祇園祭の山鉾巡行へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

2011年7月17日(日)


祇園祭の山鉾巡行へ行ってきました。もちろん、ひとりで。

山鉾巡行。
正に名実ともに祇園祭の代名詞、もはや京都観光そのもののアイコンとさえ言える、
文句なしの花看板、メインイベント中のメインイベントであります。
が、この山鉾巡行が宵山よりも来客数が少ないということを、実は私、今さっき知りました。
2011年度の山鉾巡行の来客数、20万人。対して、宵山に集った烏合の衆の数、45万人。
少ないどころの話ではありません。ダブルスコアでお釣りが来ますな。
知った瞬間は驚いたんですが、しかし我に帰ると、納得です。まあそりゃそうだわな、と。
良くて、ピーカンの激暑。悪くて、梅雨明け前の猛暑+猛湿度。最悪で、豪雨か台風。
そんな7月の気候の中、京都の街中を朝早くから駈けずり回るなど、正気の沙汰ではありません。
山鉾巡行は、KBS京都の中継で見るもの。あるいは、過ぎ去るのを家の中でただじっと待つもの。
京都市民のみならず、辺境の民である私でさえ生活感覚としてはそう認識してるのであり、
実際、今の今まで山鉾巡行を見たことはありませんし、見たいと思ったことさえありません。
が、このサイトのモットーはあくまでも、メジャーどころの単独正面突破。
メジャー中のメジャー、キング・オブ・キングの山鉾巡行から、逃げを打つわけにはいかないのです。
宵山のダメージがまだ全く体から抜けてませんが、意地だけで現場へ赴きました。
苦しくも今年の山鉾巡行は、日曜開催。さらに悪いことに、快晴です。


警察が「まだ交通規制してません、歩道へ上がってください」とエンドレスで絶叫し続けている、
巡行開始30分前のくじ改め関所周辺。既に人、いっぱいです。
歩道の後ろ側はまだ余裕がありますが、それも巡行が始まる9時頃にはほぼ埋まり、通行不能。


くじ改めのそばにいると移動不可能になりそうなので、綾小路をすり抜けて、四条烏丸へ。
鉾の辻付近、たくさんの山鉾が出発をスタンバってるのを眺めます。
「暑い」とか「眩しい」とかではなく、「痛い」太陽光が鉾とアスファルトを焼きまくり。


月鉾の前面に座る、何ともいえない表情の稚児人形。名を、於菟磨。
元はどこも生稚児が乗ってたそうですが、現在は注連縄切をする長刀鉾を除き、人形です。
暑いもんな、太陽に向かって進むんだもんな、とか思ってるうちに月鉾、動き始めました。
巡行、スタートしたんでしょうか。


完全歩行不能の四条通を避け綾小路を東進、高倉通から見た、長刀鉾。
アーケードで頭が切れると、妙に巨大さが強調されるような気がします。
注連縄切へ向かう途中でしょうか。一応、見たいですが、もはやどうにも近づきようがありません。


長刀鉾の後ろに続くのは、8年ぶりにくじで山一番を引いた、霰天神山。
この日の気候、日差しこそ殺人光線のパワーを誇ってますが、日陰に入ると涼しい風を感じます。
実に京都らしくない、爽やかな暑さです。動くと速攻で汗だくですけどね。


太陽を正面から浴びながら東進するのはつらいので、何とか阪急の地下道へもぐりこみ、
木屋町出口から地上へ出て、東側から超順光で望んだ四条河原町交差点。
言うまでもなく、辻回しの見せ場です。ゆっくりと時間をかけ、少しずつ角度を変えていきます。


長刀鉾の生稚児、禿、そして町衆。皆さん、東を向いてます。
ここからだと、遥か彼方の八坂神社西楼門が見え、それは見事な絶景なんだとか。
でも同時に、陽の光も正面から浴びてるはずです。山鉾の中、一体何度くらいあるんでしょう。


