京の民宿・大原の里にてぼたん鍋を食べて聖夜を過ごしました。もちろん、ひとりで。 【前篇】

2015年12月24日(木)


京の民宿・大原の里でぼたん鍋を食べて聖夜を過ごしました。もちろん、ひとりで。

独男上等を謳う当サイトは、精神的外圧が年間で最も高まるクリスマスに於いて、
世間の馬鹿騒ぎへ真っ向から背を向けるべく、ひとりお泊まり企画を敢行し続けてきました。
が、2013年に地元・八幡橋本の遊郭転業旅館、そして2014年には大枝ラブホ街へ宿泊したことで、
実を言えば思いつき一発で始めたこのネタに突如、 「境界」 なるテーマが浮上して来たのです。
太陽の復活を祝うローマの太陽祭にルーツを持つクリスマスが、そもそも最初から孕む 「境界」 性。
そして、遊郭やラブホ街が、ある種のアジール性と共に極めて直接的な形で含有する 「境界」 性。
この辺のシンクロニシティを見極めることを考えて、私は橋本&大枝を宿泊地に選んだんですが、
橋本&大枝記事がクリスマスカテで並ぶ様を目にした時、別の真実に気が付いてしまったのでした。
これは、陰陽師が配備された平安京のスピリチュアル・ゲート 「四堺」 を押える流れになってる、と。
「四堺」 の 「坤」 即ち南西たる山崎と、橋により接続&その橋が地名の由来となった、橋本。
「四堺」 の 「乾」 即ち北西の峠であり、鬼伝説と共に長く軍事&交通の要衝であり続けた、大枝。
更には、2012年に泊まった町家もまた、 「四堺」 の 「巽 」 即ち南東たる逢坂へ続く三条通の傍。
そうです。私はまるで何かに導かれるかのように、 「四堺」 を時計回りで回っていたのです。
これもまた、 「境界」 の魔力による導きでしょうか。であれば、その導き、乗ってやろうじゃないか。
というわけで2015年の聖夜は、 「四堺」 の 「艮」 即ち北東たる途中峠・和邇を攻めることにしました。
北東は、言わずと知れた、鬼門。 「四堺」 めぐりの最後を飾るには相応しい 「堺」 と言えるでしょう。
ただその為か、困ったことにこの辺、宿が激少。激少というか、そもそも単純に、完全な山の中。
一晩歩き通すのも一興ですが、天候によっては死にますし、猿との白兵戦もない話ではありません。
なので今回は、その手前の大原へ泊まり、ついでにぼたん鍋を食い、英気を養うことにしたのです。
泊まったのは、近年温泉が掘削されて 「大原温泉」 の呼称も定着してる、京の民宿・大原の里
この風雅な宿にて、獣肉をたらふく食らった上で温泉も堪能し、 「境界」 との闘いに備えたのでした。
そう、これはあくまでも新たな挑戦なのです。当サイトが当サイトである為に必要な挑戦なのです。
決して、過酷な泊まりがいい加減しんどいので、温泉&グルメへ逃げたわけではありません。
断じて、冬場の食い物検索流入も狙い、温泉で駄目押しするわけでもありません。


というわけで、事前に入れた大原の里の予約。12400円のぼたん鍋プランを豪気に予約です。
前年の宿泊費2990円の4倍以上な出費ですが、 「境界」 との闘いに備える為なら安いもんでしょう。
それに、ひとり温泉OK+ひとりぼたん鍋OK+ひとり宿泊もOKな宿は、そもそも他にあまりないですし。
あ、百均サンタ帽は、魔除けです。あと、猪肉へのオマージュです。浮かれてるのではありません。


あ、ひとりがOKの宿があるから大原へ行くんじゃないですよ。あくまでも 「境界」 の為ですよ。
で、イブ当日の13時、京都バスで大原へ。で、チェックインの16時まで、大原を徘徊すること、しばし。
で、バス停から東の三千院方面へ行き、いつも通りというか平日仕様の大原の姿を見ること、しばし。
こんな日は流石に客は少なめかと思ったら、普通に大原な観光客が普通にいたので、早々に退散。


退散する途中、江文神社のことを思い出しました。そう、 「大原の雑魚寝」 の江文神社です。
「四堺」 も鬼門となれば、その手前にも境界性が漂うということでしょうか。暇なので、行ってみます。
手前の野菜&遠くの山を眺め、異常に良い景色だなと思いながら、東海歩道を南下すること、しばし。
それにしても江文神社、遠い。延々歩き、井手町の街並に見入って迷子にもなったので、更に遠い。


やっと参道へ入り、熊出没看板にビビりながら坂道を延々と登って、江文神社、着きました。
『好色一代男』 にて 「みだりがはしくうち臥して、一夜は何事をも許す」 と書かれてた社であります。
実際に乱交してた事実はないらしいけど。妄想&願望喚起力も 「境界」 の魔力という感じでしょうか。
雑魚寝の舞台たる拝殿はログハウス風に化けてて、 「ここでビバークすんな」 看板が立ってました。


