寿司のむさし・三条本店の鱧の押し寿司をテイクアウトで食べました。もちろん、ひとりで。

2020年8月28日(金)


寿司のむさし・三条本店の鱧の押し寿司をテイクアウトで食べました。もちろん、ひとりで。

京都で極限まで安くを食べることができるのは、どの店なんでしょうか。
最もメジャーなメニューである落としでも、居酒屋とかなら安くで出してるところはありそうです。
また、スーパー系も視野に入れるのであれば、京都資本のフレスコでも落としは売ってたりします。
あのフレスコの落とし、自分で天ぷらにすると割と美味いんですよね。価格も、500円オーバー程度。
フレスコでは鱧天を見かけることもあり、こちらも300円くらい。底値と言えば、充分に底値でしょう。
しかし私は、その底値の底を割りたい。割ってみたい。割った先にある世界を、この目で見てみたい。
そんな野望を抱きながら夏を過ごしてると、割った先の世界、河原町三条にありました。むさしです。
むさし。本名、寿司のむさし。河原町三条に本店がある、京都の回転寿司のチェーンであります。
チェーンと言っても、はっきりあるのは本店と八条口店で、上堀川店はあったりなかったりする感じ。
ほとんど個人店に近い感じですが、でもかなり安く、持ち帰りにも便利なので、長く愛されてる店です。
で、此処の鱧の押し寿司が安い。2020年時点で、一皿100円台。これは、安い。あまりにも、安い。
今まで5000円とか3000円とかの予算枠で 「苦しい」 などと言ってたのが阿呆らしく思えるほど、安い。
あまりにも安い為なのか何なのか、夏季限定ではなく年柄年中食えるのがやや風流に欠けますが、
しかし、この過剰なコンビニエントさこそ実は、京都の鱧食の本質に近いものとは言えるでしょう。
当サイトの企画 「ひとりで食べる鱧」 でも度々書いてきた通り、鱧食はとても人工的な食文化です。
海のない街で、何とか生きて運べる魚を骨切りしてまで、食う。まるで生魚を創造するかの如く、食う。
「海行けよ」 という声を遮って、加工による仮構であることも厭わずに、食う。もう無理矢理に、食う。
鱧食が本来持つこの仮構性、現代ではむしろ100円台の寿司にこそ立ち現れるものかも知れません。
そんな高等な思念と共に私は、シーチキン感溢れる寿司を食いに、河原町三条へ赴いたのでした。
断じて、コロナ下でもいい加減に何かネタをやろうかと思ったけど、出かける気は全然沸かず、
テイクアウトの飯ネタで適当にお茶を濁そうとしてるわけでは、ありません。

【2023年以降、1皿200円以上になりました。それでもまだまだ安いけど】


で、事前に予約するの図。むさし、あちこちのサイトでテイクアウトのネット予約ができるんですよ。
当日に直で行っても全然買えますが、人の多いあの辺で待つのもあれなので、先に注文しときます。
画面で燦然と輝く、茶色のペーストを塗った雀牌の如き、押し寿司。値段も本当に2貫で100円台です。
え。店で食えるのに何でテイクアウトするのかですかって。何で貴方はテイクアウトしないんですか。


あ、鱧寿司だけ頼んで 「100円台で京都を満喫!!」 なんて非常識なことは、当然しませんよ。
鱧を軸に多様なネタをバランス良く入れ、大人な折詰を組んでみました。それでも、1300円強だけど。
え。マグロはどうしたですって。エビはどうしたですって。何で貴方は京都でそんなもん食うんですか。
え。そもそも生の魚がネタの握りが全くないですって。何で貴方は京都でそんなもん食うんですか。


で、取りに行った当日は、悪天。絶好のテイクアウト日和の中、三条大橋を渡って、むさしへ。
天気のせいか、人は少なめです。いやもちろん、それ以前にコロナ禍で観光客は減ってるんですが。
現状は、某国人が全滅し、某国人をこれまで避けてた京都近隣のしょうもない連中は少し増えた感じ。
あとは、生活者が歩いてるだけという。雨でも晴でもモヤ~っとした気分になる京都の街であります。