四条河原町では、大量のカメラマンと携帯片手の見物客が張り付いてます。
鴨川の向こうまで交通規制されてるため、道の真ん中から山鉾が撮れるのは嬉しいですが、
そのぶん屋根がないので、それこそ火傷のような勢いで陽に焼けます。
報道および先乗りしてきた者のグループが先頭集団を形成、
その頭が入らないところまでバックしたあたりに第二グループ、その後ろには警察。


長刀鉾に続いて、四条河原町へ進入する山鉾たち。
孟宗山、芦刈山、函谷鉾、函谷鉾、油天神山、見えないけど四条傘鉾&保昌山、そして彼方に月鉾。
警察は「御池はまだ空いてるのでそっち行って」と、執拗にアナウンスしています。


善良なる市民である私は、警察に言われるがまま御池へ移動します。
歩行者天国化してる四条大橋を渡り、定期を持ってる京阪の四条駅へ逃げ込み、三条までワープ。
ついでに駅ビル内の喫茶店で、アジア系ウェイトレスがおっさんのオーダーを取り忘れ、
そのおっさんがブチ切れて帰るのを眺めながら美味くもないモーニングを喰らいました。


三条駅を出て河原町御池へ行こうとしたら、函谷鉾とバッティングして動けなくなったの図。
ちなみに、函谷鉾の後のビルは、朝日ビル。「朝日シネマ」というミニシアターが入ってました。
「エヴァ」が上映された時だけ行列が出来たもんですが、もちろん山鉾には一切関係ない話です。


少し人が減った隙を見て、河原町通を南下、六角あたりで山の集団と出会うの図。
太子山、占出山、木賊山、そして彼方に鶏鉾。何となく、呪術感溢れるラインナップであります。


アーケードで上が隠れてる、月鉾。
巨大さを強調するための、意図的に敢えて選んだ構図です。本当です。嘘ですが、本当です。
全くどうでもいいことですが、このあたりで和装のお姉さんがお茶の試飲をすすめてましたが、
何故か私には一瞥もくれませんでした。全くどうでもいい話です。


SHIDAXの前で一時停止中の、鶏鉾。もちろん、ちょっと寄って、何か歌うわけではありません。
歌どころか、山鉾の人たちはトイレにもいけません。もっとも、尿意より脱水の方が怖いでしょうが。
音頭取りのおじさんが飲んでるのは、クリスタルガイザー。


木屋町通へ逃げ、同様に人ごみを避けてきた観光客にまみれながら南下、また四条河原町へ。
時刻はもう、11時。しかし、まだまだ山鉾は辻を回りまくってます。
菊水鉾、白楽天山、山伏山、蟷螂山、放下鉾、そして彼方に岩戸山。
あ、そういえばこの頃、熱中症で倒れた人が鉾の前を担架で運ばれていきました。
ちなみに今年の山鉾巡行、15人が倒れ、病院へ担ぎ込まれたそうです。


この時間になると、場の空気はかなり「ダレ」てきます。
辻の最前列へ出るのも、難しくありません。が、楽になると行くのが急に面倒くさくなるのは、何故。
元来、「さきのまつり」と「あとのまつり」が2週に分けて開催されてた、山鉾巡行。
「ダレ」るのは合併された「あとのまつり」巡行の頃であり、気温の上昇と疲労が堪える頃でもあります。
見物人が露骨に減るため、最近では「あとのまつり」の復活が模索されてますが、
その理由を自分の肉体で納得させられる状況ではありました。岩戸山、ごめん。


河原町と木屋町の間のエロ道を、観光の家族連れが間悪そうに歩いてるのを見ながら北上、
木屋町通へ出てまた北上、ゼストに潜って地上へ出たら、放下鉾が曲がる京都府庁前。
最も見世物的なエリアですが、スルーします。見世物だからではなく、日陰がなくて暑いからです。


烏丸御池を抜けると、山鉾は一応巡行を終了しますが、自分の町へすんなりは帰りません。
それぞれ何かよくわからんルートで山鉾町の狭い通りをウロウロします。
写真は、室町通へ進入する郭巨山。


