2020年への年越しを、寺町通を歩きながら除夜の鐘を聴くだけで迎えました。もちろん、ひとりで。

2020年1月1日(水)


2020年への年越しを、寺町通で除夜の鐘を聴くだけで迎えました。もちろん、ひとりで。

年越しは、ある意味、 「境界」 と言い得ます。というか、 「境界」 以外の何物でもありません。
古き年の死と、新しき年の再生。何なら、 「境界」 の魔力が最高潮となる瞬間とも言えるでしょう。
自虐という表皮の下で、 「境界」 との対峙なるテーマをアカデミックに追求してきた当サイトとしては、
この 「境界」 もまた探求の必要ありと考え、2018年には大霊苑・東山浄苑での年越しを決行しました。
生と死の 「境界」 の極致たる霊苑への訪問。そしてその訪問を、敢えて昼間に済ますという、洒脱。
「真冬の夜に出かけるの、いい加減キツい。なので、昼に済ませた」 わけでは全くないこの荒行で、
当サイトは、道化の皮を被った当サイトらしいやり方で 「境界」 の探求を深めることが出来たのです。
この訪問に続く形で 「境界」 としての年越しを探求するにあたり、私は寺町通に目を付けました。
寺町通。言うまでもなく、長いアーケードが築かれた、京都で最も有名な繁華街のひとつであります。
が、秀吉による寺院集積が名の由来たる通でもあり、そもそも平安京の東端であった通でもあります。
洛中と洛外を隔てる 「境界」 の鴨川に沿い、あらゆる意味でその影響を受けてきた、寺町通。
近世に入り、鴨川の東側が発展した後も、寺の集積によって死と生の 「境界」 たり得てきた、寺町通。
その 「境界」 性に導かれて遊興・芸能が集まるようになり、現代にまで続く遊興地となった、寺町通。
年越しという巨大な 「境界」 と向き合うに際し、ある意味、これほど相応しい場所はないでしょう。
そう考えた私は今回、寺町通に響く除夜の鐘を聴きながら、2020年の年越しを過ごすことにしました。
綺羅星の如く並ぶ寺々から響く鐘の音。その音へ耳を澄まし、 「境界」 と向き合おうとしたのです。
無論、自分で鐘を衝いたりはしません。2019年と同様、偽りの主体性へ乗りかかる暇はありません。
聴覚を通じて精神を研ぎ澄ませ、音像の彼方に顕れる英知と悟りを、魂の眼で見届けてきたのでした。
そう、これはあくまでも新たな挑戦なのです。当サイトが当サイトであるために必要な挑戦なのです。
決して、大晦日が悪天だったので、アーケードのある道を特攻先に選んだわけでは、ありません。
断じて、立ち止まって音を聴くのさえダルいので、歩くだけで済ませたわけでも、ありません。


いや、大晦日当日までは、今回こそは根性入れてがっつり鐘回りをやろうとか思ってたんですよ。
でも当日夜になると、天候がどんどん怪しくなってきました。おまけに、途轍もなく寒くなってきました。
雨もちょっと降ってるみたいです。こんな夜にあちこち徘徊なんて、やってられない。冗談じゃないぜ。
というわけで、アーケードで雨風が凌げる寺町通を歩き、お茶を濁すことにします。大事なのは、命。


で、激寒の23時、アーケードの南限・四条寺町を下った空也寺の辺から、ブラ寺を始めるの図。
ただ雨は、降ってません。このまま持ってくれたら、アーケード以外の場所も歩こうかと思います。


そのまま北上して、天野屋利兵衛は男でござるの聖光寺が閉まってるのを、まずは拝むの図。


その北側では、京都大神宮が初詣の準備で開いてるけど、まだ用はないので素通りするの図。


そしていよいよアーケードへ入り、時宗道場で栄えし頃より続く繁華街・寺町通を、北へ進む。


伝統ある繁華街だけど、大晦日の深夜は当然店は閉まってるなとか思いながら、北へ進む。


とはいえ、大晦日なら蕎麦が食える店が少しはあってもいいだろとか思いながら、北へ進む。


隣の新京極通で明かりが見えたので店かと思ったら、錦天満宮が単に初詣の準備中。


その近くでは、 「くさがみ」 と呼ばれてるけど神ではなく仏の善長寺が、普通に閉門中。


さらにその近くでは、神でも仏でもなく、蕎麦でもないメロンパンの店が、何故か営業中。


それにしても、蕎麦が食えそうな店がありません。何処か開いてる筈と思ったけど、駄目でした。
正月準備をすっかり済ませた状態で、大半の店が閉店。むしろ、元日の夜のようにさえ見えます。


迎春顔ハメ板も、置きっぱなしだったり。あ、後の店は開いてますが、ゲーセンであります。


が、そのゲーセンの先では、蛸薬師堂が開いてました。おまけに、大根炊きもまだやってました。
蛸絡みの伝承を持ち、蛸薬師通の名の由来でもある、蛸薬師堂。大晦日の大根炊きでも有名です。
以前、蕎麦と共に大根を昼に頂いたことがありますが、こんな深夜まで大根炊き、やってるんですね。
蕎麦が終わってたのは無念ですが、此処の大根なら年越しの証として十分です。頂こうと思います。


