伏見稲荷の田植祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年6月10日(金)

田植する早乙女と老人カメラマン
伏見稲荷の田植祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

稲を荷うと書いて、イナリ。稲荷はあくまで、農耕神であります。
「ウソをつけ」と言いたくなるくらい、伏見稲荷の「お塚」にはあらゆる効能を誇るお社が密集し、
神々のラッシュアワー、あるいは神徳のワンストップサービスとでもいうべき状態を呈してますが、
しかし稲荷はあくまで、農耕神であります。だからこそ、これだけ幅広い欲望を集めるのであります。
なぜ集まるかといえば、それはおそらく、我々日本人が農耕民族だからでしょう。
自然にひれ伏すだけでなく、コントロールして収穫を得るという、テクノロジーの萌芽としての稲作。
その第一歩である 「苗を植える」 という小さな行為に、
産業・商売問わず、豊穣を生むあらゆるものの始まりをごく自然に連想できる、我々の感性。
どっかのわけのわからん映画で、猿が天へ向けて投げた骨が宇宙船に化けたように、
田に植えられた1本の苗は我々の魂の中で、スカイツリーにまで真っ直ぐ繋がっているのです。
神前に供する米を収穫する神田に、豊作祈願をしながら苗を植える、伏見稲荷の田植祭。
現代人の目には「のどか」に見え、その見た目に惹かれカメラマンや見物客が集まる神事ですが、
その混雑で「のどか」さがかき消されてる現実が表すように、ここに真に満ちているのは、欲望。
「食いたいものを、食いたいときに、食いたいだけ、食いたい」。
「やりたいことを、やりたい時に、やりたいだけ、やりたい」。
「撮りたいものを、撮りたい時に、撮りたいだけ、撮りたい」。
そんな欲望のカオスなのです。本当かと訊かれたらウソですが、とにかく稲荷なのです。

伏見稲荷・楼門前
12時半の伏見稲荷・楼門前。人いないように見えますが、観光客はそこそこいます。
どっかの会社が団体で御参拝。産業の神さんである伏見稲荷らしい光景。欲望です。

改修中の本殿および狐
現在改修中の本殿、および狐。神様は、この奥に設営された仮本殿に御動座中です。
なので、田植の前に行なわれる本殿祭も仮本殿で行なわれます。

仮本殿
まんなかの仮な佇まいの建物が、仮本殿。本殿祭は13時から始まりました。
たまたま居合わせた風なのばかりな参拝客に見守られながら、
平安朝の汗衫装束をまとった神楽女たちや神職たちが、中へ入っていきます。

本殿祭①
で、仮本殿の中は撮影禁止。
デジカメを構えるカップルや外人に警備員がこまめに注意する中、各種儀礼と優雅な御田舞を奉納。
本殿の真正面には、氏子なのか何なのか、さっきの会社の連中が陣取り、祈祷を受けてました。

本殿祭②
この辺の客数は、たいしたことなし。仮本殿周辺は狭いため、かぶりつきは疲れますが。
撮影できない祭典を見る人は少なく、外人以外はすぐどっかへ行きます。
あ、何故かアクの強い単身女性、多し。Q太郎に似た人や、田嶋陽子みたいなのとか。

神田へ移動する早乙女たち
14時ごろ本殿祭が終わると、神楽女や神職、早乙女たちは、神田へ移動。
何やってるのかよくわかってない感じの見物人たちも、ゾロゾロ一緒についていきます。

狐に見守られながら森の中を進む
狐に見守られながら、森の中を進む一行。そして、見物人の群。
カメラマンの姿は、あまり見かけません。連中は既に、神田で陣取っているからです。
そもそもこの祭りを目的で来た人は、本殿祭をスルーしてまっすぐ神田へ行く者が多し。

カメラマンだらけの神田
で、神田です。ご覧の通りの有様です。欲望です。
奥の方にある舞台らしきところでは、神職たちによるお祓いらしき儀礼を執行中。
神田がお祓いで清められたのち、唐櫃から取り出した苗が早乙女により植えられていきます。

早乙女による田植
茜襷に菅笠姿の早乙女に扮するのは、大阪府摂津市の三島初穂講の人たち。
静寂の中、神聖なる田に苗が植えられる音だけが響いてそうな雰囲気ですが、
現場で聞こえる音はひたすらにバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ
バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ。

神楽女たちの御田舞を奉納
神田の上の舞台では、神楽女たちが、御田舞を奉納。
雅なる調べ「お田舞歌」が響いてるはずですが、現場で聞こえる音はひたすらにバシャバシャ
バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ。


やましろや稲荷の神の御田祭り、いざもろともに往きて舞はばやバシャバシャバシャバシャ
バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ
バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ。


八束穂の稲荷の御田におり立ちて、まひつかなでつ植うるさおとめバシャバシャバシャバシャ
バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ
バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ。


稲荷山かげをひたせる斎田に、八束垂穂の秋の色みゆバシャバシャバシャバシャバシャ
バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ
バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ。


田植えそのものは、特に儀式めいたアクションをするわけでもなく、実に淡々と遂行されます。
あ、舞が終わると、神職と神楽女は途中退場します。早乙女さんたちも、植えるだけ植えて、退場。
近所の人らしき見物のおばちゃんは、「うっとしいわカメラマン、落ちつかへんねん」と言ってました。
バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ。

稲苗
で、稲苗。
農耕民族は、狩猟民族よりよほど性質の悪い欲望を抱えた生き物なのではないか。
屹立するこの稲苗を見ながらそんなことを考えたというのはウソですが、
とりあえず、何かもう、お塚をまわるのよりも疲れました。マジで。

神田の客は、単身男性のカメラマンばっかり。
その大部分が老人。老人の趣味サークルみたいな連中、多し。
カメラマンはもちろん、普通の見物人も観光テイストは希薄で、近隣の参拝客でしょうか。
他のところは、おおむね普段通りの伏見稲荷という感じ。
学生っぽいのが多いですが、リア充ワナビー感はあまりなく、素直な貧乏系多し。
外人・中国人が若干多く、修学旅行生も多し。
ただ、いずれもすぐにお塚へ登っていくので、特にプレッチャーになるようなことはありません。
一番しんどいのは、やっぱり神田のお年寄りたちでしょうか。

そんな伏見稲荷の田植祭。
好きな人と行ったら、より農耕民族なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、農耕民族です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:若干
女性グループ:若干
男性グループ:若干
混成グループ:0
修学旅行生:若干
中高年夫婦:若干
中高年女性グループ:3
(おばちゃんカメラマン+近隣の見物人)
中高年団体 or グループ:若干
単身女性:若干
単身男性:7
【ひとりに向いてる度】
★★★
色気のプレッシャーはなし。
ただ、にわかカメラ老人が苦手な方は注意。

【条件】
平日金曜 12:30~15:00


伏見稲荷大社
京都府京都市伏見区深草薮ノ内町68
昼夜問わず参拝可能
JR稲荷駅下車すぐ 
京阪電車伏見稲荷駅下車 徒歩約5分

田植祭は毎年6月10日に開催

公式サイト 伏見稲荷大社

Wikipedia 伏見稲荷大社