八幡駅近観光をやってみました。もちろん、ひとりで。

2013年7月20日(土)


八幡駅近観光をやってみました。もちろん、ひとりで。

「八幡って、石清水八幡宮の他に何があるの?」
よく訊かれる質問、ではありません。そもそも大抵の人は、八幡にあまり興味がないので。
しかし2013年の夏は、石清水八幡宮がかの 「そうだ 京都、行こう」 の提携先に選ばれました。
捏造された京都幻想を抱えた幾ばくかの人が、捏造されたCMと全然違う八幡さんに落胆したのち、
懲りずに 「私のお気に入り」 を捜し求め、物欲しげに八幡市内をうろつくことが予想されます。
その中には、背景ボカシの彼方やフレーム外へ抹殺された真実を愛せる心を持ちながらも、
一時の気の迷いで 「そうだ」 の導きに乗っかってしまった、独な同志の方もいるかも知れません。
消費者ボケした享楽乞食のレミングなど、ポンコツ街道でスクラップにされてしまえばいいのですが、
同志の方が、ケーブル乗って、八幡さんをお参りして、何なら松花堂弁当も食って、
「ふーん」 という感慨だけ抱いて帰ってしまうというのも、それはそれで、残念ではあります。
というわけで、石清水八幡宮参拝のついでに小さめの観光スポットを回るコース、設定してみました。
八幡には、流れ橋松花堂など結構いろんなスポットがあるんですが、生憎、いずれも遠い。
流れ橋は、アクセスも、よろしくない。レンタサイクルは無料ですが、今の時期、暑い。
なので、駅から徒歩10分程度の範囲内にあるスポットだけで、コースを設定。
駅近で一番スペクタクルで面白いのは、神応寺の記事でも紹介した駅前渓谷なんですが、
ここは本当にスペクタクル過ぎて、雨が降った後とかだと怖過ぎるのでパスし、
平地の穏やかな門前町をめぐり、最後はおやつのかき氷で締める仕様としています。
幼少期の私の行動圏である、静かでのんびりした八幡を、お楽しみ下さい。


まず、地図。記事は、右回りでルートを進みます。全長、約2.2km。
ケーブル駅と徒歩一分で接続する京阪・八幡市駅を出発して、まずは飛行神社を拝観。
後村上天皇行宮址を見ながら歩いて、らくがきができる寺・らくがき寺へ向い、そこで折り返し。
途中、安居橋高良神社へ寄り、駅前の走井餅でかき氷を食うという流れです。


出発前、駅前の観光案内所で、チラシを大量にパチるの図。
人口が増えまくってた時代には、観光になどおよそ興味のなかった八幡市ですが、
最近は案内所もリニューアルし、松花堂弁当など特産品展示ブースも作るなど、力を入れてます。
案内所、「そうだ」 のキャンペーン中は夜間も営業。レンタサイクルも、無料貸出中です。


最近、より駅の近くへ移設された、エジソンの顔面像。
八幡市民には常識なんですが、他所の人は知ったこっちゃないでしょうから説明すると、
かのトーマス・エジソンが電球を開発する際、フィラメントに用いたのが、八幡の竹だったわけです。
ゆえに、こんな感じで、エジソン推し。ちなみに、これから行くところも、発明ゆかりの場所。


エジソン像と、巨大な竹オブジェのあるロータリーを通り過ぎ、放生川を渡ります。
放生川は、勅祭・石清水祭放生会が行われる川。会場の安居橋は、もうちょい南ですが。
何故か橋が並んで二本もかかってるんですが、線路の逆側、全昌寺橋の方を渡ってみて下さい。
渡ってすぐに教会が見え、その向こうに 「飛行神社」 と書かれた建物が見えるはずです。


「飛行」+「神社」 。変といえば、結構、変な組み合わせです。
しかし、大きめの道に突き当たったところを右へ曲がれば、文字通りの神社が現れます。
正面に展示されてるのは、F104の本物エンジン。その向こうで輝くのは、ジュラルミン製の鳥居。
そう、こここそが航空関係者からの篤い崇敬を集める、飛行機の神様・飛行神社なのです。


境内には、大阪湾から引き上げられたというゼロ戦の機首が、展示されてます。
飛行神社は、ここ八幡の地で 「玉虫型飛行器」 による世界初の動力有人飛行に挑戦するも、
ライト兄弟に先を越され断念、後の人生を実業に生きた発明家・二宮忠八によって設立されました。
飛行機時代に突入し、続出するようになった犠牲者を見過ごせなくての、創建でした。


「神殿」 という言葉が相応し過ぎて、逆に妙な気分にもなる、神殿。
主祭神は、饒速日命。降臨する時に乗った 「天の磐船」 が、まるで飛行機だ、みたいな。
その両横には、航空殉難者を祀る祖霊社と、忠八が世話になった製薬業界の神・薬光神社、あり。
忠八は、私財を投じるのみならず、自ら神職にまでなって、空の安全を祈願したそうです。


