祇園甲部歌舞練場の都をどりを、桟敷席を予約して観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

2023年4月28日(金)


祇園甲部歌舞練場の都をどりを、桟敷席を予約して観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

死と再生。春は、そんなことを考えさせられることが多い季節です。
今までの生活や環境に別れを告げ、新たな自分として歩み始める。そんな方も多いと思います。
清水の舞台から飛び降りるように新天地へ赴き、果敢に新生活を始める方も、少なくはないでしょう。
年度始めの世界的な主流は9月であり、日本の4月スタートも実は近代以降の慣習に過ぎませんが、
桜が咲く中で人生の転機を経験すると、誰もが春を特別な季節と感じるようになるとも思えます。
もちろん、桜という花そのものが死の香りを濃厚に孕むこともまた、決して見逃せません。
俺は春死ぬことにしよう。俺が焼ける間、外は花吹雪――いいぞ (映画 『お葬式』 侘助の科白)
涅槃や成仏、あるいは転生や輪廻。こうした願望も、桜や春は高めるのかも知れません。
そんな桜咲く2023年の春、京都・祇園でもひとつの再生が成されました。祇園甲部都をどりです。
都をどり。京都最大の花街である祇園甲部にて、毎年4月に行われてきた舞踊公演であります。
明治初頭に京都振興を目的として開始され、ゆえにその内容は今も極めてスピーディーで現代的。
観光都市・京都を最も体現するコンテンツとも言え、その興味深さは当サイトでもお伝えした通りです。
この都をどりが、2017年よりしばらく、祇園甲部でのホーム公演を行えない状態になってました。
理由は工事です。明治期より会場とし続けてきた祇園甲部歌舞練場が、改修工事に入ったためです。
春秋座や南座に会場を移し、さらには2020年からのコロナ禍を受けて公演そのものまで一旦休止。
こうした苦難を経て、2023年春、都をどりは遂に祇園甲部歌舞練場へ帰って来たのであります。
これは正しく、再生です。春に相応しい再生です。そしてこの再生は、何としても見届けるべきです。
そう考えて当サイトも、前回より良い席でこの再生を見届けようと、然るべき予算を用意しました。
あいにく多忙と券欠が重なって4月末のラスト前々日になったものの、それでも1等席の確保に成功。
しかも、舞台に間近い桟敷席です。これは、期待出来る。そう思いながら、当日は出かけました。
が、出かけてすぐ、全く予想しない形で死と再生に直面したのです。


都をどり、最近はネットで予約出来るようになりました。電話や飛び込みでなくても、大丈夫です。
これまでメジャー案件の特攻は飛び込みを基本としてきた当サイトですが、飛び込み、もうしんどい。
当日券がなかったりすると、徒労感が凄いし。しんどいですよ、飛び込み。良くないですよ、飛び込み。
以前の席は2等席でしたが、今回押さえたのは、Bながらも1等席。具体的には右桟敷席の1番です。


桟敷席の1番がどの辺かと言えば、御覧の通り。要は、舞台の真横上の一番前。地方の真上。
舞台を間近&俯瞰でクリアに観れます。都をどりの再生を見届けるには、最高の席と言えるでしょう。
また公演の前後には、新調された劇場のディティールも、じっくり心行くまで眺めることが出来るはず。
下手に慌てて初日や上旬に行かず、月末の千秋楽直前まで待ったおかげで、良い席が取れました。


ネット予約、発券はコンビニでするそうです。ちょっと味気ないですが、便利には違いありません。
私は、公演当日のほぼ1時間前、発駅となる京阪電車・樟葉駅の近くのセブンイレブンで行いました。
せめて歌舞練場に近いセブンイレブンで発券しようかとも思ったんですが、混んでて遅れても嫌だし。
そもそもこの日、家を発つのが遅れたんですよ。なので、早めに券を入手しときたかったんですよ。


大阪府枚方市にある、樟葉駅。私が住む京都府八幡市の人間にとっても、実は中心駅です。
発券が13:15で、駅に着いたのは13:20頃。開演は14:20なので、割と厳しいタイミングではあります。
でも歌舞練場の最寄駅・祇園四条駅とこの樟葉駅は特急1本で行けて、20分程度しか掛かりません。
また祇園四条駅から祇園甲部歌舞練場までも、徒歩で10分弱くらい。十二分に間に合うわけです。


ので、余裕な気分で駅内に入りました。すると、改札前が異常に混んでます。あれ。


ギャ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━っ


人身です。それも隣の牧野駅で、人身です。運転が再開するのは、14時15分とか言ってます。
何でだよ。何でだよ。何でだよ。何でだよ。何でだよ。何でだよ。何でだよ。何でだよ。何でだよ。何でだよ。
本当に14時15分に再開したとしても歌舞練場までは最速で30分掛かるので、もう絶対間に合わんぞ。
発券済みの券を改めて見ても、開演時間は14:20のまま。何でだよ。タイムシフト機能とか付けろよ。


