大原・三千院の幸せを呼ぶ初午大根焚きへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2014年2月9日(日)


三千院の幸せを呼ぶ初午大根焚きへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

大根焚きは、12月にだけ行われるものではありません
2月でも、行われることがあります。何故なら、冬に食べる大根焚きは美味いからです。
まして、白い雪の中で白い湯気を立てながら熱々の大根を頂くとなれば、その美味さは尚更。
更に、その場所が風格ある門跡寺院なら、至福の喜びが五臓六腑に染み渡るというものでしょう。
そんなナイスなロケーションの大根焚きを2月に行うのが、洛北・大原の三千院であります。
三千院。もちろん 「きょ~と~、お~はらさ~んぜ~んい~~ん」 で知られる、あの三千院です。
最澄が開いた叡山・円融房に始まり、皇族の入寺により門跡化するも長きに渡り各地を転々、
明治初頭に至ってやっとこさ声明の聖地&念仏の里たる大原へ落ち着いた、門跡寺院・三千院。
そんな由緒や経緯より、昭和期に生まれた 「恋に疲れた女がひとりでやって来る」 というイメージや、
あるいはバリバリの観光寺院としての印象の方が強い気もしますが、とにかく偉い寺であります。
偉い寺ゆえか、観光寺院のイメージの割に客寄せイベントはさほど行わない三千院ですが、
たまに庶民テイストな行事もやってて、それが2月の初午に行われる 「幸せを呼ぶ初午大根焚き」
しば漬の産地として有名な大原の畑において、味がしみやすい大根を有機農法で栽培し、
特別祈祷した上で煮込んで冬空の下で頂くという、正に大原の地の利が生きた大根焚きです。
素晴らしい、実に素晴らしい。有り難い、実に有り難い。仏の御心が染み渡るというものであります。
あ、いや、仏の御心といっても、大根焚き、無料ではありませんよ。当然でしょう、門跡ですから。
拝観料、要ります。割引とかも、ありませんよ。通常料金です。当然でしょう、門跡ですから。
ただ、大根はおかわりし放題。何杯でも食えます。それこそが、仏の御心です。門跡の御心です。
そんな大根焚き、恋にも疲れたわけでもなく、女でもありませんが、出かけてみました。
出かけたのは奇しくも、大雪の次の日。幸せは、呼べるでしょうか。


大原へのアクセスは、バスか車のみ。車がない私は、京都バスで鯖街道を北上中。
雪、八瀬の段階ではあまり残ってなかったのに、それ以北へ入ると一気に路肩が白くなりました。
混み方は、座席が埋まる程度。観光バス的な状態になるでもなく、皆さん、淡々と乗ってる感じです。
よく晴れて雪も全然ない三条から乗り、40分ほど揺られて大原へ近付くと、更に一面が雪だらけ。


自販機に 「冬眠中」 という張り紙がついてたりしたバスターミナルを出て、
あちこちに 「初午 大根焚き」の幟が立つ呂川沿いの参道を歩いて、三千院を目指すこと、しばし。
歩きながらよくよく見ると、雪、確かに残ってますが、かなり溶けてます。絵面はなかなかに、汚なめ。
日曜+大根焚きの割に、歩いてる人は若干少ない感じでしょうか。参道の店も、活気は今ひとつ。


どうでもいいことですが、私、三千院に何度か来てます。記事にはしてないけど。
祭などのネタを優先するので、ふらっと出かける感じの記事は後回し or 放棄しがちなんですよ。
つまり、三千院はそれくらい祭や客寄せイベントが少ないのであり、大根焚きは珍しい例外という感じ。
雪が美しいとはいえ、2月はやっぱり寒いので、オフシーズンのテコ入れでやってるんでしょうか。


「呂律が回らないほど雪が積もって寒い」 と、しょうもないことを言おうとしたら、
寒いのは確かに呂律が回らないほど寒いけど、雪はざっくり流れて、普通に清流化してる、呂川。
そういえば、人が少なめとはいえ、団体と擦れ違いました。観光客というより近所っぽい格好の団体。
それを見て、 「大根焚き、ひょっとすると、門前でタダで奉仕してるのかな」 と、一瞬思ったりして。


雪で時折足を滑らしそうになりながら、10数分歩いて到着した、三千院・御殿門。
この地へ落ち着いたのは明治以後というのが信じられないくらい、堂々たる風格を誇っています。
といってもここは、明治以前から別院 or 政所として機能してたとか。門、その時代のものでしょうか。
門前、若干少なめとはいえベタな観光客で普通に賑わい中。大根焚きタダ奉仕は、ないようです。


「雪で足元が悪い中お越し下さったので、せめてお大根だけでも」 てな感じで、
門の外で大根振る舞い+チケット不要な展開を期待したんですが、受付前にも奉仕の姿はなし。
やはり大根焚きは境内にて行われるため、門跡仕様な拝観料700円なりを払い、正々堂々と中へ。
チケットにある円融蔵というのは、近年出来た文化財の展示施設。私は寄ったこと、ないけど。


