中舞鶴の共楽公園へ散りかけの桜を観に行きました。もちろん、ひとりで。

中舞鶴の共楽公園へ散りかけの桜を観に行きました。もちろん、ひとりで。
桜は散って初めて、桜。そんな言い方も、あるいは可能なのかも知れません。
死体の如き青味を密かに帯びた花びらが、春風を受け、あっという間に散って行く。
この儚さこそ、桜。この風情こそ、桜。こういう考えも、あるのかも知れません。
「いやそれはソメイヨシノの風情で、近代以降の感慨に過ぎない」 と言う方もおられるでしょう。
確かにソメイヨシノは江戸後期に生まれ、何なら人為的に作られた可能性も高いとされる花です。
しかし逆に見れば、魔改造へ走るくらいに日本人はこの儚さを桜に求めている、とも言えます。
かつてはこの儚さを経由して、死のエクスタシーに満ち満ちた大日本帝国と熾烈な悪魔合体を果たし、
特に国家が前景化する軍/教育の局面で威力を発揮したがゆえに国花の如き地位さえ得た、桜。
どうやら日本人はこの儚さが大好きなようです。大好き過ぎて、たまに国ごと儚くしたりもするようです。
近代はおろか近世さえ全否定しがちな歴史終焉都市・京都の目線で、この儚さなるものを見ると、
旅の恥やら歴史妄想やらを捨ててさっぱりして帰る観光客の心性に似たものを感じなくもありません。
病的な鈍感さや無責任性に鼻白むというか。桜種も、京都は枝垂桜や山桜の人気が割と強いし。
しかし、もちろん京都だってれっきとした日本の一部分です。京都人だって一応は日本人のはずです。
京都人はそう思ってないかも知れませんが、法律や国籍的には日本人ということになるはずです。
であれば、この儚さにも共感しておくべきでしょう。せめて、教養としての理解は持っておくべきでしょう。
それにそもそも京都にも、徹底的に 「散る花」 としての桜を堪能出来るスポットが実は存在します。
そう、海の京都・東舞鶴です。かつて舞鶴鎮守府があり、現在は海上自衛隊がある東舞鶴です。
現在も港には多くの護衛艦が停泊し、春になれば桜と旭日旗のコラボが散見される地であります。
その舞鎮の西口であった中舞鶴には、共楽公園なる公園があり、桜が特に見事なんだとか。
公園からは港や艦もよく見えると言います。桜は当然、ソメイヨシノがメイン。中々良い感じです。
なので、敢えて散りかけの頃にこの公園を訪れ、儚さを履修出来るかどうか試してみました。

いやもちろん本当の事情は、単に時間の都合が付いた頃には桜が散ってただけなんだけど・・・。
この年の桜は散るのが凄く早くて、北方面なら何とかなるかと思い、共楽公園に目を付けただけです。
当日はこれまた諸般の事情で、東舞鶴駅に着いたのが15時。陽が保つ時間は、あまり残ってません。
共楽公園がある中舞鶴方面行きのバスは、あることはありますが本数が少なめ。なので、歩きます。

歩くルートはもちろん、東舞鶴と中舞鶴を最短距離で結んだ旧国鉄・中舞鶴線の廃線跡です。
中舞鶴線は、赤レンガゾーン = 旧帝国海軍舞鶴鎮守府 = 舞鎮の軍需輸送のために建設された路線。
レトロスポット・北吸隧道を抜けた辺からが本格的な舞鎮ソーンで、最寄駅だった東門駅跡も残ります。
「東門」、 まるで大寺院の門に由来する地名みたいですが、実際は軍ゾーンの東端を示す駅名です。

日本海側の軍事拠点として東舞鶴に鎮守府が置かれたのは、日露戦争直前の明治34年。
元々は漁村や農村が点在するだけだった入江が着目され、大規模な土地造成を経て完成しました。
鎮守府開庁と前後して海軍工廠も此地に開設。造船という基幹産業を東舞鶴に生み出したわけです。
桜、結構残ってますね。こんな所で独男が写真撮りまくってると怪しまれるので、スルーしますけど。

中舞鶴線は海軍工廠への通勤にも活用され、太戦末期は1日5000人以上が乗降していたとか。
本来の目的である貨物輸送についても、日本各地から直通列車が多数運転されていたといいます。
現在は終点然とSLが佇む中舞鶴駅跡ですが、往時は此処からも多くの線路が伸びていたのでしょう。
ちなみに、先程の東門が舞鎮の東ゲートなら、此辺は西ゲート = 西門。門番も立っていたそうです。

SLの少し西にある交差点には、西門の遺伝子を現代に伝えるかのような立派な歩道橋あり。
1926年の地図を見ると、この交差点や交わる本町通と大門通がほぼそのままの形で記されており、
「表価物定協店食飲屋理料館旅」 などに混じって 「無料休憩所」 があちこちに記載されてたりします。
無料休憩所とは無料案内所のことで、近くの共楽公園も元の名は享楽公園・・・というのは嘘です。