狭い通りをウロウロするのは、小さめの山だけではありません。
新町通をのっそのっそと南下する巨大な鶏鉾。何となく、特撮的ダイナミズムがあります。
こういう美味しい絵を見ると、京都の厳しい建築規制も意味あるなという気になるもんです。
人も少なめで、風情もあり、このあたりが巡行で一番味があるかも知れません。


超至近距離で見ると、胴掛が色っぽい白楽天山。そして鶏鉾の見送りを見送る観客。


ダイナミックな辻回しが連続して見れるのにも関わらず、
比較的見物人が少ない、13時過ぎの四条西洞院近辺。暑いから当然かも知れませんが。
手前は「ワシ、もうあきまへん」と言いたげに手を振る、蟷螂山の蟷螂。
沿道から「動かして~動かして~」と声が上がるたびに手を振ってました。お疲れ様です。


13時、早いところはもう仕まいです。巡行を終えた山鉾は、ただちに解体されます。
神輿が通る道を清めるため、邪気を山鉾に回収するというのが、山鉾巡行の本来の意義。
邪気を断つため、ぶっ壊すのが本当はベスト。でも、そんなことしてると、即、破産。
なので、さっさとバラして邪気を消滅させるんだそうですよ。写真は、ひっそりと解体を待つ木賊山。

私も、見てるだけながら、くたびれました。ここらで追っかけを切り上げます。
まだ「あとのまつり」の山がだいぶ見れてませんが、命には変えられません。
法被着た人たちでいっぱいの相生餅本店で冷やしうどんを食い、
日曜は朝7時から開いてる白山湯六条店で汗を流し、夜の部へ備えます。
そう、今日の神事はまだ終わりではないのです。むしろこれからが、本番なのです。

混雑は言うまでもなく、強烈です。
特に撮影に適した場所での肉まみれ感は、人外魔境。
宵山の半分の客とはいえ、歩道領域は圧倒的に狭くなりますから、体感混雑度は激化します。
もちろん、客の大半は観光客。年齢層は、意外と高し。
基本的には烏合ですが、でも確実に宵山よりは年齢層、高し。
カップル率、低め。いや、数はたくさんいますが、それ以外の人間がもっとたくさんいます。
ケチって楽してリア充感を味わいたがるような若者グループは、影も形もなし。
奇行が多いのはもっぱら中年以上の方で、ぶつかってきたり、割り込んできたり、
汗まみれの肌を密着させてきたりと、なかなかワイルドです。
単独は、カメラマンがメイン。というか、本当にもう細かいことなんか、知らん。

そんな山鉾巡行。
好きな人と見たら、より祇園会なんでしょう。
でも、ひとりで見ても、祇園会です。

山鉾を一切見ずに2013年の祇園祭・山鉾巡行を楽しんできました。もちろん、ひとりで。
2012年の祇園祭・山鉾巡行へ行ってきました。もちろん、ひとりで。【前篇】
2012年の祇園祭・山鉾巡行へ行ってきました。もちろん、ひとりで。【後篇】


【客層】 (客層表記について)
カップル:2
女性グループ:1
男性グループ:若干
混成グループ:若干
修学旅行生:0
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:2
中高年団体 or グループ:3
単身女性:若干
単身男性:1

【ひとりに向いてる度】
★★
基本、やめといた方がいい。
フィジカルなダメージが、凄過ぎる。
敵は人間ではなく、暑さ。
太陽に加えて、湿度が追い討ちをかける。
単独行動で倒れ、ケアが遅れた場合、
マジで命の危険。

【条件】
日曜 8:30~14:00

山鉾巡行
例年 7月17日 9時スタート

市営地下鉄四条駅 or 烏丸御池駅
or 京都市役所前駅 下車
あるいは阪急烏丸駅 or 河原町駅 下車
もしくは京阪祇園四条駅 下車

人間だらけで近づけそうにないところへ、
無理矢理押し込んでいけば、
たぶん何かに辿り着く

京都新聞 – 山鉾案内図