上賀茂神社へ鳥相撲を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

2014年9月9日(火)


上賀茂神社へ鳥相撲を観に行ってきました。もちろん、ひとりで。

重陽五節句の中でも、正直、浮かばれない印象が否めない節句です。
3月3日は、上巳の節句で雛祭5月5日は、端午の節句。そして7月7日は無論、七夕
ついでに言えば、1月1日・元旦の代わりたる1月7日もまた、人日の節句ということで七草粥と、
五節句を構成する他の節句がかなり or それなりの人気と盛況ぶりを見せてるのに対して、
9月9日の重陽の節句は、現状としてはぶっちゃけ、人気以前に認知度さえ高いとは言えません。
数多ある節日の中から奇数のゾロ目日を選び、室町期の頃から祝されていたという、五節句。
江戸期に入ると幕府公認の祝日 = 式日となったことで、民衆から圧倒的支持を受けるようになり、
明治維新の際に公式には廃止されるも、雛祭&端午の節句&七夕は継続して人気を獲得。
根強いのであります。ターゲットが子供だからか何なのか、他の節句は実に、根強いのであります。
しかし重陽は、仲秋の名月に押され気味なのか何なのか、若干、浮かばれないのであります。
菊花を浮かべた菊花酒で、長寿を祝う節句であるにも係わらず、若干、浮かばれないのであります。
そんな不遇さに同情するのか、または宮中行事として菊花宴が催された実績を重視するのか、
あるいは 「明治以降のものは基本、全否定」 という集合無意識による闇のフォースが作用するのか、
京都では超メジャー級を含むいくつかの寺社が、この浮かばれない節句を祝う行事を開催。
世界遺産・上賀茂神社で9月9日に行われる鳥相撲 (からすずもう) も、そんな行事のひとつです。
祭神・賀茂建角身命が、東征する神武天皇を八咫烏に変化し導いた伝承を持つ、上賀茂神社。
その祭神の祖父・賀茂建角身命が、神に相撲を上覧したことに始まるともされる烏相撲は、
刀禰が横飛び+鳥鳴きを披露し、子供相撲が同時開催されるという、実に不思議でのどかなもの。
とはいえ、雅な由緒をアピールするためか、葵祭の花形・斎王代がオブザーバーとして参列し、
さらには菊花酒の振る舞いが行われることもあり、不思議ながらも人気が高い行事となってます。
子供相撲が写真アップ禁止ゆえ、何やってるか全然わからんビジュアルが続く内容ですが、
とにかくそんな不思議な鳥相撲、菊の露の香りを感じながら御覧下さい。


9:30頃に到着した、上賀茂神社、一の鳥居。ぱっと見、変わったところは、特にありません。
周りにいるのも、ガラガラをガラガラ這わせる阿呆の若者や元気の余った老人など、世界遺産客。
烏相撲は、相撲の前に行う神事が10時からスタート。始まるまで、まだちょっと時間があるようです。
というわけで、どっかの撮影クルーが小川へハマりそうになるのを見かけたりしつつ、境内を散策。


時間があるので、常に午前中で売り切れる門前名物・焼き餅の神馬堂へ行ってみました。
神馬堂、暖簾あり。でも、行列もなく、待ち客もなし。もう売り切れかと思ったら、普通に買えました。
「月見の節句」 と間違われやすい、重陽。それゆえ、お月見に焼き餅を焼いてるかも知れない、重陽。
というわけで、9月9日の重陽に食うべきなのは、焼き餅で決まりです。というのは無論、嘘です。


焼き餅を食うこと、しばし。葵家やきもち総本舗の隣のバス停にて食うこと、しばし。
至近距離で眺めると、焼きは入ってるものの月見感がより増しますが、今日はあくまでも重陽です。
味は、薄めの餅で餡を包んで、焼いたような感じ。もう少し単刀直入に言うなら、焼き餅みたいな感じ。
バス停では、上賀茂の参拝を済ませた観光客が、早くも次はどのスポットへ行くか相談してました。