で、靴を脱いで上がり、何ちゃら観音に続いて見た、雪が残る坪庭。


撮影禁止である元三大師のおみくじを、撮影もせず引きもしないの図。


雪が残る名庭・聚碧園。


雪が微妙に残る、鎮浄水。


本尊、そして本尊横の人生相談コーナーみたいな何か。


地の言葉のガイドさんが 「天皇さんが座るとこ」 と言ってた、玉座。


宸殿から望む、極楽往生院、そして名物の青苔が雪に沈む、有清園。


有清園の、結城に塩瀬の素描の帯は特に揺れてない、池。


池のそばで雪に乗っかられても咲く、何らかの花。


細波の滝と名乗る、結城に塩瀬の素描の帯は特に揺れてない、池。


半溶けの気持ち悪い雪に囲まれながらじっと耐えている、わらべ地蔵。


と、すっかり 「恋に疲れた女がひとり」 な気分で、半溶けの雪景色を堪能しましたが、
私は独男ゆえ、重要なのは愛欲への絶望ではなく食欲への渇望ですよ、大根への渇望ですよ。
というわけで、 「色気より食い気」 な衆生を導く大根焚き看板に従って、幸せを呼ばれに向かいます。
石段を登り、ギター上達の功徳がありそうな弁財天の前をスルーして、会場の金色不動堂前へ。


金色不動堂は、写真左奥に写ってる、平成元年に作られたという新しいお堂。
その前のスペースへ御覧の様にテントを建てて、 「幸せを呼ぶ初午大根焚き」 は行われてます。
大根はテント下の大きな鍋で煮込まれ、盛られた椀はエンドレスで前のテーブルへ並ぶという流れ。
別料金は、必要無し。整理券やら引き替券も、必要なし。ただ椀を取って、食えばいいだけです。


で、私も早速テーブルから一椀をかっぱらい、頂きます。
大根、やや小さめに写ってて、実際やや小さめですが、本当はもう少し大きいですよ。


箸で割り、出汁のしみ込み加減を楽しんでから、パクリ。
味付けは薄味ですが、出汁と大根の旨みは、しっかりと出てます。上品に、美味し。


美味いので、早速おかわりですよ、おかわり。
椀を持って行って、 「おかわりください」 というと、盛ってくれます。で、またパクリ。


やっぱり美味いので、またおかわりですよ、おかわり。
おかわり、無制限なのかどうかは、知りません。気になる方は、自分で試して下さい。


で、満足して近くの休憩所へ入ると接待された、何らかの金粉入り茶。


休憩所を出た先にあった観音堂の前で屹立する、小観音像の壁。


呂川と違い、こちらは雪が残ってて呂律が回らないかも知れない、律川。


律川を橋で渡った先にいた、売炭翁念仏。


そして、液状化寸前の雪だるま。


またしても、液状化寸前の雪だるま。


陽が差し始めた庭を、雪をかき分け流れる何らかの水。


何らかの水の中に作成された、時限性のニセ仏足石


で、帰ります。帰り際に今度は正面から見た、往生極楽院と杉の木。


帰り際にまた接待された、何らかの金粉入り茶。


路傍の雪ダルマを眺めながら、やはり円融蔵をスルーして、拝観出口へ。


で、15時、まだ入ってくる人が結構いる御殿門を退出。ごちそうさまです。


帰る前、雪でグチャグチャの野道を歩いて、 「大原が見渡せる棚田」 へ寄りました。
天気が良い日は実に美しい場所ですが、この日はまあまあ。雪だるまがあるのは、僥倖ですが。
「何年か前は観光客は来なかった」 とか言ってる観光客とすれ違いながら、野道を下りてバス停へ。
帰りのバスは行列ができましたが、乗ると座れて、また僥倖。幸せ、少しだけ呼んだみたいです。

この日の三千院の客層は、カップルと中年夫婦がメイン。
何かが凄く薄いカップルと、40代前後の中年夫婦が、やたら多い感じというか。
カップルは、完全に外来風な感じ。それ以外の層は、観光系と近隣系が半々という感じ。
何故か、その中間である若夫婦や30代カップルは見当たりませんでした。たまたまでしょうか。
次に多いのが、団体ツアー風の中高年。子供を連れた親子連れも、そこそこいます。
全体的に観光テイストが強い客層ですが、渋味を求めてるのか、観光ハイ感は割と稀薄。
ただ、他の大根焚きのような地元密着的なネイティブテイストも、あまりありません。
単独は、男女ともほとんどなし。恋に疲れた女、最近は来ないんでしょうか。

そんな三千院の、幸せを呼ぶ初午大根焚き。
好きな人と食べたら、より大根焚きなんでしょう。
でも、ひとりで食べても、大根焚きです。

【客層】 (客層表記について)
カップル:3
女性グループ:若干
男性グループ:微
混成グループ:微
子供:0
中高年夫婦:3
中高年女性グループ:2
中高年団体 or グループ:微
単身女性:微
単身男性:微

【ひとりに向いてる度】
★★★
客層はかなりアウェーだが、
客数が知れてるため、人圧的にも色気的にも問題はない。
ただ、だからといって特に居心地がいいわけでもない。
イメージ通りな侘びの風情を求めるなら、
食欲はあきらめて、別の日に行くことを進める。

【条件】
日曜 13:00~15:20


幸せを呼ぶ初午大根焚き
毎年 初午の時期に開催

三千院
京都市左京区大原来迎院町540
2月 9:00~16:00

京都バス 大原下車 徒歩約10分
 

天台宗 京都大原三千院 – 公式

三千院 – Wikipedia