石清水八幡宮の石清水祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。【2012年度版・後篇】

2012年9月15日(土)


2012年度の石清水祭、御花神饌からラストまでの後篇です。

石清水祭の旧名は、石清水放生会。
もちろん、八幡神の元宮である宇佐神宮の祭儀・放生会が、そのルーツです。
8世紀初め、律令制の徹底を目指した朝廷に対し、南九州の隼人が起こした叛乱を、
「おれが行く」 と、自分から言い出して戦場へ殴りこみ、殺戮の果てに鎮圧した、宇佐の八幡神。
しかし、殺された隼人の祟りは凶作を招き、八幡神は 「放生会で霊を慰めろ」 と、託宣。
「仏教の戒律に基づいた法会を神社で行う」 という八幡宮独自の祭儀は、ここに始まりました。
贖罪テイストが濃い端緒であります。が、別の見方をすれば、叛乱完全鎮圧の宣言とも言えます。
国的には結構、めでたい儀式になるわけです。律令制完成の、めでたい儀式になるわけです。
おまけに当時の朝廷は国を統一するため、土俗的な信仰を超越する仏教をゴリ推してましたから、
統一祝賀+仏教全開の放生会は、やがて国家的事業の性質も帯びるようになりました。
「おれが行く」 と、また自分から言い出して移座した石清水でも、放生会のそんな傾向は変わらず。
というか、都へ接近したことで神仏習合も鎮護国家もさらにブーストされる形となり、
皇室からは供花にしか見えない御花神饌なるものまで、お供え物として届くようになります。
古代染めの和紙で作られた造花による特殊神饌、御花神饌。別名、 供花神饌。
極めて珍しいこの神饌、実に戦前に至るまで御所から届いてたそうですが、戦後は途絶。
しかし近年、三笠宮彬子女王殿下が代表を務める団体・心游舎「御花神饌プロジェクト」 として、
一般から参加を募った子供たちと共に、神饌作りへ関わられるようになりました。
言ってみれば、ほんのちょっと旧儀に返ったような感じなのであります。
石清水祭2012後篇、その御花神饌から、スタートです。


頓宮前へ並んだ、御花神饌。そして、ほとんど写ってないけど、彬子女王。
御花神饌、戦後は地元の花屋が作ってましたが、染織史家・吉岡幸雄氏がそれに、ダメ出し。
「あきません」 と。「ほんなら」 ということで、近年は同氏の工房・染司よしおかが担当してました。
それを今度は、心游舎+子供+よしおかで作るようになった、と。で、女王もいらしてる、と。


女王、TVのインタビューを受けると共に、参加した子供の相手もされてます。
心游舎の子というと超セレブな子に思えそうですが、基本、普通の子。はしゃぎまくりです。
女王は、実にソツなく対応されてました。インタビュー時の声は、まるで大学の先生みたいでしたが。
あ、女王の写真は、自粛。神饌の方を、じっくり見ていきましょう。手前に梅、そして雪持竹。


取材の人だかりの背後で、右から南天、椿、水仙。


花の足元には、別の花や小動物があしらわれてます。
写真は、さっきの南天の足元にいた、可愛らしい兎二羽&寒菊。


杜若の足元の、鴨&河骨。


紅葉の足元の、見返り鹿&座り鹿&桔梗。


小動物は、足元にいるとは限りません。
御覧のように、松の中に鳩&巣籠子が潜んでいたりして。


桜の花に蝶が止まってたりして。


牡丹に蜻蛉が止まってたりして。


中には 「止まってる」 とは言いがたい存在感を放つ動物も、いたりします。
写真は、橘の木の中でがっつり構える、鷹。というか、花の写真、もっと撮れよ。


やがて御花神饌は、元の頓宮御簾の前へ並べられます。
撮ったのは動物ばかりとはいえ、これで二つ目の宿題も完了。またしても、感無量です。
そういえば、撮ってる途中に北門の外を見ると、ハイヤーが止まってました。ヤサカタクシーの車。
運転手は、周りに誰もいないのにも関わらず、直立不動の姿勢で乗る人を待ってました。


女王が11時半頃お帰りになると、マスコミは神饌をねっとり、撮影。
それも終わると、さっきまでの賑わいが嘘のように、頓宮の周辺は急に静かになります。
御花神饌は夕方の還幸までこのまま飾られ、自由に拝観可能。でも、見物客はさほど、いません。
静かな頓宮は、神様がいても、子供の頃に遊んだ時のままに見えるから、不思議です。


演武の奉納がないのか巫女さんに訊いたら、ないんだとか。じゃあ、帰るか。
でも、宿題クリアで感無量となり、感無量過ぎて腹が減ったため、走井餅老舗へ寄り道。
改装したばかりの店内で、走井餅+月見団子+抹茶のセットを頼みます。値段は、600円ほど。
餅を数十個もまとめて買っていく客を見たりしながら、食らう。いい雰囲気です。幸せです。


走井餅を出て昼間の縁日をうろつくと、ホットドッグ・風月堂の雄姿あり。
営業してるかなと思って車の中をのぞくと、おっちゃんが 「いらっしゃい」 と起きて来ました。
感無量の空腹が止まらないので、ソーセージ&ハンバーグ両入りのミックス450円を、オーダー。
で、焼けたら、食う。小さい子が多い境内を、歩きながら、食らう。いい雰囲気です。幸せです。


数時間前に生類を憐れむ放生をしたばかりの放生川で、
「バッタ、これから死刑にします」 と宣告してる子供たちを見たりしながら、帰宅、そして睡眠。
また、睡眠です。餅とホットドッグを食いまくり、感無量の空腹が収まったので、感無量の睡眠です。
夕方また行くの、何かもう、面倒くさいなあ。見落とし宿題、片付いたしなあ。もう、いいか。


