金札宮の寶恵駕籠巡行を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

2014年1月11日(土)


金札宮の寶恵駕籠巡行を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

伏見城築城以前の伏見は、決して何も無かったわけではありません。
巨椋池に面した月見スポットとして、伏見殿など貴族の別荘が数多く建ってたのであり、
いわゆる城下町としてのイメージは、当然ながら伏見城が建った織豊期以降の代物であります。
また、寺田屋を始めとする河川交通のターミナルとしての顔は、伏見城廃城後の産物であり、
恐らく最もポピュラーなイメージである酒蔵に至っては、河川交通が駄目になった明治以降の産物。
京都の中心部と風土が異なる伏見ですが、伝統と刷新の歴史を持つことは変わらないわけです。
もちろん伏見城築城による 「刷新」 は、その影響が現在に残るほど大規模&決定的ですが、
「伏見城以前」 の痕跡もまた伏見には多く残ってるのであり、御香宮神社などはその代表格でしょう。
そして、その御香宮神社とミステリアスな関係があるとかないとか言われる金札宮もまた、
そんな1000年以上前から続く 「伏見城以前」 の伝統を、現在に伝えてくれる神社だったりします。
金札宮。きんさつぐう。観阿弥の 『金札』 、あるいは金絡みのパワスポとしても、有名かも知れません。
750年に天照大神が天太玉命を遣わせたとか、貞観年間に橘良基が阿波国から勧請したとか、
創建について幾つか説はあるものの、結局 「昔過ぎて詳細不明」 となってしまうほどの古社・金札宮。
そんな金札宮で年明けに行われるのが、末社である恵比須社絡みの寶恵駕籠巡行です。
寶恵駕籠。新字だと、宝恵駕籠。いわゆる 「えべっさん」 です。 「えべっさんのほえかご」 です。
近くに巨大な大手筋商店街があるためか、その賑わいは実にネイティブな 「笹持て来い」 感に溢れ、
同時に、長きにわたりこの社が集め続けるネイティブな信仰も感じさせるものになってます。
金札宮に恵比須社が遷座したのは明治以降らしいので、比較的新しい行事なのかも知れませんが、
ある意味、伝統と刷新を繰り返した歴史を持つこの町らしい催しとも言えるのではないでしょうか。
というわけで、そんな金札宮の寶恵駕籠巡行、伏見の町をうろつくように見物してみました。
明治以降に始まった行事かも知れないのなら、明治以降の酒蔵にも敬意を表すべきだろうと考え、
というのは完全に嘘ですが、とにかく寒かったので、酒粕スープの麺類もおまけで連食。
寒くて、でも熱い新春の伏見を、一緒にうろついてみませんか。


京阪丹波橋駅から10分ほど歩き、金札宮へ12時半過ぎに着いたの図。
金札宮があるのは、伏見区の鷹匠町。そう、鷹匠町。実に城下町な響きを持つ地名であります。
が、元は御香宮の場所にあったとも言われ、また伏見城築城の際は鎮守として近くへ移転したとか。
往路は特に寶恵駕籠目当ての人が多いわけでもなかったですが、鳥居の前は既に人だかり。


で、狭いようで広く広いようで狭い境内に入ってみると、巡行準備でごった返し中。
寶恵駕籠は多分、全部で5挺。人で隠れてますが、笹などでデコられた駕籠がスタンバってます。
乗り込む女性は公募してるそうですが、一方、先斗町で見たことがある舞妓さんの姿もあったような。
寶恵駕籠、長く中断してた時期があり、中断以前は中書島の芸妓さんを乗せてたんだそうです。


境内の奥の方には、本殿や末社、そして御覧のえべっさん等の神オブジェあり。
あ、中書島というのは、伏見のすぐ近くにあった花街のこと。売防法施行で消滅しましたけど。
中書島の花街が消滅し、乗せる芸妓さんが居なくなったためなのか、寶恵駕籠は21世紀まで中断。
近年やっと復活し、また御覧のように恵比須像も新調され、商売繁盛で鯛釣りまくりなわけです。


本殿にも、しっかりお参りします。私の頭上へ金が降って来ますように、と。
いや、そんなレインメーカーな神かどうかは知りませんが、効くと嬉しいので、祈っておきます。
伝承に於ける 「金札」 は、天照大神に遣わされた天太玉命が、降臨を示すべく降らせたもんだとか。
ただ、 「金が降ってくる」 のに違いはありません。現世利益欲丸出しで、熱心に祈ること、しばし。