このまま間に合わなかったら、どうしよう。6500円、いや6610円の券が、パーになる。どうしよう。
この辺、迂回ルートもないし。タクシーは、出費が券代を超えた挙句に渋滞に捕まる可能性があるし。
どうせならもう、ネタ展開に頭を切り替えようか。わざと遅れてやろうか。わっはっは。わっはっはっは。
と自暴自棄になってると、電車は14:05に復活し、10分過ぎには四条まで突っ走る特急が来ました。


結局、祇園四条駅には14:35に到着。やっぱり京阪電車は最強です、人身さえ起こらなければ。
公演にはもう、明らかに、間に合いません。始まってから、随分と時間も経ってます。どうしようかな。


何かね、まともに物事を考えたくない気分なんですよ、今。考えると考えるだけ、損する気がして。
なのでもう、歌舞練場までゆっくり歩こうと思います。祇園、マスク姿が多いけど、人は戻りましたね。


花見小路には、都をどりのモールあり。この都をどりというのにね、私ね、これから行くんですよ。
だけどその公演は既に始まってて、現時点でもう半分くらい終わってるんですよ。わはははははは。


すっかり楽しい気分で到着した歌舞練場は、人がいません。公演の最中だからだと思われます。
混雑が苦手な方は、30分ほど遅れて行くのも良いかもですね。さて、行くか。というか、行けるのか。


歌舞練場の玄関に行くと、外人がチケットの件で揉めてるので、やはり遅刻かと思って少し待ち、
結局その外人が門前払いになった後、ああ無理なのかと思いながらコンビニチケットを提示しました。
「遅刻したんですけど」 と言うと、係の人は 「あっあっあっ」 と慌てまくり、 「どうぞもう入ってください」 。
手続きがどうとかということは全然なく、ごくごく普通に通してくれました。靴のままで劇場に入ります。


靴のまま入れたのはいいんですが、以前の記憶がないので、この先どう進むかがわかりません。
なのでまごついてると、先刻の係の人が飛んできて、玄関から真っ直奥にある襖を開けてくれました。
そこが入口になってて、そこから先は制服を着た劇場案内係の妙齢女性の方々が案内してくれます。
「何で入れない」 とゴネてる爺さんや、面白くなくて途中で抜けたらしき白人家族の横を通り、奥へ。


新調した割に以前と変わった印象を受けない劇場内を、足早に進む案内の方を追って歩いて、
劇場の最後尾に一旦入り、そこから別の階段を上がり、ぐにゃぐにゃと歩き回った末、桟敷席に到着。
ここまでは靴がOKでしたが、桟敷席は土足厳禁です。戸の前で靴を脱ぎ、そこに靴を置き、入ります。
隣客が占拠してたら嫌だなと思ってたんですが、隣は単独妙齢女性で、席もちゃんと開いてました。


桟敷席は、予想してたよりは余裕があるサイジングですが、常識的に見れば広くはありません。
3分の1畳、くらいでしょうか。各々の客に座椅子を用意し、席の区別を一応付ける仕様になってます。
一番前の私の席は、舞台から10mくらい。凄く近いです。良かった。人身がなければ、もっと良かった。
席に着いた時点で、公演は全8幕中5幕目の途中。残り3幕半、至近距離で拝ませてもらいましょう。


2等席で観た際は転換が華やかで綺麗に見えた舞台ですが、至近距離だと割と普通に、舞台。
間近&俯瞰だと、板張り感が中々に凄いです。逆に演者の動きには、より集中出来る感じでしょうか。
桟敷席の真下には地方が陣取り、実際に真下から音が聞こえて来ますが、特に音が良い感じはなし。
恐らくアンプ通しであろう鈴 or トライアングルみたいな効果音が、最も良い音に聞こえたのは何故。


ステージは基本、舞踊一本。でも派手なライティングも時には使い、動く背景映写もあったり。
セットの入替が激しいので、桟敷席だと物音が凄いかと思ったんですが、そうでもありませんでした。
舞台の流れは、もちろん爆速進行。暗転してしばらく間が開くということが、最後まで一切ありません。
転換自体のスピード感は前ほど感じませんでしたが、これはきっと袖で動く人が見えるためでしょう。


都をどりの最大の見物は、大勢の舞妓はんが一度に登場する総をどりということになります。
が、桟敷席から観ると、これがさほど面白くない。いや、面白くないというか、新たな感慨が特にない。
舞台の奥まで開いて舞妓はんが登場した際も、正面席では 「お~っ」 とどよめきが起こってましたが、
桟敷席からだと、単に 「奥にいる」 という風に見えて盛り上がらないし、あともっと単純に奥が観難い。