そんな惰眠の誘惑を退け、還幸を見るため改めてやってきた、17時半の一の鳥居。
向かう途中、神人が一家揃って歩くのをよく見かけましたが、鳥居前はさらに家族連れ、多し。
平日開催の去年より、地元の神人が何となく、いやかなり多い感じがします。気のせいでしょうか。
平安コスのまま、稚児の面倒を見てたり、露店でくつろいでたり。実に、祭な感じです。


対して頓宮の楼門前は、休日ながら見物人増加は、特になし。こんな感じ。
どうでもいいことですが、ネイティブのおばちゃんが見物人に、石清水レクチャーをしてました。
「祇園祭はバイトばっかりやけど、ここは神人がやってるから。由緒ある家やないとできない」 とか。
「稚児も人気で、だいぶ前から申し込まないと」 とか。身内の奉仕姿を見に来た方でしょうか。


そうこうするうち、頓宮内ではオーラス・還幸の儀が始まりました。
18時過ぎ、「見参」 のアナウンスが流れ、上卿が列立すると同時に、御鳳輦は頓宮前へ。
15分後、楼門の警備が起立する向こうで、中央の鳳輦が御簾の奥へ突入。遷霊が行われます。
頓宮内で見た時も極めて生々しい場面でしたが、このタダアングルで見ても、やはり強烈。


三基の御鳳輦へ遷霊が完了した18:45、行列は山上へ向け出発します。
いつものことながら、ゆっくり歩いてるはずなのに、何故かあっという間に通り過ぎる、行列。
妙にスピリチュアルな絵ですが、沿道からは 「写真撮るからちょっと待って」 の声が上がったり。
相槌神社の辺では、獅子舞に頭を噛んでもらおうと集まる親子連れの姿も。ネイティブです。


御鳳輦を低頭して見送ったあと、行列最後尾を追尾してみたの図。
ケーブルで先を越そうとしていつも失敗してたので、今回は根性の徒歩で追いかけてます。
もちろん還幸の儀の際も、神的配慮で電灯類は完全にオフ。危うい足元を照らすのは、提灯のみ。
道中、鳩茶屋が開いてましたが、照明はやはり、オフ。店の人は店前に出て、行列に低頭。


19時半、異様な霊気に満ちたビジュアルの本殿に、行列が到着したの図。
御鳳輦は、遷霊へ。行列は、解散。 「飲むやろ?」 と談笑しながら、帰っていく神人たち。
あとは特に動き、ありません。ガードマンも帰ってしまい、周囲はただただ無音と暗闇が残るのみ。
終了でございます。下院へ歩いて降りると、露店の多くが店仕舞いに取り掛かってました。

客層は、場所や時間や祭儀によって変動しますが、
まとまった客数と傾向があるのは、絹屋殿の儀と還幸の儀ということになるでしょう。
どちらも大体似た客層で、半分くらいがコアな単独者と物好き風の単独および少人数グループ、
残りの半分は地元の家族連れ+何となく来たらしき物好き系グループ各種。
カップルや女性グループなどのわかりやすい観光客風は、相変わらず少なめです。
カメラマンも大して多くはなく、俄かな感じの老人カメラマンもまた、少なめ。
その代わり、ちょっとスピリチュアルな意味でヤバ目な方が多めなのも、変わりません。
縁日などは、何度も書いてる通り、完全に地元の子供や親子連ればかりです。
舞楽奉納や御花神饌は、客層をどうこういうほどの人出はありませんが、
やんごとなき方が来られてる場合は、護衛の人に不審者と見なされないよう、
外見が不穏な同志の方は気をつけた方がいいかも知れません。

そんな石清水八幡宮の、石清水祭。
好きな人と行けば、より八幡大菩薩なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、八幡大菩薩です。

石清水八幡宮の石清水祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。【2012年度版・前篇】
石清水八幡宮の石清水祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。【2012年度版・後篇】

石清水八幡宮の石清水祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。 【1】 イントロダクション
石清水八幡宮の石清水祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。 【2】 神幸の儀-絹屋殿の儀
石清水八幡宮の石清水祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。 【3】 奉幣の儀
石清水八幡宮の石清水祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。 【4】 放生会-法華三昧
石清水八幡宮の石清水祭へ行ってきました。もちろん、ひとりで。 【5】 還幸の儀

【客層】 (客層表記について)
カップル:
カップル:若干
女性グループ:1
男性グループ:0
混成グループ:1
子供:0
中高年夫婦:若干
中高年女性グループ:1
中高年団体 or グループ:4
単身女性:1
単身男性:1

【ひとりに向いてる度】
★★★
色気や人圧のプレッシャーは、全然ない。
地元のDQNは祭にあまり興味を持たず近寄らないので、
そっち系のプレッシャーも少ないだろう。
ただ、さほど居心地がいいというわけでもない。

【条件】
平日金曜 19:00~21:00
土曜 01:00~04:00 10:00~13:00 17:30~20:00


勅祭 石清水祭
毎年9月15日 2:00~20:00 開催

石清水八幡宮
京都府八幡市八幡高坊30
通常拝観 だいたい6:00~18:00

山上本殿
京阪電車八幡市駅下車 男山ケーブル乗り換え
男山山上駅下車 徒歩約5分
ひたすら階段の場合は、徒歩約20分

山麓頓宮
京阪電車八幡市駅下車 徒歩約5分

石清水八幡宮 – 公式

勅祭 石清水祭 – 石清水八幡宮
石清水祭次第 – 石清水八幡宮

石清水八幡宮 – wikipedia