大根は、寸志制。小銭がなかったので千円を入れたためか、割と大きな大根が入ってました。
参拝用の鐘をコーンと撞いてから、大根を持って奥へ。奥では、椅子席が常時8割ほど埋まる入り。
スピリチュアル系の音楽 or 声明を流しながら拝礼か供養かをやってるお堂の音を聴きながら、食す。
味は、実に大根。ほくほくと暖まります。蛸はもちろん入ってませんが、お揚げさんは入ってました。


食後は、蛸薬師通へ。温まったし、天気もまだ持ってるので、アーケード外も少し歩きます。


裏寺にも入り、光明寺も拝んでみたり。すると、何処かからゴーンと鐘の音が聞こえ始めました。
時間は、23:45。除夜の鐘、始まったようですね。とりあえず様子を見に、音の出元へ向かいます。


そして、音の出元のひとつ・誓願寺へ行くと、当然のように鐘撞きを待つ人達で混雑中。


もうひとつの出元・矢田寺へ行くと、これまた当然のように鐘撞きを待つ人達で混雑中。


さらにその北では本能寺も開いてたけど、鐘は別に鳴ってなかったので素通りし、北へ進む。


本能寺を過ぎるとアーケードが終わったけど、またも鐘の音が聞こえて来たので、北へ進む。


北から聞こえる鐘の音の出元・革堂へ着いたら、人がいなさげなので、境内へ入ってみるの図。


人が少なければ鐘が撞けるかも、とか思って入ると思いっきり混んでたので、トンズラするの図。
今年もやはり、視覚偏重の時代を哲学的に批判すべく聴覚に専念する、ということにしておきます。


で、革堂から逃げるように北上すると、すぐ隣では下御霊神社が、初詣のために開門してました。
時間は既に、12時半。初詣をするには、良いタイミングです。ただ、年越し蕎麦がまだ食えてません。
蛸薬師堂で大根は食ったけど、蕎麦はまだ。出来れば食ってから参りたい。でもこの先、食えるのか。
アーカードも終わりました。多分もう、無理。なので、徘徊を此処で終わり、初詣をすることにします。


平安京の怨霊を祀り、また古来より京都御所の産土神として崇敬されてきた、下御領神社。
寺町通とあんまり関係なさげなロイヤルな由緒を持つ社ですが、此処に建つ理由はやっぱり、秀吉。
出雲路にあった社が新町出水へ移った後、秀吉による寺の集積と共に、現在地へ移転したんだとか。
現在では、街中にありながらアーシーな雰囲気も漂う社となってます。ので、初詣でも無論、開門。


境内は、初詣客がちょくちょく来る程度。混雑はしてませんが、客は常に何人かいる感じです。
元日の準備が終わった状態で電気だけ点いてるような状態であり、何とも良い雰囲気になってます。
私も、御神酒が供えられてる舞殿を眺めたりしてから、参拝。今年一年の無事を怨霊に祈願しました。
頼むぜ、怨霊。あんた達を参るために、今日は此処まで歩いて来たんだ。だから、御利益、頼むぜ。


祈りながら御神籤も引いたら、凶が出ました。舐め腐った祈願の報いを、受けた気がしました。
いや、境内では 「凶が出た」 という声をよく聞いたので、単に凶の数が多いだけかも知れませんけど。
とにかく初詣も済ませた以上、もう帰ります。帰り際、一応麺類の店を物色しましたが、何処も閉店済。
ラーメンどころか、神社近くのなか卯河原町丸太町店さえ閉まってたので、蕎麦は諦めましたとさ。

年越し前後の時間の寺町通、路上は基本的に人があまりいません。
横河原町通からは珠に騒ぎ声が聞こえますが、寺町通ではその手の輩に遭遇しませんでした。
いるのは、単に寺 or 社へ向かってる人か、清掃の人。共に、客層を云々言う数ではありません。
寺社の客層については、概ね地元系。といっても、移住系やら旅行系とかも含めた形での、地元系。
居住系とでも言った方がいい感じでしょうか。とにかく、そんな感じの連中が集まってます。
属性的にはバラバラの烏合ですが、年齢的には20代から60代くらい。家族連れも割といました。
年越し夜歩きを寺町通でやるのが面白いかと訊かれたら、面白くも何ともありません。
ほとんどの店は普通に閉まってるし。開いてる寺社は寺社で、やたら混んでて並ぶのがダルいし。
ただ、どっかから聞こえる鐘の音と騒ぎ声を聞きながら、無意味にふらふら夜の通を歩くのは、
不思議と贅沢な感じがして、案外と楽しい気分にならないでもありません。
その辺も考慮すると、おすすめ度は★★★くらいでしょうか。

そんな寺町通での、年越し。
好きな人と越せば、よりゆく年くる年なんでしょう。
でも、ひとりで越しても、ゆく年くる年です。


 
 
 
 
 
蛸薬師堂 (永福寺)
京都市中京区新京極蛸薬師東側町503

阪急電車 河原町駅下車 徒歩約5分
京阪電車 祇園四条駅下車 徒歩約10分 
京都市バス 四条河原町下車 徒歩約5分

蛸薬師堂永福寺 – 公式
永福寺 (京都市) – Wikipedia

下御霊神社
京都府京都市中京区寺町通丸太町下る

市営地下鉄烏丸線 丸太町駅下車 徒歩7分
京都市バス 河原町丸太町下車 徒歩約2分
京阪電車 神宮丸太町駅下車 徒歩約5分

下御霊神社 – 公式
下御霊神社 – Wikipedia