クリスマス・イヴの伏見稲荷へ行きました。もちろん、ひとりで。

2010年12月24日(金)


クリスマス・イヴの伏見稲荷へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

メリークリスマス!!
聞けば、クリスマスというのは、キリストの誕生日ではないんだそうですよ。
2000年も前の大工の子倅が生まれた日なんか、誰もわからんそうです。そりゃそうですよね。
古代ローマの太陽祭に、キリストの生誕祭を乗っけたのが、いわばクリスマスの起源。
習合みたいなもんでしょうか。ローマの祭りですから、乱交も 「込み」 だったのかも知れません。
太陽の復活を祝い、豊穣を祈り、グチャグチャに交じり合う祝祭としての、クリスマス。
それが本当なら、「聖夜は愛する人と二人きり」などと近代的な恋愛観に基づいた戯言や、
「大事な家族と一緒に」などと現代的な家族観に基づいた戯言を言ってる場合ではありません。
入り混じらなければいけないのです。人も神も、見境なく、入り混じろなければいけないのです。
というわけで、大量の神々と全身で交わりまくるべく、聖夜の伏見稲荷を訪れました。
あらゆる御利益神が見境なく溢れる稲荷山ですから、どっかにクリスマスに効く神もいるはずです。
そのクリスマス神へ深き祈りを捧げ、是非ともクリスマス神力を発動していただき、
消費社会の上澄みのみを祝福する現代日本の偽クリスマスを、一掃してもらうのです。
吹けよ、クリスマス神風。唱える祝詞はもちろん、メリークリスマス!!


夜7時の伏見稲荷・裏参道。人、全然いません。例の雀の焼き鳥屋も開いてません。
伏見稲荷、クリスマスの夜間拝観で開いてるわけではありません。年中無休、24時間営業です。
本社で軽くお参りを済ませ、ウェルカム狐にも挨拶してから、千本鳥居へと向かいます。


「千」と名のつくものは、実際には1000に足りてないことがほとんどですが、
ここ千本鳥居の鳥居の数は、目視だけでも明らかに1000を超えてます。
無茶な値段ではないらしいので、あなたも一本、神へのクリスマスプレゼントとしてどうですか。
奉納者の名が記された鳥居の裏側も、味です。超有名な企業から、どこの誰か知らん人まで。
ご利益を求める人間の思いがダイレクトに伝わってくるようで、なかなかディープであります。


千本鳥居を抜けたところにある奥の院、そこの名物・おもかる石。
願い事の成就の可否を重さで教えることで有名な石ですが、明らかに昼間より重そうです・・・。
素性不明の生物が上空を飛び交う中、石段を登って三つ辻、そして三徳社へ。
たぶん初詣用の屋根のために組まれたであろう、妙に近未来な骨組みが、夜に映えます。


濃過ぎる霊気を放つ 『神々のラッシュアワー』 お塚密集ゾーン、
そして四辻の夜景を拝んでから、知ってる人は知ってる荒神峯の奥にある 『展望台』 を目指します。
夜景がよく見えるスポットがあるんですよ。ひとりで行って足を踏み外すと、死にますけどね。


お塚というよりほとんど墓地なゾーンを抜け、全くの暗黒野道の先に、 『展望台』 はあります。
恐るべきことに先客、それもカップルの先客あり。女は「ヤッホー」とか言ってました。
楽々と見える京セラビル、その壁にはクリスマスツリーが映し出されてます。
背後に気配を感じたと思ったら、遠くで若干歳食ったカップルがこっちが立ち去るのを待ってました。


人間の欲望の反映である夜景を満喫したのちは、さらに神と交わるべく、稲荷山の奥へ。
四つ辻から大杉社を越え、聖夜も無理な姿勢で水を出す眼力社の狐様に、メリークリスマス。
御膳谷奉拝所で清滝へ分岐する道を進み、暗い下り坂を延々と歩き続けます。


