宇治田楽まつりへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2016年10月15日(土)


宇治田楽まつりへ行ってきました。もちろん、ひとりで。

宇治田楽まつり。宇治名物・茶団子に田楽味噌を付けて食いまくる祭、ではありません。
また、いわゆる田植舞などの農耕色が濃い民俗芸能が披露される祭、というわけでもありません。
平安後期から鎌倉期にかけて宇治の地で隆盛を誇ったという 「幻の芸能」 である 「田楽」 を、
現代らしい的な形で復活させようと宇治の人々が考え、1998年より開催されてるイベントであります。
宇治は無論、世界遺産・平等院をコアに擁し、『源氏物語』 宇治十帖の舞台としても名高い地。
これら栄華の源泉たる藤原氏摂関期以前から、貴族達は別荘で宇治の風光を愛でていたものの、
摂関期以後はセレブ化が更に進み、そのセレブ化進行が近隣住民の生活や祭礼にも強く影響。
元来は郷民が競馬などで盛り上がってたという氏神・離宮八幡宮の祭礼・離宮祭も、華美化が進み、
禁令が出るほどの煌びやかな衣装と共に、カオスな 「躍り」 系芸能としての 「田楽」 が、隆盛化。
この 「田楽」 は、編木 (ビンザサラ) や腰鼓などを奏でつつ躍動的に踊るという渡来的なフォームで、
高足など散楽の曲芸に加え、後には猿楽の要素さえ取り込んだという、風流の魁のようなもの。
どこが 「田」 だという感じのカオスの中では、農耕と全然関係ないプロ芸能者・田楽法師 が活躍し、
更にはそのプロを模倣した 「やってみた」 系のアマチュア下級武士まで混入するなど、中々にカオス。
洛中では、末法カオスの真最中に 「永長の大田楽」 なる風流パンデミック状態まで発生しますが、
宇治では、白川金色院周辺にプロ集団・本座が勃興し、先述の離宮祭を中心に派手な活動を展開。
本座は、京都や奈良の寺社でも芸を披露し、遂には春日若宮おん祭へも参勤するに至りますが、
やがて新興のプレ能たる猿楽に圧され始め、幕府の庇護が猿楽へ向かった室町以後は一気に衰退。
「田楽」 そのものも歴史の彼方へ姿を消し、芸態も詳細不明な 「幻の芸能」 となったのでした。
で、この 「幻の芸能」 を、宇治市民自ら躍って復活させるという公演が、宇治田楽まつりであります。
詳細不明ゆえ、その内容は基本的によさこい的な創作系で、カオスな高揚をこそ目指す感じ。
しかし、その開かれた感じと、市民自らが躍る楽しさが相まって、人気は年々上がってるようです。
そんな宇治田楽、茶団子も田楽味噌も食わずに、ひたすらカオスな舞踊を観てきました。


田楽まつり当日である10月第3土曜の17時前、京阪宇治線に乗って、京阪宇治駅へ到着。
夕方ゆえか、車内と駅に観光客の姿は見えず、宇治橋まで来て、やっと見かけるようになりました。
で、その橋上から、会場の宇治公園 = 宇治川・橘島を望む。宇治神社宇治上神社の、真正面です。
両社は、元・離宮八幡宮。離宮祭での 「田楽」 の賑わいは、正にこの辺で展開されてたのでしょう。


見かけるどころか今度は観光客だらけとなってた紫式部像の前を通り、宇治神社御旅所へ。
まつりで躍る田楽衆は、御旅所を出て宇治の街中を行列で練り歩いてから、橘島へ入るんですよ。
大半が中国人の観光客も、私同様に御旅所へ向かってますが、大半は途中の中村藤吉などが吸引。
行列が歩く筈の道も、車がガンガン走ってて、警備の姿はなし。田楽まつり、本当に今日なのかな。


とか思いながら御旅所へ着くと、煌びやかなる衣装でスタンバってる田楽衆集団の姿があり、
17:20過ぎには200人程のその田楽衆集団が、何故か近所の人ばかりが見守る中、御旅所を出発。
観光客はいなくてもカメだらけだろ、と思いきや、そういう風でもなし。カメは、会場で張ってるようです。
行列は、 「た~ら~り~」 という歌を歌いながら、楽器を持つ者は楽器も奏でながら、ゆっくり行進。


で、腰鼓をバンバン打ちながら中村藤吉本店の前を通る、行列。


ビンザサラをビンビンさせながら辻利本店の前を通る、行列。


行列&交通規制待ちの車を従えて進む、行列の先頭の天狗王。


陽が暮れた宇治橋西詰の交差点を見物客と共に渡る、行列。


陽が暮れ過ぎてほぼ真暗になった平等院の参道を進む、行列。


真暗過ぎてほぼ単なる闇な橘島へ架かる橘橋を渡る、行列。


で、行列は、花道を両側から眺める仕様の会場へ、入場。会場は無論、照明がありますよ。
花道の周囲は、満員。というか、超満員。人の頭越しでなく花道が見える場所は、ほぼありません。
朝霧橋へ上がれば何か見えるかなと思い、実際に上がるも、御覧の通り。人気ですね、田楽まつり。
会場前には、竹製の楽器などを売ってる売店兼受付あり。詳細なパンフがもらえて、助かりました。


