犬甘野風土館・李楽へ行って蕎麦を食べて蕎麦の花も観てきました。もちろん、ひとりで。

2020年9月15日(火)


犬甘野風土館・李楽へ行って蕎麦を食べて蕎麦の花も観てきました。もちろん、ひとりで。

蕎麦。京都があまり得意としない食ジャンルのひとつ、と言えるかも知れません。
もちろん、いわゆる老舗として名高い店は存在しますし、それなりに評判も良かったりします。
が、実際に食べて、評判通りの感想を持ちましたか、貴方。端的に、美味いと思いましたか、貴方。
いや、新しい店ならちゃんとしてることも多いですが、そうでない場合はそうでないことも多いというか。
この現象について私は、京都では麺類全般がいわゆるオチキャラ扱いされてる為だと思ってます。
君らは別に、美味しくならなくてもいいよ。君らに求めてるのは、ほっこり感なんだから。みたいな。
「うどんって具合悪い時に食べるものでしょ (by 山下達郎)」 な見方が全麺類に及んでる、みたいな。
そういえば、戦後の薬事法改正まで麺類店では実際に風邪薬などを併売してたというので、
気張った味ではなく、癒し的なものを麺に求める文化が、この地では今も残ってるのかも知れません。
あるいは、禅+菓子+蕎麦という京都の蕎麦の起源に関係する話だったりして。とにかく、謎です。
こんな感じで、何とも蕎麦文化が薄い京都。ただ蕎麦自体の栽培は、案外してたりします。
京都府北部にあって舟屋で有名な伊根町は、 「筒川そば」 の名で通る蕎麦の栽培でも割と有名。
名実共に京都の食糧庫である丹波も、然り。美山町や夜久野町は近年、蕎麦の名産地になりました。
そして犬甘野もまた、丹波の蕎麦名産地として新たに名が知られるようになったエリアです。
犬甘野。読みはそのまんま、いぬかんの。口丹・亀岡市の西の方にある、標高400mの地であります。
地名の語感から亀岡名物・寒天を連想してしまいますが、元はその寒天作りが副業の稲作地帯。
寒天も作る一方で、減反政策ゆえ生まれた休耕田を活用すべく昭和末期から蕎麦の栽培を開始し、
平成以降は蕎麦も食える直売所の犬甘野風土館・李楽も出来て、すっかり蕎麦の名所となりました。
毎年9月中旬には、可愛らしい蕎麦の花が咲く様を京都新聞などが恒例のように紹介してるので、
行ったことはなくとも、風物詩のような親しみを感じてる方も少なくないのではないでしょうか。
そんな犬甘野の李楽へ9月に出かけて、蕎麦を食い、蕎麦の花も観たのでした。


犬甘野へ行くには、まず亀岡に行かねばなりません。いや、本当は大阪・箕面からも行けるけど。
実はすぐ隣が大阪府能勢町の、犬甘野。妙見山の手前に控え、正しく京都と大阪の境となる地です。
車があれば大阪ルートも山道が楽しいですが、車がない私はJR亀岡駅まで行って、そこからバス
先端何ちゃら大 aka 京都学園大行きのバスに乗り、学園大でまた別のバスに乗り換えます。遠い。


潰れた田舎の遊園地みたいなゴースト感漂う学園大で乗り換えたのは、コミュニティバス。遠い。
割と大きめの車体で、ICカードも何とか使えたコミュバスは、亀岡的な光景の中を飛ばして行きます。
その内 「四国さん」 的な山道へ突入し、とんでもない七曲りの道が続くも、バスは延々と爆走&爆登。
峠を抜け、山間の水田が見えたら、犬甘野に到着です。降りると、足元で栗が出迎えてくれました。


あ、降りたバス停は、上ノ谷。その名の通り、標高が高い所にて山々に挟まれた地です。
棚田があったりしてアカデミックな興味が湧く光景ですが、それよりもまず蕎麦ですよ、蕎麦。