食い終わってから境内へ戻り、二ノ鳥居をくぐったら、鳥相撲セッティングが登場。
立砂がある細殿の前庭に土俵が作られ、それを囲む形でテント付きの見物席が設けられてます。
細殿正面は、崇敬者席。サイド席は自由席らしく、入り方が色々説明されてましたが、詳細は知らん。
角の空き地は、報道スペース。めぼしいポイントは埋まってますが、まだそれほどの混雑はなし。


やはり時間があるようなので、暇つぶしというわけでもないですが、本殿にお参り。
土俵周辺は少し客層が変わるように思えましたが、この辺はまたどっぷりと、世界遺産客だらけ。
楼門をくぐり石段を昇った先でやってる特別拝観は、茅葺きの工事が40年ぶりに観れるそうですが、
今日はこれから行われる神事のため12時まで拝観中止なので、そそくさと祈り、そそくさと退散。


で、土俵の辺りへ戻った10時前頃、褌姿の少年たちが大挙して入ってきました。
陣取っていたカメたちが走り出し、凄い勢いで寄り集まります。褌姿の少年たちに、寄り集まります。
あ、少年たちの写真はプライバシー保護のため、撮るのは勝手だけどアップするのはNGだそうです。
ゆえに黒塗り、御容赦下さい。少年たち、土俵には入らず、橋殿へ移動。お清めでもやるのかな。


橋殿を抜け、そのまま奈良の小川の中へ入っていく少年たち。やはり、お清めです。
凄い勢いで集まるカメたち、さらに凄い勢いで寄り集まります。褌姿の少年たちに、寄り集まります。
お清め、実に神事相撲的な段取りですが、しかし烏相撲に於ける子供相撲は、割と近年の産物とか。
元々は宮中行事として行われた相撲節会の伝統に則り、大人による奉納が行われたそうですよ。


そのうち、斎王代&お供である稚児が橋殿に現れ、何らかの儀式が始まりました。
そう、斎王代であります。葵祭・路頭の儀に於いて花形として君臨してた、あの斎王代であります。
無茶苦茶に重いコス着て、衆目に晒されながら初夏の都大路をパレードする激務が課される斎王代、
葵祭後も役目は終わらず、雅さゆえ雅なる各種行事に重用され、重陽の節句にも徴用であります。


橋殿での何らかの儀式が終わると、褌姿の少年たちと斎王代御一行様は、本殿へ。
大量のカメ+わけもわからず付いてきた世界遺産客たちを後に残し、中で本殿祭が行われます。
菊の花に絹を覆いかぶせた 「菊の被錦」 を、神饌と共に神前へ奉納するそうですが、詳細は知らん。
菊の香りが付いた錦の露で体を拭うと、長寿の効果があるとか言われますが、それ絡みでしょうか。


本殿に動きがないので、先刻よりも全然混んでる土俵の周囲へ戻り、
アナウンスが鳥相撲について延々説明したり、各自熱中症対策もしてくれとか言うのを聞いてると、
11時頃、 「もうじきこっちへ来ます」 というアナウンスに導かれ、少年たち+斎王代御一行様が登場。
相撲を取る少年たちは、土俵の両サイドに着席。斎王代は、御覧のように細殿へ昇殿されます。


土俵では、禰宜方と祝方に分かれた神職たちが、己が方の勝利を祈願すべく、
土俵に円を描き踏み固める呪の地取りが行われますが、人が多くて何やってるかは全然見えず。
相撲の時間を知ってるのか、地元系が急に増え、その背後にも人間およびカメがへばりついてます。
地取りに続き、相撲を取る子供のリスト = 差符を神職が微声で読み上げ、斎王代もこれを被見。


続いて、鳥帽子+白張姿の刀禰が幄舎から現れ、鳥真似、始まりました。
刀禰、ピョンピョンと反復横飛びの後、横飛び。これを3回繰り返し。全然見えてませんけど。


移動して真横で見た、刀禰。弓矢・太刀・扇・円座を置き、鳥真似が始まります。
鳥真似、 「カーカーカー」 というより 「クアッ、クアッ、クアッ」 という感じ。これも数回リピート。