そんな街の三条通を西へ進んだ先、河原町通との交差点の北西角近くに、むさしの勇姿あり。
寿司のむさし・三条本店。1977年開店であり、私が覚えてる限りではずっと此処で営業してる店です。
持ち帰り用カウンターがあるのも、便利。ただし飛び込みの場合、この辺で待つ必要があったりします。
予約しといた私は、カウンターへ直行して予約を入れた名前を名乗り、すぐに寿司を受け取れました。


で、受け取ったらすぐ帰るんですが、その頃になって急に陽が差し始めました。一気に、暑い。
いくら生魚を完全排除した純京都仕様の布陣を組んだといっても、これでは持ちが不安。いや、恐怖。
またそれ以上に、そもそも待てません。鱧が私を呼んでる。鰻が私を呼んでる。穴子が私を呼んでる。
このまま寿司持ってまた京阪乗って家まで帰って食うのかといえば、それはちょっと待ちきれません。


今すぐ食いたい。此処で食いたい。でも店の中ではなく、他人がいない個室とかで食いたい。
とか思ってたら、うってつけの店がむさしの近くにありました。個室型ネットカフェであるCoCoNeです。
コクミンドラッグ三条店の脇に、 「完全個室」 の幟あり。やや高価ですが、ちょうど良いので入ります。
え。何の為にテイクアウトしたんだって。何で貴方はそんなに他人と店内で飯が食いたいんですか。


で、1時間500円くらいのCoCoNeの個室に入って、テイクアウトした寿司の折詰を、御開帳。
大人な折詰ですので、箱も大人な化粧箱を頼んでみました。プラス50円の大人の嗜みです。


箱内は文字通り、寿司詰め。そしてその中央には、大量の鱧の押し寿司。


その脇には、醤油とタレに囲まれた煮穴子。


別サイドの隅には、軍艦カニサラダ。


さらに別サイドには、テラテラ輝く鰻の押し寿司。


そして、茶色が多過ぎなメンツの中で駄目押しの如く茶色い存在感を放ってるのは無論、稲荷。
彼等こそ、私のオールスターです。スタメンです。ゴールデンベストです。決まった、完璧に決まった。
え。マグロはどうしたですって。エビはどうしたですって。何で貴方は京都でそんなもん食うんですか。
え。そもそも生の魚がネタの握りが全くないですって。何で貴方は京都でそんなもん食うんですか。


と、ひとしきり寿司を目で愛でて眼福を得たら、今度は口で福音を授からせて頂こうと思います。
あ、寿司に夢中で忘れてましたが、CoCoNeの部屋、こんな風。公式サイトの女の子、猛烈に可愛い。
そういえば此処、入ってるビルの地下が以前はキャパクラだったんですよね。コクミンドラッグの真下。
何か関係あったりするんでしょうか。そんな風流なことにも心を馳せながら、寿司、頂こうと思います。


で、まずは鱧。


鱧鱧鱧。


鱧鱧。


鱧鱧鱧。


鱧鱧鱧。という感じで拝んだ後、鱧の押し寿司、続けて食いました。計8貫、一気に食いました。
続けて食っても飽きはなく、安さから来る寂しさもなし。光るものもないけど、無難に美味い寿司です。
シーチキンに甘ダレと鱧の小骨をまぶしたようなテイストではありますが、ゆえに鉄板で美味いという。
調子に乗って本物の鱧感を出さないのも、好印象。あと、何故か食後に妙な満足感が湧いてきます。


この妙な満足感は、他のネタでもあり。一貫を割った半貫の鰻の押し寿司でも、同様です。
片方が腹側で、もう片方が皮側。共に、海のない街だけが持つ生臭さがほんのり楽しめます。


この川魚感みたいな感じ、今となっては貴重ですが、苦手な方はタレのどぼ漬けでどうぞ。
あと、半割れではないパックのものより、この半貫の方が異常に美味いのも、むさしマジック。