で、蕎麦屋。蕎麦屋ゼロの佇まいですが、蕎麦が食える犬甘野風土館・李楽、ここです。
直売所としても、やや小ぶりな感じでしょうか。もちろん、産業化された道の駅とも違うという。


店先まで来ると、道の駅と違い過ぎるというか、地産の野菜も置いてる雑貨屋的な感じ。
かなり心が迷う感じではありますが、玄関には紛れもなく 「犬甘野そば」 の文字。ここです。


ので中に入り、いわゆる蕎麦屋感はないけど手作り感がある席に着き、メニューを拝見。
限定の手打ち蕎麦が良さげですが、蕎麦がきや善哉、それと餅にも強烈に心が惹かれます。


ので手打ち蕎麦と蕎麦がきと餅を頼んだら、15時近い為か、手打ち蕎麦はとっくに売切。
ので、仲秋の名月感と山芋感を味わえそうな、とろろ&卵付きの季楽そばを頼んでみました。


季楽そば、手打ちではないらしいけど、蕎麦の切り口は少し手打ち的な感じ。


味も、良い感じ。巧みではないけど風味は立ってて、一気に啜り込みました。


蕎麦がきも、なかなか。蕎麦の風味は、こっちがダイレクトに感じられるかも。


大根を擦る音を聞いた後で運ばれたホットおろし餅は、言うまでもなく、美味。


で、食い終われば、退店。他の客は、1組ずつ途切れず来るという、不思議な感じでした。
払い際、蕎麦の花が観れる場所を訊くと、ここから西へ少し行った辺の畑で観れるそうです。


ので、何とも 「上ノ谷」 な感じの光景や稲刈の様を横目で見ながら、亀岡能勢線を西へ。
数分歩いたら、稲刈前&後の田んぼの中、白い何かが密生してる段々畑が見えてきました。


あそこみたいですね、蕎麦畑。


で、やって来ました、蕎麦畑。


蕎麦畑に咲く蕎麦の花。


蕎麦の花。


蕎麦の花。


段々畑に咲く蕎麦の花。


蕎麦の花。


蕎麦の花。


蕎麦の花と稲刈前の稲。


植物と虫。


石道と虫。


稲刈後の田と鳥。という感じで、鳥でした。ではなくて、虫でした。ではなくて、蕎麦の花でした。
蕎麦の花はとても小さくて、といって畑にあまり近付くわけにも行かないので、超々望遠で撮ってると、
鳥や虫もしっかり撮れるのが面白くなり、またイナゴなんかは異常にデカくて図々しいのが面白くなり、
途中からは蕎麦の花そっちのけとなって、イナゴやトンボばかり観てたわけでは、断じてありません。


で、見るだけ見たら、帰ります。李楽に車やバイクがよく入って行くのを横目にバスを待ち、乗車。
またもや無茶苦茶なカーブを曲がりまくって峠を越えたバスは、あっという間に学園大へ着きました。
ここからまた亀岡駅行バスに乗り換えるわけですが、学生で随分混んでたので遠慮し、駅まで徒歩。
周囲を囲む山の奥へ陽が早くも沈みそうになってる様に亀岡感を感じたりしながら、帰りましたとさ。

客層は、層になるほど人がいなかったので、パス。
よほど運が悪くない限り、おかしな団体とはバッティングしないでしょう。
味・面白さ・楽しさなどは、いずれもまあまあという感じ。
まあまあゆえ、車がない場合は出かけるハードルがかなり高くなりますが、
逆に車があれば、ドライブの途中に寄る場所としてはベストに近いとも思えます。
あと、現場に溢れる谷感や、また途中のバスで感じまくれる峠感など、
地形の面白さは割と楽しいかも知れません。

そんな犬甘野風土館・李楽の蕎麦と、蕎麦の花。
好きな人と行けば、より犬甘野なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、犬甘野です。


 
 
 
 
 
 
犬甘野風土館・季楽
京都府亀岡市西別院町犬甘野樋ノ口1-2
10:00~16:00 木曜&年末年始定休

亀岡市ふるさとバス 上ノ谷下車 徒歩約1分

犬甘野風土館 季楽(きら) – 公式