アジールの伝説に別れを告げた後、歩き過ぎて16時近くになったので、いよいよ大原の里へ。
車道でショートカットして、大原の里や大原山荘がある大原温泉エリア = 寂光院エリアへ入ります。
寂光院がぼちぼちとクローズなので、人の姿はあまりなし。営業してる店もこの時点で既に、少なし。
コンビニの姿さえ、なし。これはもう、宿へ入ったらひたすら食って寝て、英気を養うしかないですね。


滋養への決意を固めながら、そして穏やかな温泉香を感じながら、到着した、大原の里
創業40年以上の昔ながらな建物であり、 「隠れ里」 「奥座敷」 な風情を感じさせてくれるお宿です。
そうですよ。私は、ここに泊まるんですよ。特攻とか侵入とかではなく、今回は普通に泊まるんですよ。
手前の看板通りに日帰り入浴も可ですが、私はしっかり泊まるんですよ。もちろん、ひとりでですよ。


堂々と暖簾をくぐった先の玄関では、部屋番号を伝えられ、その番号の下駄箱へ靴を収納。
出しといた予約紙を宿の人に渡し、確認が済むまでの間、玄関のストーブで暖を取ること、しばし。
といっても、この日はかなり暖かかったですが。だからか、評判で聞くような寒さも、全然感じません。
玄関前で売ってる白味噌アイテムやおかき、カップヌードルなど眺めるうち、確認が済み、部屋へ。


で、案内された部屋。普通に6畳の部屋です。オーソドックスな和風の造りの部屋です。
中央に炬燵がセッティングされ、エアコンやテレビもあり、お茶セットやアメニティも用意されてます。
「ひとり客なので庭が見えない部屋へ回されるかな」 と思ってましたが、見える部屋でした。よかった。
何せ、金閣寺出入りの庭師が手入れする庭だそうですからね。ただ今は、紅葉も雪も何もないけど。


とはいえ、まずはお茶セットで、一服。


また、庭も堪能。で、温泉、行きます。


寂光院へ続く小川の横の道を建物の中から眺めながら、通路を延々と歩き、浴場へ。
やたら奥にある浴場へ着くと、大浴場と中浴場を男女交代で使っており、この日は大浴場が男湯。
で、温泉香が漂う場内へ入ると、先客は一名。広さは、民宿と旅館の間程度のサイジングでしょうか。
で、とりあえずゆったり体を洗わせてもらいます。ボディソープなどは、概ね備え付けられてました。


体を洗ったら、浴槽が内風呂と直結してる屋根付き半露天風呂へ行き、しばし、まったり。
大原温泉は、低張性弱アルカリ性低温泉の単純温泉。だそうです。少しねっとりしてると感じます。
半露天で湯質を味わった後は、全裸で石段を登り、少し高い場所にある全露天の五右衛門風呂へ。
暖かい日ではありますが、全裸で歩くと流石に寒く、風呂へ浸かったら丁度良い塩梅になりました。


木の湯口との距離で湯温が変わる、五右衛門風呂。場所を変えながら、浸かること、しばし。
風呂から見える庭は、小さいなりに、風情あり。ただそれ以上に、外の空と大原の山が良いですよ。
空と山の見た目、そして聞こえる自然音が、やはり街中では味わえない醍醐味を感じさせてくれます。
あと裸だと、ここの空気に自然の気配が濃く混ざってるのも、実感。実に良い風呂でございました。


で、部屋へ戻り、浴衣へ着替えて、サンタ帽もかぶって、部屋の姿見で自撮りするの図。
浮かれてるのではありません。明日の苦行に備え、赤帽の魔除け効果を確認しただけのことです。
また、地鶏味噌鍋が本来の名物たるこの宿へささやかな敬意を表すべく、自撮りしただけのことです。
あ、 「浴衣が有料」 とか某サイトに書いてありましたが、普通に部屋にあって、普通に使えましたよ。


で、TVの映り加減を確認してたら、何か似た恰好してる人を見かけて、じっと見入るの図。
浮かれてるのではありません。KBS京都 『5時に夢中』 をネットしてる理由を考察してるだけです。
また、 「ブスがクリスマス話すんな」 というネタでの志麻子先生の話に、ぼっけえ共鳴してるだけです。
あ、TV、地デジは普通に見れましたよ。BSはどうか忘れましたが、KBSは御覧のようにOKでしたよ。


で、炬燵に入り、買ったDAKARAで水分補給をしながら、夕食までしばし休息するの図。
ダラケてるのではありません。やがて開始される獣肉の宴に備えて、イメトレに励んでるだけです。
野生の猿との白兵戦も発生しかねない途中峠越えの為、より良き滋養の取り方を考えてるだけです。
あ、浴場近くの自販機で買ったDAKARAは、200円。130円のものは、概ね150円で売ってましたよ。