で、田楽衆が入場を済ませたら、18:15、宇治田楽まつり本編がいよいよスタートです。
まず 『精霊降臨』 と 『火入れの儀』 が行われ、その後に天狗王が地ノ神を召喚すべく 『王舞』 。


続いては、 『入祭唱』 、そして笛の音が宇治川と月に呼びかける 『訪い』 。


人の壁の中で月の使者・子菟が躍るのは、 『惣躍り 序 「童舞」 』 。


童舞で覚醒した宇治川の水神が、人壁の中で龍の如く舞うのは、 『龍舞』 。


『言祝』 を挟んで、鳳凰の飛翔を大勢で表す 『惣躍り 破 「翔」 』 へ。


豊作に感謝して躍りながら、喜びを皆に報せて歩く 『行道囃子 「豊穣」 』 へ。


という感じで、宇治田楽まつり、ストーリーらしき流れに沿ってプログラムが進行して行きます。
カオス系というよりは、割と整然系です。ただし、振りは創作系な為、カオスなテイストは中々、強め。
あ、会場では何度も 「防寒に気を付けて」 とアナウンスが流れてました。何せ、川の中州ですからね。
ですが、篝火の為か、場の熱気の為か、あるいは照明が強過ぎる為か、寒さはさほど感じません。


で、宇治田楽の楽器・茶ちゃらと共に茶摘歌を歌い躍る 『宇治茶礼賛』 へ。


祭を見物に来た貴族の娘達を、乳母が案内する小芝居 『語り』 へ。


田楽らしい演目 『田楽躍』 の中で、隊形を変化させながら響くのは、振り鈴。


『田楽躍』 の中で、応神天皇の求愛歌の合唱と共に響くのは、腰鼓。


『田楽躍』 の中で、謎のアコーディオン状打楽器として響くのは、ビンザサラ。


盛り上がりまくった場へ火を注ぐ様に暴れまくる、 『散楽』 の獅子舞。


更に火を注ぐ様に宙を翔びまくる、 『散楽』 の京都ジャンピング体操クラブ。


そして、出演者全員が躍りまくる惣躍りのフィナーレ 『惣躍り 急』 。


で、観客も躍るよう請われる真のフィナーレ 『大団円 「さんやれ」 』 で、田楽まつり、終了。
時間は、19:45。 「幻の芸能」 がカオスに召喚されカオスに消えて行った、1時間半でありました。


で、帰ります。帰り際、どっかで飯でも食って行こうかなと思いましたが、開いてる店は極少。
田楽味噌絡みの何かを出す店があれば良いオチが付くのにと思いましたが、そんな店も特になし。
行きの行列の際、途中で気になるうどん屋を見かけたので寄ってみると、既に地元客の待ち客あり。
地元の人が楽しんでる祭なんだとしみじみ思いながら、腰鼓ならぬ腹鼓を鳴らして帰りましたとさ。

宇治田楽まつり、客の大半は地元風。
地元の烏合の衆という感じの層ですが、基本的には家族連れが多いです。
といっても、小さい子を連れた家族連れというよりは、成人した子とその親という感じが多め。
他にも中高年の様々な属性の客がいますが、観光客風の人だけはあまり見かけません。
カップルは、少なめ。というか、そもそも20代くらいに見える人間自体が、あまりいないというか。
駅から御旅所まで行く途中には死ぬほどいた中国人客も、何故か見かけませんでした。
単独は、男は大半がカメで、残りは変人系。女の単独は、限りなくゼロに等しいです。

そんな宇治田楽まつり。
好きな人と行けば、より田楽なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、田楽です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:若干
女性グループ:微
男性グループ:若干
混成グループ:微
子供:微
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:2
中高年団体 or グループ:6
単身女性:激微
単身男性:若干
【ひとりに向いてる度】
★★★
完全にネイティブ主体の客層であり、かなり混むが、
キャパ自体は広いので、アウェー感に苦しむことはないと思う。
演目も、無料で観れるものとしては十分に楽しい。
ただ、田楽や猿楽を本気で期待すると、感じが違うかも。

【条件】
土曜 17:00~19:45


 
 
 
 
 
宇治田楽まつり
毎年 10月第3土曜 宇治公園にて開催

京都府立宇治公園
京都府宇治市宇治
JR奈良線 宇治駅下車 徒歩約10分
京阪電車 京阪宇治駅下車 徒歩約10分
 

宇治田楽まつり実行委員会 – 公式