当尾・岩船寺へあじさいを観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

2018年6月21日(木)


当尾・岩船寺へあじさいを観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

「京都の端」 というのは、本当に単なる 「京都の端」 であるとは限りません。
実際にかなりな山が聳え、人界がその彼方にしかないような鯖街道 or 口丹波エリアであれば、
確かに 「端」 感 or 「どんつき」 感みたいなものを、多くの人が体感的に感じることでしょう。
しかし、 「端」 といっても隣府県とほぼ地続きな山城エリア南部では、この事情も変わってきます。
ざっくり言えば、お隣の文化的影響を色濃く受けた風土みたいなのが、形成されるわけですね。
正月や七五三などの行事がある度に、石清水八幡宮の駐車場へ大阪ナンバーの車が停まりまくり、
住民の大半の最寄駅が大阪府枚方市・樟葉駅だったりする我がホーム・八幡などは、その典型。
また、淀川を挟んでその八幡と向き合う山崎などは、大阪との境界線さえ何となく曖昧であり、
ランドマークのはずの山崎蒸留所まで大阪府島本町にあるくらい、 「端」 ならぬ 「端」 だったりします。
単なる 「京都の端」 ではない、もう少し変わった何かが、こうしたエリアには生まれるわけですね。
京都府最南端にあり、隣接する奈良とほぼ同然な当尾も、そんな 「京都の端」 です。
平城京の外郭浄土とされ、平安遷都前より南都仏教の影響を受け続けてきた、遠野ならぬ当尾。
世俗化を厭い、官寺では果たせぬ悟りの境地を求める奈良の僧侶は、こぞってこの地に草庵を結び、
やがて舎利塔が尾根を成すほど並んだことから、 「塔尾」 「当尾」 の名が付いたといいます。
鎌倉期に入ると、東大寺を再興すべく来日した南宋の石工・伊行末らによって多くの石仏も作られ、
現代まで残ったそれらの仏像は、当尾磨崖仏文化財環境保全地区 aka 「当尾の石仏の里」 も形成。
「端」 と呼ぶには、余りにゴージャスな文化遺産を持ち、そして徹底的に奈良な地なわけですね。
そんな当尾、通常ならもちろん仏像ハイキングと行きたいわけですが、近年はあじさいも割と有名。
浄瑠璃寺と並ぶ石仏の宝庫として、阿弥陀如来坐像や普賢菩薩騎象像を持つ岩船寺が、
昭和初期から栽培されてるというあじさいで評判を呼び、名所として京都・奈良で知られてます。
で、そんな 「端」 ならぬ 「端」 の地のあじさいを、今回観に行ってみました。


岩船寺、奈良から浄瑠璃寺経由で行く手もありますが、八幡の私は京都側から行く方が、安し。
なので、JRで加茂駅まで行き、奈良交通が走らせてる毎時1本のコミュバスで、当尾へ向かいます。
コミュバスは普通の路線バス車両で、ICカードも使用可能。14時過ぎ、私だけを乗せて発車しました。
再開発を途中で放棄したような駅前を抜け、しばらく走ると、バスの車窓はすぐに山、爆発状態化。


とんでもない高度の光景を車窓へ見せたりしながら、バスは乗降ゼロのまま山道を延々と登坂。
『どうでしょう』「四国さん」 状態であり、 「端」 ならぬ 「端」 というよりは、境界の山そのものです。
が、やがて普通の家がちらほら見え始め、その先でバスはスイッチバック停車。岩船寺、着きました。
帰りの加茂駅行きの時刻を確認すると、最終は16時51分。住民の方はバス、乗らないんでしょうか。


と、どうでもいいことを思いながら、山門へ。鎌倉期製という石風呂が、野晒しでお出迎えです。
夢でお告げを受けた聖武天皇が、行基に勅命で阿弥陀堂を建立させたのが始源だという、岩船寺。
後には弘法大師の甥・智泉大徳が入寺し、さらに後には塔頭39坊を誇る広大な寺になったんだとか。
御覧の石風呂は、その39坊から来る僧達がこの山門を潜る際、潔斎で使ってたものだそうですよ。


広い寺域を誇ったという岩船寺は、その後、承久の乱で焼失。後に再建されますが、また焼失。
江戸期に復興されますが、近代にはまた寂れ、打開策としてあじさい栽培が始まったそうであります。
現代の門前は、名物だという無人の土産販売所 「吊り店」 あり。開いてなかったけど、食事処もあり。
駐車場もあって、奈良交通の大型バスもあり。やっぱり、奈良から来る客の方が多いんでしょうか。


と、どうでもいいことを思いながら、境内へ。石段を登り、入門料を払って、中へ入ります。
で、入っていきなり目に入る、三重塔の両脇にあじさいが咲き乱れる、岩船寺の定番ビジュアル。