そんな鰻の余りタレを付けてもいける、煮穴子。


今や京都の伝統の味、カニサラダ。


そして、普通に三角で巻度合が浅い、稲荷。


で、あっという間に食い切りました。腹的にはまだ余裕がありますが、心的には満足感で一杯です。
そう、鱧寿司で濃厚に感じる妙な満足感が、塊になって押し寄せてきます。これまた、むさしマジック。
このむさしマジック、どこの回転寿司でも食える握りでメンツを組んでは、決して味わえないものです。
「シャリとネタに入った糖分のWアタックが脳に来ただけだろ」 といった批判は、一切受け付けません。


とはいえ、糖分ハイはそう長くは持たないので、少し休んでると腹の空きが気になり始めました。
まだもうちょっと、食えるな。鰻のタレも残ってるし。むさしまでもう一回行って、何か買ってこようかな。
上手い具合に、CoCoNeは途中退室が自由です。無人機での退出手続きは異常なくらい面倒だけど。
部屋のあるフロアで外出手続きして券を発行してそのバーコードでゲート抜けて店を出て、むさしへ。


外出手続きは面倒ですが、CoCoNe、むさしは徒歩1分以内の場所にあるから、とても便利です。
むさしの寿司を食いたい時は、すぐ買いに行けます。むさしの為にあるかのようなネットカフェですね。
え。最初からむさしの中で食えばそんな手間は発生しないって。何で貴方はそんなこと言うんですか。
え。お前こそ何を言ってるんだって。そんなことわかる人が、今の世の中にいるとでも言うんですか。


で、買って来たのは、これも今や京都の伝統の味、カリフォルニアロール


京都で生まれた仮構の海の幸には、海外で生まれた仮構の日本食が、ベストマッチです。
いや真面目な話、私は好きなんですよ、これ。ものは普通ながら、鰻のタレをかけると美味い。


こんな感じで。残りのタレをかけると中のアボガド&卵が反応して、異常に美味くなります。
回転寿司界で有名な甘ダレ×アボガド活用の数段上を行く感じ。これもまた、むさしマジック。


という感じで、タレどぼ漬けのカリフォルニアロールを食い切ると、流石に腹一杯になりました。
公式サイトの女の子と同じようなポーズを取ったりしながら、しばらく個室にてのんびりと休憩します。
このサイトによればCoCoNe、ドラマ版 『恐怖新聞』ロケがあったとか。 『恐怖新聞』 、読みたいな。
あ、そういえば地下にあったキャパクラに勤めてた女の子たちは、カノネって店に行ったそうですよ。


『恐怖新聞』 を探しに行こうかと思ったら、眠気に襲われソファに埋もれ、寝込んでしまいました。
そして、そのまま寝込み続け、キャバクラから恐怖新聞が届く夢で目が覚めたら、日が暮れてました。
安い飯で腹膨らませてそのまま寝るのって、最高に気持ち良いですね。これもきっと、むさしマジック。
で、魔法明けの気怠い体で無人会計を済ませたら、暑いけど熱気のない街を抜けて帰りましたとさ。

むさしの鱧の押し寿司ですが、
「京都で鱧を食った」 という既成事実を100円台で作りたい人には、確かにおすすめです。
が、普通に安くて美味いものが食いたい人にも、割とおすすめだったりします。
家食いでも胸焼けがしない辺は、特に良い感じ。その辺がちゃんとしてるのも、良い感じ。
二言目には 「ネタの良さ」 「企業努力」 とか言うようなヤクザな堅気の方には向きませんが、
そういうのに飽きてる方は、別の何かを発見 or 楽しめるのではないでしょうか。

そんな寿司のむさし・三条本店の、鱧の押し寿司。
好きな人と食べたら、より京都の夏の風物詩なんでしょう。
でも、ひとりで食べても、京都の夏の風物詩です。


 
寿司のむさし・三条本店
京都市中京区河原町三条上ル恵比須町440
11:00~21:45 (LO.21:30) 元旦のみ定休

市営地下鉄 京都市役所前駅下車 徒歩約2分
京阪電車 三条駅下車 徒歩約4分

寿司のむさし – 公式
公式予約ページ – takeeats
 
 
インターネットカフェ CoCoNe
京都市中京区中島町79 三晃ビル2階
年中無休

京阪電車 三条駅下車 徒歩約2分
市営地下鉄 京都市役所前駅下車 徒歩約4分

インターネットカフェ CoCoNe – 公式