逆に目を引かれるのは、先述通り、演者である舞妓はんや芸妓はんの動きそのものです。
ノンリズムな曲で動作を揃える辺や、足の動きが特に上手い舞妓はんなどは、実に目を引かれます。
中でも、芸妓はん2人というか実質主役のひとりが全てを背負うような曲があって、それは物凄かった。
宮川町の京おどりを桟敷で観た際にも感じましたが、演者に集中したい場合には桟敷席、中々です。


桟敷席からだと、舞の動きのみならず、ちょっとした仕草や目の動きまで、はっきりわかります。
おまけに、そういった細やかな動きから一転してゴロンと寝転んだりするので、ドキッとしたりもします。
凄いです。凄いというか、はっきり言ってもはや、エロい。この辺も、桟敷席の醍醐味かも知れません。
この醍醐味を味わうためなら、もう一度何とか桟敷席のチケットを取って、今度こそ最初から観たい。


などと思ってる間に、公演は終わってしまいました。6610円で実質30分の夢の時間でありました。
私の券はパンフ込みだったんですが、それももらえました。観てない劇の内容、後で確認しようっと。


「携帯電話の忘れものはございませんか」 のアナウンスが延々響く中、観客は捌けて行きます。
あ、この日の入りは概ね満員です。写真で人が少ないのは、私が元を取ろうと居座ってるからです。


まだまだ居座ります。新調された劇場も、客電が点いた状態でしっかりと拝ませてもらいましょう。
何処がどう変わったのか、全然よくわからんけど。あと、大正期製なのに昭和感を感じるのは何故。


そのうち客席がほぼ無人になったので仕方なく玄関へ出ると、玄関にはまだまだ客が残ってます。
さらに元を取るべく、ハメ撮り写真コーナーで写真も撮ろうかと思ったんですが、怯んで止めました。


そして、とうとう退場。歌舞練場、人が多い方がやっぱり賑やかな感じがして、良いですね。
不思議なんですが、ここをこうして流れる客層と客席の中で見た客層では、印象がかなり違います。
中で見た客層は、年齢/属性不問で全てが昭和な人々。でもここの客層は、ごく普通に多様な人々。
この違いが、玄関の辺にいるとはっきり感じられて、面白いです。これも劇場の魔力なんでしょうか。


劇場を出たら、また祇園を歩いて帰ります。道はもちろん、をどりの話をしてる劇場帰り客ばかり。
その客を轢く勢いで車が走りまくり、道の真中で写真撮る阿呆にはクラクションを鳴らしまくってます。
一力茶屋の前では、舞妓はんと齢が近いはずの修学旅行生らが、夏のような西陽に焼かれてました。
そういえば京阪の人身の詳細を後で聞いたんですが、主は高専生だったそうです。死んだそうです。

久し振りに観た都をどりでしたが、客層は以前と変わった印象がありません。
メインは中高年であり、おばさんグループや団体客、半分以上仕事な感じのおっさんが多い感じ。
単独は少なく、また夫婦風さえ割と少なめ。若者は、基本は外人で、あとは女子の2人組です。
外人は、中国系はあまりおらず、アジア系はややいたくらい。それ以外は、ほぼ欧米系。
外人の比率は、外の花見小路とあまり変わらず、中に入ると急に増えたり減ったりしません。
単独の属性は、烏合状態。阿呆の青年から同業者っぽい和服おばさんまで、色々います。
あと、客の大半は言うまでもなく観光系ですが、観光ハイな感じは皆無でした。

途中入場だったので、1等席と2等席の客層の差は、よくわかりません。
若い阿呆連中の姿を1等席で見かけることはないですが、2等席もそもそもそんなにいないし。
あと、本文中にも書いた通り、劇場内では全ての人が何故か老けて見えたりします。
自分と大して変わらない年齢の人や、若い人も多いはずなんですが、全くそう見えないという。
なので、 「メインは中高年」 というのも話半分と思ってもらえたら幸いです。

そんな祇園甲部歌舞練場の、都をどり。
好きな人と観たら、よりをどりなんでしょう。
でも、ひとりで観ても、をどりです。

【客層】 (客層表記について)
カップル:1
女性グループ:不明
男性グループ:不明
混成グループ:不明
子供:不明
中高年夫婦:不明
中高年女性グループ:4 (多分)
中高年団体 or グループ: 6(多分)
単身女性:不明
単身男性:不明

【ひとりに向いてる度】
★★★
阿呆団体に囲まれることは、よほど運が悪くなければない。
特に1等周辺では、それらの輩の姿はあまりない。
ただ、よほどの高等遊民でもない限り
根本的にアウェーな場であることに違いはないと思う。
桟敷席は、マニアックな見方をするには向いてる。

【条件】
平日金曜 14:50~15:30


 
 
 
都をどり
毎年4月1日~30日開演
 

祇園甲部歌舞練場
京都府京都市東山区花見小路通四条下ル

京阪祇園四条駅/阪急河原町駅下車 徒歩10分

都をどり – 祇園甲部歌舞会