共楽公園は大正期、舞鎮の了解の元、数百本の桜を持つ正真正銘の公園として作られました。
先刻の交差点の南西の丘にあるんですが、現地だと交差点からの道筋が何だかよくわかりません。
桜がちらっと見えた南側へわけもわからず回り込み、宅地の中を迷ってると、御覧の坂道に出ました。
これだ、これだ。着いた、着いた。でも桜はかなり散ってるな・・・あと何か歌謡曲が聞こえて来るぞ。

BGM、小林旭 『遠き昭和の・・・』 。
♪ あの人この人、あの顔この顔、みんなどうしているんだろう~

♪ 酔いどれ男、薄情女、俺もおまえも泣かされた~

♪ 喧嘩もしたさ~突っ張りもしたさ~

♪ 遠き昭和のまぶしい時代~

BGM、新沼謙治 『嫁に来ないか』。
♪ 嫁に来ないか僕のところへ~さくら色した君がほしいよ~

♪ 日の暮れの公園でギターを弾いて、なぜかしら忘れ物をしている気になった~

♪ 真夜中のスナックで水割り嘗めて、君のことあれこれと考えているのさ~

♪ 嫁に、嫁に来ないか~からだ、からだひとつで~

BGM、木の実ナナ&五木ひろし 『居酒屋』。
♪ もしも嫌いでなかったら、何か一杯飲んでくれ~

♪ そうね、ダブルのバーボンを遠慮しないでいただくわ~

♪ 名前訊くほど野暮じゃない、まして身の上話など~

♪ 絵もない、花もない、歌もない、飾る言葉も洒落もない~

発狂したのではありません。狂ってるとしたら、この選曲を爆音+粗音でかけてる方でしょう。
此処、本当にこんな歌々が延々とかかってるんですよ。そしてその様が、異常にシュールです。

シュールと言えば、人が全然いないのもシュールです。確かに、桜はかなり散ってますけど。
でもそれ以上にこの壮絶過ぎるBGMが、動員にかなり影響してる気がするような、しないような。

BGM、内山田洋とクールファイブ 『東京砂漠』。
♪ ビルの谷間の川は流れない、人の波だけが黒く流れて行く~

♪ そうよ、この都会を逃げて行きたかった~

♪ 人は優しさを何処に捨ててきたの~

♪ 陽はまた昇る~

BGM、憲三郎&ジョージ山本 『浪漫 ROMAN』。
♪ 一人前の男になりたい~

♪ ひとりの酒も上手に飲めない~

♪ 守れるものは失くすものより少ないけれど~

♪ 信じあったあの日の浪漫 (ROMAN) ~

BGM、石原裕次郎 『俺は待ってるぜ』。
♪ ヨ~

♪ 俺は待ってるぜ~

♪ ヨ~

♪ 俺は待ってるぜ~

以上であります。何が以上なのかよくわかりませんが、色んな意味で色んなものを堪能しました。
共楽公園、かなり散ってるとはいえ桜はまだまだ残っており、私はかなり花見を楽しめたと思います。
何より、これだけの花をほぼ独り占め出来たのは大きいかなと。BGMの方はかなりにかなりでしたが。
ただこのBGMが、散りかけの桜&公園が持つ昭和遺跡感と似合ってるように感じたのも、確かです。

帰りには海軍カレーでも食べようかと思い、公園近くの店へ行ったら休みだったので、他を探し、
中舞鶴の交差点まで歩くと丁度バスが来たので乗ったら、そのまま東舞鶴駅に着いてしまいました。
お土産を買おうと思ったんですが、カレーは前に買ったので、近くのスーパーにあった日本酒を購入。
元海軍御用達商・ハクレイ酒蔵の 『白嶺 自衛艦 舞鶴』 、味は何とも遠き昭和な感じでありました。
桜が散りかけの共楽公園、
客は、絵を描く若い男1名、散歩というかウォーキングな感じの老人男性2名、
そしてグーグルヤクザ (?) という感じな写真の撮り方してるジャージの男女2人組だけ。
桜の質については、散りかけなので何とも言えない感じですが、
わざわざ遠くから行くほどのボリュームかと言えば、割と微妙なところでしょう。
やはり軍関係のアイテムとの合わせ技で楽しむのが、王道だと感じました。
何より、全域で流れ続ける歌謡曲が意味不明のインパクトを強烈に放ち過ぎていて、
桜スポットとしてのまともな評価はかなり難しいです。
逆に、いわゆる珍スポット的な楽しみ方は可能とも言えますが、
個人所有のスポットでもないので、異常選曲がいつ見直されても不思議はありません。
単に面白がりたいという方は、早めに出かけることをおすすめします。
ひとりのおすすめ度は、★★。
でも近所で歩き/自転車で行ける人なら、★★★か、ギリで★★★★。
ただ軍関係の絡みで観たら、遠来でも★★★になるかも知れません。
あと、音楽が変われば★★★になるかも。
そんな共楽公園の、散りかけの桜。
好きな人と観たら、より散りかけなんでしょう。
でも、ひとりで観ても、散りかけです。

共楽公園
舞鶴市字余部下56
京都交通 中舞鶴下車 徒歩数分
共楽公園 – 舞鶴市