で、また道具一式を持って、また横飛び。


何度か横飛び。で、刀禰は幄舎へ帰還。


で、刀禰による鳥真似が終わると、いよいよ子供たちによる取り組みが始まります。
子供たちは禰宜方と祝方に分かれ、双方が相撲を十番取り、三人抜き・五人抜きを行うという流れ。
改めて子供たちの写真&動画のアップ禁止がアナウンスされ、ゆえの黒塗り、改めて御了承下さい。
相撲、取り組みの前に、まずは少年たちが行事に引き連れられる形で、立砂の周りを3回周回。


で、相撲。


相撲。


相撲。


相撲。


相撲。


という感じで、相撲でした。子供たちも、徴用された斎王代も、お疲れ様でした。
黒塗りで見えなかったでしょうが、相撲は結構しっかり、相撲。多くの取り組みで技が決まります。
それにしてもカメたちは、アップ禁止なのにも係わらず、何故ああも必死で写真を撮ってたんでしょう。
コンテストか何かでしょうか。では、コンデジとか携帯の人は、一体何のために撮ってたんでしょう。


子供相撲が終わると、重陽を祝す菊花酒の振る舞いが、志納制でスタート。
宮中で催された重陽節会に於いても、長寿と厄除けのために飲まれたという、雅な酒であります。
当然ながら長い列が出来ますが、そこへ群がるカメたちは、一体何を何のために撮ってるんでしょう。
斎王代+相撲少年+地元の小学生が記念撮影してるのを遠くから眺めながら、待つこと、しばし。


12時半頃まで待ち、人が減ったところで並び、100円志納して頂いた、菊花酒。
菊が浮かぶ如雨露みたいなのから入れてもらった酒は、ちょびっとの酒に菊の花が浮いてます。
無論、花もまるごと、瞬殺です。おちょこを返しに行ったら、花びらを残してる人が沢山いましたけど。
で、飲むもん飲んだら、退社。帰り際、神馬堂の前を通ったら、もう閉まってました。やはり、早い。

客層は、全体の半分強程度が、地元 or 身内系という感じ。
相撲に出てる子供たちの身内 or 同級生 or 知り合いといった感じの人たちです。
そこへ、たまたまこの日に来た世界遺産客のカップル・混成グループ・中年夫婦が混ざる感じ。
世界遺産客は、いずれの層も観光ハイ気味ですが、量が少ない分、プレッシャーは希薄。
また、この半分の世界遺産客が効いてるのか、残り半分や地元客ながら、アウェー感も希薄。
というか、こういった堅気の客よりも遙かに濃いインパクトを放つのが、カメの群れでしょう。
濃口というより遠来系の俄なカメがやらかす、疾走+狼狽+望遠レンズ突き刺しが目立ちます。
単独は、こういったカメ男と、微量のカメ女。そして普通の観光系っぽい女と地元系の女。
混雑は、御覧の通り、なかなかです。少しずつ減りますが、大勢に変化はありません。

そんな上賀茂神社の、鳥相撲。
好きな人と行ったら、より重陽なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、重陽です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:1
女性グループ:若干
男性グループ:微
混成グループ:1
子供:若干
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:2(身内)
中高年団体 or グループ:4
単身女性:微
単身男性:1

【ひとりに向いてる度】
★★★
アウェー感はないし、色気のプレッシャーも特にない。
人圧は高いが、無理に前面へ出なければ、さほど問題はない。
全体的には、穏やかな雰囲気が漂ういい行事だが、
血走ったカメの所行が苦手な人は、要注意。

【条件】
平日火曜 9:30~12:30


鳥相撲
毎年9月9日 上賀茂神社にて開催

上賀茂神社
京都市北区上賀茂本山339
通常拝観 10:00~16:00

市バス or 京都バス 上賀茂神社前 下車すぐ
市営地下鉄 北山駅下車 徒歩約25分
 

上賀茂神社 (賀茂別雷神社) – 公式

賀茂別雷神社 – Wikipedia