で、前の写真もそうですが適当自撮りで飛びまくってる中、もっとしばし休息するの図。
ダラケてるのではありません。同志が潜んではいないかと、耳に全エネルギーを注いでるだけです。
風呂を上がった頃、丁度17時過ぎから来客が一気に増えたので、その音に耳を澄ましてるだけです。
あ、浴場近の自販機、酒とビールも一応置いてましたよ。フロント前にも、酒ケースがありましたよ。


という感じでダラケ切ってると、18時半頃、夕食の用意が出来た旨のアナウンスが流れました。
が、日本語に続き英語でも放送するのに感心しながら寝返りを打つと、そのまま再び寝入りました。
結局、19時過ぎになって、食堂へ。そう、食事は食堂です。で、部屋番号ごとに用意された席へ着席。
で、席には、鍋。一人用の小さい鍋だろうと思ってたら、フル仕様の鍋だったので、何か恐縮します。


鍋の前には、特製つけだれの小皿、前菜三種盛り、食い放題という白飯の茶碗などがあり。
あ、もちろん大原名物である漬物もあり。これはもう、雑炊&茶漬のW締めを食らうしかないですね。
ただ、いつまで経っても白飯も茶も入れに来ないので、 「?」 と思ってたら、ここはセルフなのでした。
他の客の動きを見て、気付きました。因みに、他の客は大抵二~三人組で、ひとりは私だけでした。


で、とりあえず茶を自分で入れて、鍋の火も入れて、煮立つのを待ちながら前菜を食らう。
前菜は、何らかの和え物、ニシンの甘露煮的な何らか、そして何らかの筑前煮的な何らかの三種。
ぼたん鍋プラン、 「品数は少なめ」 とサイトにはあったので、前菜は温存しようかなと思ってましたが、
実際には野菜の量が全然少なくなく、むしろ多いので、温存を止めて即座&一瞬で食い切ります。


で、こちらがその全然少なくない野菜。直径30cmほどのデカい皿に、山盛りです。大量です。
ラインナップは、白菜・エノキ・シメジ・タマネギ・水菜・もやし・さつまいも、あと小さめのニンジンも。
加えて、太めの蒟蒻に豆腐、うどんも付属。昼食を抜いて臨んでますが、それでも少し、怯みました。
が、この自家栽培されたという野菜が、実に美味かったんですよね。何ならもう、肉を凌ぐ勢いで。


とはいえ、今夜の主役はあくまでも、猪肉。で、来ましたよ、ぼたん肉。
やはり30cmほどの大皿で、出ましたよ。牡丹の花のように美しく並べられて、出ましたよ。


猪肉、花びらのような表面に山椒がうっすらかかってて、美味そうですよ。
この美味そうな肉を、これから食いますよ。全部、食いますよ。ひとりで全部、食いますよ。


では材料を投入するわけですが、その前に、味噌出汁と具材の絡みの具合を見ときます。
といっても、味を厳密に確かめるのではなく、放り込み&放置でOKなタイプかを見る程度ですけど。
味噌は、和風の糠臭い感じではなくピリ辛で、中華的なようで中華でもなく、独特の濃厚さがある感じ。
肉と野菜をちょっとだけ入れて、野菜をちょっとだけ食った感じでは、放り込み&放置でOKかなと。


ちょっとだけ入れた猪肉もちょっとだけ食って、肉の味&味噌出汁との相性を確認。
肉質は、豚肉よりあっさりしてる感じ。固くもなく嘘臭い柔らかさもなく、実に自然な肉の味わいです。
野趣は感じますが、いわゆる臭みは全くなし。味噌で匂いをカバーする必要は、ないかも知れません。
「白出汁でもいけそうな」 とか思ってたら、大原の宿には 「山椒ぼたん鍋プラン」 もあるそうですよ。


ガッツリ放り込んでもOKと判断し、一気に肉と野菜を投入。煮ながら、食いまくります。
ひとり鍋ばかり食ってる奴は煮方が雑と思って頂いたところで、クリスマス in ぼたん鍋、前篇終了。
後篇では、次々新たな表情を見せる鍋と、新規投入した獣肉、〆に潜むトラップと死闘を展開します。
そして、真のミッションである途中峠・和邇への出発に至ります。必ず、至ります。絶対に、至ります。

京の民宿・大原の里にてぼたん鍋を食べて聖夜を過ごしました。もちろん、ひとりで。 【後篇】


 
 
 
 
 
 
 
京の民宿・大原の里
京都市左京区大原草生町31

京都バス 大原下車 徒歩約15分

大原温泉の湯元・京の民宿 『大原の里』 – 公式