酔心京都駅前店で松茸と秋鱧を楽しみました。もちろん、ひとりで。

2023年9月21日(木)


酔心京都駅前店で松茸と秋鱧を楽しみました。もちろん、ひとりで。

「駅前でその土地の名物を、雑に食べたい」 という欲求が、激しく湧くことがあります。
いわゆる名店とかではなく、名店の駅前店とかでもなく、単なる駅前の店で食べたいのです。
それこそ、昭和の頃から一見特化型の観光メニューばかり扱い続けてるような店が、むしろ良い。
18きっぷでどっかの街に途中下車した時などは、この妙な欲求、ことさら激しく湧き上がります。
持ち金が少なく店探すのも面倒だからではあるんですが、きっと理由はそれだけではありません。
大きな声では言えないけど、行きずりの郷土感みたいなものを積極的に味わいたいというか、
「あれこれ言うの、野暮だよ。わかってるよね」 みたいなのを、味わいたくなるのです。
裏暗いと言えば裏暗いこの欲求、観光都市・京都では、満たしてくれる所を案外と見かけません。
単に私が地元の人間だから、そもそも京都にあまり郷土感を感じられないこともあるんですが、
実は京都の側にも、この妙な距離感の郷土感を生じさせない何かがあるような気もしたりします。
観光客相手の店は、もちろん沢山あるわけです。そして、そうでない人向けの店も沢山あるわけです。
が、その間はあまりないという。前者は概ねガッツき過ぎで、後者はそれこそ一見さんお断りという。
「生理現象を持つ匿名的存在」 として通り過ぎることが出来る場所が、この街には割と少ないのです。
昔の鴨川の河原などは、あるいはそんな場所たり得てたのかも知れません。しかし、今は違います。
花街はそんな場所の極致とも言えますが、その一方で顔認証技術がない時代から顔認証空間です。
駅前的な距離感で京都を楽しむのは、難しい。田舎ながらも駅前育ちの私は、そう思ったりします。
ひょっとすると、鉄道が開通する遙か以前に都市が完成し、のみならず没落さえ進行してた京都では、
そもそも 「駅前感」 といったものを漂わせる駅前が結局は生まれ得なかったのかも知れません。
そんな京都に於いて、私が駅前感を感じられる場所を挙げるなら、京都駅前の酔心でしょうか。
酔心京都駅前店。京都のチェーン居酒屋であり、京都駅とも地下で直結してる庶民的な店です。
初秋には、初秋の京都名物・秋鱧&松茸も出してます。ので、雑に食べに行きました。


私にとって京都駅は新幹線より在来線の駅なので、こうして在来線ホームに立ってるんですが、
18きっぷで東の方から京都へ来たような方も、こんな感じでこのホームに立つんじゃないでしょうか。
この日は激しい雨が降り、この頃はそれが止んだ頃。こんな時は、なるべく地下を通りたいもんです。
目的地の酔心は地下で、ホームには地下行き階段もあるので、完全地下移動も可能ではあります。


しかしそれでは風情があまりにも無さ過ぎるので、京都駅の地上屋内を通って行くことにします。
ホームは通勤客がメインでしたが、中央改札前まで来ると、流石にガラガラを引く人民が増えました。
頭上には、天空通路。そして出口の彼方には、京都タワー。これこそ、観光都市・京都の玄関口です。
「京都にはこういうの、求めてない」 などといった勝手な幻想に基づく批判は、一切受け付けません。


改札前から見えるのは、無意味に高い天井と無意味に張られたガラスが名物の中央コンコース。
その手前の無意味に長い階段も名物で、高低差は35m。走って登ると、きっと凄く疲れると思います。
無意味に張られたガラスは、その数、4000枚。割れて落ちて来て当たると、きっと凄く痛いと思います。
「京都にはこういうの、求めてない」 などといった勝手な幻想に基づく批判は、一切受け付けません。


そういえばこの広い空間は、 『ガメラ3』 で怪獣映画初という屋内戦の舞台にもなったのでした。
溢れんばかりのSF感。全人類の幻想の箱庭としての京都、その門に相応しい誂えではあるでしょう。
巨大ディスプレイに映る舞妓はんも、バブル遺跡の如きブレードランナー感を過剰に醸し出してます。
あ、こういう冗談、もうウンザリですか。実は私も、割とウンザリです。そろそろ地下、行きましょうか。


