが。
奉仕されてるうどんやぜんざいは、ここで護摩木を買うと引替券がもらえるというシステム。


護摩木を買うかどうか保留したままとりあえず境内へ入ると、大混雑状態。
近年新築されたという本堂前に護摩壇が作られ、それを取り囲む形で床机が設置されてます。
狭い。猛烈に狭い。元々狭い上に、空いたスペースの至る所に床机が置かれるため、凄まじく狭い。
さらにそこで、うどんやぜんざいを乗せた盆を持つ爺さん婆さんが動き回るため、激烈に狭い。


で、そのうどんやぜんざいを奉仕するテント。鉄火場の賑わいであります。
見てると、うどんが食べたくなりました。鬼法楽まで時間があるので、護摩木、1本だけ買うか。
そう思って門へ戻り、護摩木を1本所望すると、受付の人が 「どうせなら2本、誰か身内の人でも」 .。
うどん、200円だと原価割れなんでしょうか。とにかくもう1本護摩木を奉納し、うどん券をゲット。


で、テントでうどん券とうどんを交換し、床机の僅かなスペースに座り、食す。
うどん、客層を反映してか、出汁甘め&麺柔め。インスタントとも店屋物とも違う、独特の味です。
御覧のように、かなり大きめなお揚げさんも入ってます。ただ、200円で原価割れするかは、知らん。
あと、後白河院像が安置されたお堂でも食事できるようですが、どういうシステムかは、知らん。


とかやってるうちに、13時、鬼が出てきました。
お堂から稚児が出てきて、続いて天狗も現れ、次いで御覧の鬼が登場。


坊さん+稚児+山伏+天狗+鬼の面々は、
本堂で坊さんのあれこれがあったあと、山門前で整列してから、移動開始。


で、護摩の隅を通り境内を出て、三十三間堂を横目に歩く、一行。


で、寺の隣にある宮内庁管轄の後白河法皇の御陵へ入る一行。


で、敬礼する係員に出迎えられたのち、御陵の前で整列する一行。


で、法要。坊さんが読経するのを、鬼は後ろでじぃ~っと見守ってます。
やんごとなき方へ頭を垂れるというより、ワルの親玉へ挨拶しに来たようにも見える風貌ですが。
あ、現在は宮内庁管轄の御陵ですが、明治の神仏分離まではここも法住寺が管理してたそうです。
かなりの重責とも言えますが、このおかげで法住寺が存続したとも言えるのかも知れません。


で、法要が終わると、行列は一行は御陵を退出。
またしても係員に敬礼で見送られながら、天狗や鬼の皆さんも退出。


で、人間と護摩壇とうどんとぜんぜいでゴッタ返す境内へ帰還。


坊さんの何ちゃらがあった後、まずは天狗によるワイルドなお清め。


続いて赤鬼+黒鬼+青鬼による鬼法楽、スタート。


護摩壇の周囲を、踊るというか、のっしのっしと練り歩く、鬼。


とてつもなくゴッタ返す中で、のっしのっしと練り歩く、鬼。


で、鬼法楽は5分ほどで、終了。続いて、山伏による山伏問答と矢射。


ラスボスっぽい袈裟を着た坊さんが経を読んだら、護摩、点火。


護摩、点火した端から煙が、爆発。


煙で視界ゼロに近くなり、あちこちから灰が降ってくる境内。


おばちゃんたちが煙を頭にかけようと手であおぐ中、燃えまくる護摩。


煙が落ち着くと、山伏たちは読経&火力調整&法螺貝&太鼓。


火が安定すると、護摩木を何十本とまとまった形で投入。


さらに燃えが進むと、近所から集まった燃えるゴミも投入。


ある程度燃えたところで、消防局が入り、護摩供、終了。
で、帰ります。人が減ってきたので、新ピカの本堂で軽くお参りを済ませ、退出。


で、帰り際に見かけた、山門前での笹酒接待 by 天狗。


で、さらに帰り際、撮るのを忘れてたので撮った、竜宮門。以上であります。

客層は、地元のネイティブな中高年女性がメインです。
2~3人のグループでやってくる人が最も多く、身代わりグッズを買い込む人も多し。
すぐ傍に三十三間堂があるものの、観光テイストの人間はさほどおらず。
カップルも、ちょっとだけいる程度。中年夫婦さえ、大したボリュームではありません。
そもそも、女性・混成を含め若者自体が少なく、たまにいるグループは外人だったりします。
単独は、男は大半がおっさんカメ。女は、地元系の中高年とディープな連中。
客数自体は大したものではないですが、上記の通り境内が狭くゴッタ返してるため、
体感人圧がかなり高めなのは覚悟しといた方がいいでしょう。

そんな法住寺の、身代不動尊大祭。
好きな人と行けば、より鬼なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、鬼です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:微
女性グループ:微
男性グループ:0
混成グループ:微
子供:0
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:3
中高年団体 or グループ:4
単身女性:微
単身男性:1

【ひとりに向いてる度】
★★★
色気的なプレッシャーは、全くない。
かなりネイティブ寄りだが、アウェー感を感じることもなし。
ただ、境内が絶望的に狭い上に混んでいて、
またうどん&ぜんぜいの盆が行き交うため、体感人圧は甚大。
煙の中での衝突事故&転覆事故には、要注意。

【条件】
平日金曜 12:50~15:00


法住寺
京都市東山区三十三間堂廻り町655
9:00~16:30

京阪電車 七条駅下車 徒歩駅下車約10分
JR&市営地下鉄 京都駅下車 徒歩下車約20分
京都市バス 三十三間堂前下車 徒歩約3分
 

法住寺 (京都市) – Wikipedia

法住寺 – 京都観光Navi