と、降金を祈願してる内に、寶恵駕籠巡行、ジャスト13時に出発。
以降、「ほえかご~ほえかご~」 という声と共に伏見の町を巡る様、写真の羅列でどうぞ。


金札宮を出てすぐに公園で休憩、巡行再開して、ほえかご~ほえかご~。


そのまま行列は大手筋に入って、ほえかご~ほえかご~。


大手筋商店街を隈無く回るように、ほえかご~ほえかご~。


大手筋では笹を配ったりもしながら、ほえかご~ほえかご~。


笹を配った芸妓役の女性たちは、また駕籠へ乗り、ほえかご~ほえかご~。


大手筋から納屋町、そして竜馬通り商店街へ、ほえかご~ほえかご~。


竜馬通り商店街で観光客に喜ばれながら、ほえかご~ほえかご~。


というわけで、寶恵駕籠行列はこのまま寺田屋近くまで進み、しばし休憩。
暇なので、私は中書島にかろうじて残ってる、御覧の遊廓跡の建物なんかを見たりしましたよ。
駕籠の巡行に芸妓を出せるということは、中書島、それなりに芸妓の数も揃う廓だったんでしょうか。
建物、現在は空き家。誰か、買うか借りませんか。 (注・2015年現在は居酒屋か何かが入居)


で、寺田屋前では、観光バスが爆走する中で記念撮影中。


で、巡行再開すると、再び竜馬通り商店街で、ほえかご~ほえかご~。


大手筋を突っ切って、神社近くの町へ、ほえかご~ほえかご~。


酒蔵のマジな工場が並ぶ町を、ほえかご~ほえかご~。


力餅の前でも、ほえかご~ほえかご~。


普通の道でも、ほえかご~ほえかご~。


魚屋の前でも、ほえかご~ほえかご~。


伏見中の道でも、ほえかご~ほえかご~。


で、16時過ぎ、寶恵駕籠の行列は金札宮へ帰還。
伏見ならではの賑わいと華やかさに溢れた巡行でございました。じゃ、帰りましょうか。


と思ったんですが、腹減った。おまけに、寒い。何か暖かいもん、食いたい。
それも、伏見ならではのもん、食いたい。伏見ならでは+暖かい食いもんといえば、やはり酒粕。
大手筋の中華屋・冨士が、昼に粕汁を出してた記憶がありますが、夕方以降もやってるかは、不安。
というわけでやって来たのは、ラーメン店の玄屋。酒粕ラーメンなるメニューで有名な店です。


オーダーしたのは言うまでもなく、その酒粕ラーメン。確か、780円くらい。
スープは普通の豚骨に酒粕が入ってる感じ。で、チャーシュー&揚げ&細い大根が乗るという。
チャーシューと酒粕の相性は、ナイス。ただ、ちょっとぬるい。暖を取る意味では、何か物足りないな。
後から入って来たおばちゃんは、 「熱めで」 とわざわざ断った上で、醤油ラーメンを頼んでました。


物足りないので、ちょっと歩いた先にあるうどん店・やまびこへ。
「安くて、なおかつ美味い」 というベタな言葉を忠実に具現化したような、至福の店であります。
入口のセンセーショナルなうどんオブジェで入店を躊躇うと、人生を損すること、間違いありません。
ここには、酒粕うどんがあるんですよ。私はいつも牛すじうどん+ライスばっかり食ってますが。


で、酒粕うどん。うどん出汁に酒粕、具は揚げと細い大根とにんじん。
美味い、美味い。目の前でおっちゃんがうどんを打ってるのを見ながら食うので、余計に美味い。
それにしても、この細くて柔目なうどんの美味さよ。また、かしわの柔らかさも、一体何事なんでしょう。
付属の生姜を少しずつ入れ、最後に全入れで、極楽。値段も580円で、さらに極楽。伏見、最高。

寶恵駕籠巡行、見物客は基本的に地元の人しかいません。
というか、祭りの関係者の身内以外は、ほとんどいないという感じでしょうか。
見物客のノリ&巡行する人のノリは、いわゆるえべっさん感、ささもてこい感があり、
伏見らしいワイルド風味もありますが、DQN爆発というわけでは全くなく、普通といえば普通。
カップルは、地元系を含めても、ほとんどなし。そもそも、身内以外に追尾する人もなし。
単独は、カメのおっさん少しいる程度でありました。

そんな金札宮の、寶恵駕籠巡行。
好きな人と見たら、よりほえかごなんでしょう。
でも、ひとりで見ても、ほえかごです。

【客層】 (客層表記について)
カップル:微
女性グループ:若干 (地元)
男性グループ:0
混成グループ:0
子供:0
中高年夫婦:2
中高年女性グループ:2
中高年団体 or グループ:6
単身女性:0
単身男性:若干

【ひとりに向いてる度】
★★★
色気のプレッシャーは、全然なし。
ただ、出る方も見る方も、ネイティブ感はかなり強い。
他所者には、アウェー感が若干強めかも。
大手筋と寺田屋前で、軽く見るのもいいかも知れない。

【条件】
土曜 13:00~17:00


寶恵駕籠巡行
毎年 多分1月10日前後 開催

金札宮
京都市伏見区鷹匠町8
通常拝観自由

京阪&近鉄電車 丹波橋駅下車 徒歩約8分
JR奈良線 桃山駅下車 徒歩約20分
京都市バス 肥後町下車 徒歩約5分

京都伏見・金札宮 – 公式

金札宮 – 京都風光