その前に、京都タワーには挨拶しておきましょう。それが、京都駅・烏丸口を通る者の掟です。
完成時は醜悪とも言われたという、京都タワー。私も昔にこれ見て 「Fuck」 とか呟く外人を見ました。
でも、ガメラさえ怒って破壊したシン・京都駅を見た後だと、侘寂を湛えた佇まいに感じられるというか。
駅の景観のつまらなさを中和してくれてる気もします。安っぽい昭和感も、雨だと案外良い風情です。


少し掘れば何か出て来て工事が止まる京都で、地下街の成立は決して古い話ではありません。
市営地下鉄開業とほぼ同じ1980年、京都駅前のこのポルタが、京都初の地下街として誕生しました。
阪急・河原町駅烏丸駅間の地下通路はもっと前からありますが、店は基本、なし。此処が、初です。
先述通りホームからも直行出来ますが、今夜は駅前地下街の正門たる中央口前口から、地下へ。


観光都市・京都の玄関口として、扉や門を意味するイタリア語 「porta」 から命名された、ポルタ。
最近は京都駅ビル内の商店街と統合して規模がさらに広がり、何だかずっと改装工事をやってます。
時間は、21時過ぎ。普段は通り過ぎるだけの京都駅を面白がってうろついてると、随分遅くなりました。
店はかなり閉まってて、萬重などの駅前支店もこの時間だともうLO。ゆっくり出来そうにありません。


こんな時こそ、酔心なわけです。酔心は0時まで開いてます。雨でも地下から濡れずに行けます。
ポルタを抜けてさらに北上した先は、壁のみならず照明まで昭和チックな、駅前ビルの地下口ゾーン。
この辺、大幅な改装の記憶が私にもないので、昭和末期の景観が本当に残ってるかも知れませんね。
京都タワーの妙に派手な地下口や、ヨドバシ&弘&東本願寺の誘客看板を眺めたりしながら、北へ。


着きました、SKビル。低い天井の入口がインパクトを放つ、SKビル。此処が酔心の入るビルです。
酔心。本名、旬彩酒房酔心 京都駅前店。京都の飲食チェーン・黛グループの旗艦店だったりします。
B2とB1を占め、総客席数550席にして90名以上の大宴会にも対応出来る、大箱の居酒屋であります。
ビルは、炭火焼すいしんやもう少し高級な京すいしんなどの系列店も入ってて、正に酔心ビル状態。


ビル入口には、酔心のメニュー看板あり。さりげなく、松茸。そして、鱧。実に京都の初秋ですね。
そういえば京都駅は、丹波と京都を結ぶ山陰線の起点で、松茸の集約地としての歴史を持ってます。
また魚市場が京都駅前に移転した後は鱧海道の終端となり、鱧の集約地としての歴史も持ってます。
つまり此処は、真に京都の初秋を感じるのに相応しい場所なのです。嘘ではありません。本当です。


と、嘘を自分に言い聞かせながら入店しようとすると、単独のおっさんが入店を断られてました。
というか此処、ひとり客はB2ではなくてB1へ通される掟みたいなのがあるんですよ。で、地下口はB2。
おっさんはB1へ上がり、私もその後をついてB1へ。何か中華料理屋みたいな玄関が、B1の玄関です。
近付くと、中から喧噪が聞こえてきました。まさか満員で、本当に入れないなんてことはあるまいな。


心配しながら店に入り、玄関で 「ひとりなんですけど」 と言ったら、普通に席へ通されました。
実際の店内は、外人グループ多めの8分程度の入りで、通されたカウンター席も割と埋まってる感じ。
注文はタブレットで、最初の1杯だけ人力注文させることで何とか席単価を確保しようとするシステム。
京都の初秋に相応しいレモンサワーを頼んでから、起動したタブレットで松茸と鱧に取りかかります。


オーダーするのは、鱧と松茸の土瓶蒸し、そして鱧と松茸の天ぷらと、最初から決めてます。
季節メニューは、 「おすすめ」 の最後の方に隠れるようにありました。あまり出したくないんでしょうか。
他にも鱧&松茸のメニューはあり、松茸の釜飯なんてのも魅力的なんですが、30分かかるのが辛い。
いや、暇なので別に待つのはいいんですが、30分待った末に悲しくなると困るので、止めときました。


注文後、 「9人なんですけど」 「10人なんですけど」 みたいな団体がひっきりなしに来たり、
岩波新書とかの話をしてた隣のおっさん2人組が帰ったりするうちに、松茸と鱧の天ぷらが到着。