で、三重塔&咲き乱れるあじさいを微かな借景として、青紫のあじさい。


咲き乱れるあじさいを、あまり微かじゃない借景として、ピンクのあじさい。


何処か忘れたけど、とにかく何らかの石段を借景として、白のあじさい。 


何かの葉っぱと、その先に咲く青のあじさいを前景として、室町期製の重文・三重塔。


濃厚な葉の緑と、さらにその奥に広がる湿気を湛えた闇を借景として、赤紫のあじさい。


雨の水気を強く含んだ地面と、ピンクのあじさいを借景として、紫のあじさいを眺める。


雲間から顔を見せ始めた陽の光を光源として、ピンクのあじさいを眺める。


鎌倉期製の重文・十三重石塔を借景として、白のあじさいと茎を眺める。


鎌倉期製の重文・石室不動明王を借景として、紫のあじさいと葉を眺める。


多彩だけど割と赤寄りのあじさいを借景として、赤か白かよくわからんあじさいを眺める。


味わい深きあじさいが咲く味わい深き阿字池と、濃厚過ぎる緑を前景として、三重塔。


三重塔背後の高台にある公園へ上る野道と、白のあじさいを借景として、青のあじさい。


かなり登った先の野道を借景として、白のようでほんのり青のあじさい。


登る途中で見かけた、大みそかには除夜の鐘でも撞かれるという、鐘楼。


高台の公園手前で、青と紫のあじさいを借景として、青と紫のあじさい。


公園では、あじさいを借景として、出入り業者から差し入れられたらしき椅子を眺める。


公園から下へ降りる際に、葉と木の枝と光る空を借景として、水色のあじさいを眺める。


降りる途中、 「上は青で、下は赤が多いな」 とか思いながら、紫のあじさいを眺める。


さらに下へ降りる途中、十三重石塔を借景として、三重塔を後から眺める。


そして、緑に包まれた味わい深き阿字池を前景として、本堂を眺める。
あじさい、満喫させて頂きました。が、もちろんあの本堂にも行き、仏像も拝ませてもらいますよ。


岩船寺の本尊は、平安期製の重文・木造阿弥陀如来坐像。3m近くある、いい感じの仏像です。
が、印象としては何か、普通。むしろ、鎌倉期製の木造四天王立像の方が、個人的には惹かれます。
興福寺僧が発願したという、奈良全開な、四天王立像。しかし、京都府もしっかり有形文化財に指定。
何よりナイスなのは、他の寺よりも全然近くで像が観れるところでしょうか。四天王の筋肉感、凄い。


もっと凄いのは、御存知、普賢菩薩騎象像。藤原時代初期の、象に乗った普賢菩薩の像です。
超超至近距離で観ることが出来たので、他ではちょっと体験したことがないインパクトを受けました。
さらに凄いのは、その横にあった十二神将像。室町期製なのに、手で触れられそうな場所で展示中。
ほとんど檀林寺状態という。こちらも、いろんな意味で体験したことのないインパクトを受けました。


で、観るだけ観たら、インパクトと共に帰ります。両脇をあじさいに見送られながら、退寺。
帰り際、 「蚊、おらへんな」 という声を聞きました。確かに、いない。ここ、そんなに標高高いのか。


で、バスに乗るんですが、次発は16時51分の最終便で、暇あり。なので、石仏を観ておきます。
「笑い仏」 は是非観たいと思い、マップを手に歩き始めましたが、ロスト。迷う道がないのに、ロスト。
人は普通にいてたりするんですが、視界に広がる自然の手付かず感が凄く、圧倒されてると、ロスト。
野道へ入るポイントを見落としたまま歩き続け、壁に刻まれた弥勒菩薩の所まで来てしまいました。


「笑い仏」 は岩船寺に近い所にあるので、野道を戻り、着きました。 「笑い仏」 、笑ってました。
で、観たら、帰ります。迷った為にバスまでの時間がなくなったので、他の石仏は省略して帰ります。
バスの最終便を逃すと、加茂駅か、あるいは奈良まで歩くしかありません。ので、必死で野道を前進。
ほぼ16時51分ジャストで乗車し、 「四国さん」 な風景をまた見ながら、加茂駅まで揺られましたとさ。

この日の岩船寺、客層は基本、中高年しかいません。
おばさん連中を中心に、老夫婦やグループ客がいますが、この全員が中高年。
あらゆる属性において20代未満に見える者の姿は、見かけませんでした。
門前に大型観光バスが停まってましたが、観光客丸出しな者の姿は、これといってなし。
地元の言葉と地元の話題ばかりが聞こえてくる客層であり、
地元 or 近隣系で昔からの寺の記憶で来てる連中が多いという感じです。
普段からこうなのか、この日がイレギュラーな状態なのかは、わかりませんけど。
混雑は、たいしたことなし。ただ境内が狭いので、体感混雑度は若干高め。
単独は、私と、カメ親父がふたり。変なレコメン親父に、もうひとりの親父が捕まってました。

そんな当尾・岩船寺の、あじさい。
好きな人と観たら、よりあじさいなんでしょう。
でも、ひとりで観ても、あじさいです。

【客層】 (客層表記について)
カップル:0
女性グループ:0
男性グループ:0
混成グループ:0
子供:0
中高年夫婦:2
中高年女性グループ:6
中高年団体 or グループ:2
単身女性:0
単身男性:おっさん2名と私

【ひとりに向いてる度】
★★★★
あじさいのクオリティは、高い。
また、それ以外の風情も実に、素晴らしい。
ただ、アクセスが若干、しんどい。
あと、団体とバッティングした場合、狭さ的に恐らく地獄。

【条件】
平日木曜 14:40~16:00


 
 
 
 
 
岩船寺
京都府木津川市加茂町岩船上ノ門43
3月~11月 8:30~17:00
12月~2月 9:00~16:00

木津川市コミュニティバス 岩船寺下車すぐ
 

岩船寺 – 公式

岩船寺 – Wikipedia