やってきました、夜の清滝社。苔むし痛んだ狐様と、鳥居の数々。怖過ぎ。
言うまでもなく、人間はいません。でも、霊感ゼロの私でさえ、人間以外の気配を濃厚に感じます。
やはり怖過ぎる注連縄をくぐると、奥には修行用の清滝。
何者かが修行でもしてたらマジで恐怖死すると思いましたが、水がチョロチョロ流れてるだけでした。
そばの聖水には、有刺鉄線。動物よけでしょうが、結界を張ってるようにしか見えません。


で、下りてきた漆黒の坂道を今度はえんやこらと登り、御膳谷から元の参道へ復帰。
強烈に濃い霊気に晒された後だと、参道に居並ぶ動物たちに妙な愛嬌を感じるようになります。
夜になると、人知れず山を走りまわってそうな奥村神社の馬さんにも、メリークリスマス。
「稲荷は狐だけじゃないぜ」と己の存在感をアピールしたげな狛犬にも、メリークリスマス。


薬力亭で東映のれんを見ながら休憩したのち、
一の峰まで延々と続く階段を汗だくで登り切り、二の峰、そして三の峰へ。
ここの狐にも愛嬌を感じると言いたいところですが、やっぱり怖い・・・。


三の峰に出没する猫は、夜でもやっぱりこの辺をうろついてました。
猫同士でじゃれあったり、こっちの目の前で愛嬌を振舞ったり。
で、何もくれないと判断したら、お塚の隙間に入り込んで寝入ってました。メリークリスマス。


で、戻ってきた四ツ辻。四ツ辻茶屋はもちろん、営業してません。
来た時にいた、夜景目当てのカップルも、物好きな人も、信心深い人も、みんな帰ったようです。
私も十二分に神々と交流しました。下山します。


三つ辻から裏参道へ進み、集中的に鎮座されてる 「魅惑の神仏」 の皆々様にもご挨拶。
水子供養の御仏にも、今夜は祈る暇がない方に変わり、私が拝んでおきます。メリー・クリスマス。


仏像にも、蛙像にも、ひとしく祈りを捧げます。メリー・クリスマス。
これだけ神々と交わりまくれば、消費社会の上澄みに多少は神風も吹いたんじゃないでしょうか。

あ、念のために言っときますが、狐などの写真を撮る時、私は声をかけるようにしています。
「こんばんわ。申し訳ないですが、お写真撮らせていただいてよろしいでしょうか」
「ありがとうございます。お騒がせして大変失礼しました」みたいに。可能な限り、一体一体に。
特別本気の信仰があるわけではないですが、一応、そうしてます。
面白半分でクリスマス参拝なんてことをしてるのは否定しませんが、
完全に興味本位だけで同じことをやり、えらい目にあっても、もちろん私は関知しません。
客層は、評価欄に記した通り。ここには人間なんかいないよ!!

そんなクリスマスの伏見稲荷。
好きな人と上れば、より神々のラッシュアワーなんでしょう。
でも、ひとりで上っても、神々のラッシュアワーです。


【客層】 (客層表記について)
—三ツ辻まで—
冷やかしっぽいカップル×1
親子連れ×1
単独女性×1
外人7~8人家族連れ×1
「案内」のおっちゃん
—三ツ辻以降—
ウォーキングっぽいおっさん
火の用心の自警団(3人組)
夜景スポットでカップル×2
上記以外は、猫と霊と謎の野獣のみ。

【ひとりに向いてる度】
★★★★★
ある意味、向き過ぎている。
人間のプレッシャーよりも
霊、あるいは野生のプレッシャー、
もしくは孤独との戦い。

【条件】
金曜(クリスマス・イヴ) 19:00~21:40

伏見稲荷大社
京都府京都市伏見区深草薮ノ内町68
昼夜問わず参拝可能
JR稲荷駅下車すぐ 
京阪電車伏見稲荷駅下車 徒歩約5分

公式サイト 伏見稲荷大社

Wikipedia 伏見稲荷大社