天ぷらは、どちらも小さな数ピース。松茸の天ぷらは、松茸的な何かを天ぷらにした感じ。
特に期待はしてませんでしたが、逆期待みたいなものにはしっかり答えてくれる味ではあります。


鱧の天ぷらも、鱧的な何かを天ぷらにした感じ。鱧的な気分は堪能出来るかと思います。
そう、この気分が大切なのです。初秋なので初秋のもん食うという例年通り感が、大切なのです。


席が開くのを待つリーマン団体の悪態を見ながら天ぷらを食ってると、土瓶蒸しが到着。
土瓶蒸しの土瓶は、底の直径が10cmくらい。蓋が出汁呑みになってて、上にスダチが乗る仕様。


メニュー写真の松茸と鱧は土瓶から溢れ出る勢いでしたが、実物はもう少し大人しめ。
特に期待はしてませんでしたが、逆期待みたいなものにはしっかり答えてくれる味ではあります。


松茸を外に出して食っても、印象は変わらず。松茸的な気分は堪能出来るかと思います。
そう、この気分が大切なのです。初秋なので初秋のもん食うという例年通り感が、大切なのです。


天ぷらと土瓶蒸しは、どっちも割と塩辛め。ついでにレモンサワーも、割と遊びのない辛口仕様。
ノンアルの甘い物が欲しくなったので、京都の初秋に相応しいスパークリングバナナを追加しました。
隣でしてる大工&看護師の専門学校の話を聞きながら、またどっかでグラスが割れる音も聞きながら、
そして背後から漂う外人の強烈な体臭を浴びながら、強炭酸にバナナを混ぜたような何かを丸飲み。


入店から30分ちょっとしか経ってませんが、松茸と秋鱧を食えば用事は終わりです。帰ります。
タブレットで確認すると、代金は3000円強。便利ですね、タブレット。勘定そのものは人力だったけど。
22時過ぎでも来る団体に、店員さんが 「ちょちょちょっと待って下さいね」 とか言ってるのを聞きながら、
千円札3枚&予め用意した小銭で勘定を済ませ、喧噪の収まる気配がない地下の店を後にしました。


店を出たら、来た時と同様に地下を通って京都駅から電車に乗って帰ればいいだけなんですが、
外から聞こえて来る声が雨上がりっぽかったので地上へ上がってみると、本当に雨が止んでました。
ここぞとばかり、酔心の看板と京都タワーのツーショットを拝見。酔心の旧字看板、よく映えてますね。
そういえば、広島には横山大観ゆかりの酒・酔心がありますが、何か関係あったりするんでしょうか。


地上の酔心ビル付近は外人しかいないような状態になってて、7割白人/3割アジア人な感じ。
連中は、酔心や京すいしん、または他の居酒屋やビッグエコーなどへ、雑に吸い込まれて行きます。
そして家路を急ぐ地元の人は、連中の間を魂を殺した感じで通り抜けて行く、2023年9月の京都駅前。
強くて遊びがないと感じたレモンサワーのアルコールは、辺りを歩いてるとすぐ冷めてしまいました。

この日の酔心の客層は、基本的に中高年より上だけがいる感じ。
若い連中もいることはいるんですが、若い連中としては来ておらず、リーマンとして来てる感じ。
リーマン以外は、おっさんの2~3人組や素性不明の男女、その他諸々。
基本、全属性が若くありません。まともに若いのは、外人グループくらいでしょうか。
ひとり客は、リーマンのおっさんがそこそこいるくらいです。

そんな酔心京都駅前店で楽しむ、松茸と秋鱧。
好きな人と楽しめば、より駅前なんでしょう。
でも、ひとりで楽しんでも、駅前です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:微
女性グループ:0
男性グループ:0
混成グループ:1
子供:0
中高年夫婦:0
中高年女性グループ:0
中高年団体 or グループ:9
単身女性:0
単身男性:微

【ひとりに向いてる度】
★★
単独を敬遠する風は全然ないが、歓迎する感じも別にない。
その辺に傷つく消費者マインドの人には、向かない。
本気で松茸や鱧を味わえると思ってしまう人にも、向かない。
ただ、雨が降ってる時や深夜は、間違いなく便利。
駅前感が好きな人や、地場チェーンマニアにも、推す。

【条件】
平日木曜 21:30~22:15


 
 
酔心 京都駅前店
京都市下京区東塩小路町719
SKビルB1/B2
日曜以外 17:00~24:00
日曜 17:00~23:00

JR/近鉄/市営地下鉄 京都駅下車
徒歩約3分

黛グループ – 公式
酔心 京都駅前店 – ぐるなび