神殿そばには、二宮忠八資料館が併設されてます。入館初穂料、300円。
私は何度か来てますが、せっかくなので 「航空安全守」 などが並ぶ受付で金を払い、入館。
あ、二宮忠八資料館、写真は撮るのは大丈夫ですけど、ブログなどの掲載は要申請だそうです。
申請すると断られそうで、断られると凄く落ち込みそうなので、うちは写真なしで参ります。


展示は、忠八の少年時代のあれこれ、鳥観察のスケッチ、
飛行に成功した 「カラス型飛行器」 や、夢破れた 「玉虫型飛行器」 の模型が並びます。
あ、「器」 は誤字ではありません。忠八にとって飛行機は、身にまとうイメージのものだったとか。
「ロボット」 ではなく 「モビルスーツ」 と呼べ、みたいな感じでしょうか。全然違うか。


展示の結構な部分を、軍関係のものが占めています。
といっても、飛行器を無視されまくった記録と、後世それを陳謝された記録ばかりですが。
資金が必要な忠八は、飛行器開発を軍に進言。でも相手にされず、自己資本での開発を決意。
結果として世界に敗れましたが、実業の能力は高く、作った会社は現在も営業してます


晩年の忠八は、もっぱら 「幡詩」 「幡画」 なる絵や詩の創作に励んだそうです。
和歌と飛行機のコラボが独特の味を生んでるそれらの作品も、館内では展示されてます。
あと、航空関係の書籍が並ぶ文庫、自衛隊からの奉納品、三菱重工寄贈の何ちゃらなどを見て、
HⅡ-Bロケット3号機&HⅡ-Aロケット22号機の祝打ち上げ成功パネルを拝み、見学終了。


相客は、普通の観光客女性と、普通の好き者系中年親父が、ひとりずつ。
特に 「そうだ」 な賑わいはありません。おかげで、神職さんから丁寧な説明をいただけました。
では、飛行神社を後にして、次のスポットへ向いましょうか。写真の道を、真っ直ぐ歩いて下さい。
で、リンナイの看板が上がってるちょい先の小さい交差点で、左折です。


曲がった角には八幡行宮址、進んだ先には写真左の後村上天皇行宮址、あり。
北朝相手に転戦を繰り返した、後村上天皇。八幡にも、来てます。本当に址のみですが。
行宮址を過ぎたら、最初の四辻を右折。右手に男山が見える道を、しばしのんびりと歩きましょう。
運が良ければ、ケーブルが見えるかも知れません。で、また出くわす四辻を、今度は左折。


怪しい告発看板の先にあるのが、次のスポットである、らくがき寺
「らくがき寺」 というのは、もちろん通称です。本名、直指山単伝庵。禅宗で、妙心寺派。
通称の由来はもちろん、落書きできるスペースがあるから。落書きというか、いわゆる願掛けの類。
あ、ここは基本、土日月の9:00~15:00しか一般拝観を受け付けてませんので、要注意。


「ご用がある方はブザーを」 とあるので鳴らすと、犬、吼えまくり。
出てきた人に 「拝観したいんですけど」 と言うと 「どうぞ」 とだけ言って、奥へ戻ってしまいました。
参拝料100円とあるけど、どこへ払うのかな。写真左の本堂は、受付はあるけど人の気配はないし。
よくわからんので、とりあえず 「らくがき」 場所である写真右の大黒堂へ入ります。


で、壁一面に書かれた、らくがき 。凝ってたり、適当だったり。


また、らくがき。素朴だったり、生々しかったり。


さらに、らくがき。寂し過ぎたり。


らくがきは、拝観料100円とは別に、300円の祈願料が必要です。
壁を塗り直さなくてはいけないからでしょうか。あ、参拝料も一緒に賽銭箱へ入れるわけですね。
壁面全部を真っ黒に埋める阿呆でもいたのか、推奨らくがきサイズを示す木枠も、ご丁寧に用意。
もちろん私も300円+100円 = 400円を賽銭箱に入れ、願いを書かせていただきます。


「幸福はもういらない」 って、見方によっては 「もう充分足りてるので」 とも読めるな。
もちろん、違いますよ。でも、こんな散策が楽しめるのは、確かに幸せなのかも知れません。
どうでもいいけど、境内は普通に檀家主体の寺なのに、大黒堂の中だけ観光テイスト、妙に強し。
といっても、ここも 「そうだ」 客は全然おらず、らくがきの主も枚方などの近隣系、多し。


じぃ~っとこっちを見つめる犬に見送られながら、らくがき寺を退出、
ぼちぼち駅へ戻りますが、ちょっと遠回りして放生川沿いをうろつくのも、いいもんです。
川そのものは特に清流でも何でもないですが、こうして眺める 「はちまんさん」 が、私は好きです。
加えて、この季節になるとカエルたちが放つ、ドスの効きまくった鳴き声も、私は好きです。


何度か紹介してる表参道の迂回路を歩くのも、いいでしょう。
放生川からさらに山側、東高野街道でもある、門前町の雰囲気を最も残したエリアです。
三条小鍛冶宗近ゆかりという相槌神社の先にある饅頭屋・みささ堂は、只今絶賛夏季休暇中。
以前は 「涼しくなるまで休みます」 という無期限休暇宣言が、衝撃を与えたものでした。


八幡観光のシンボルである安居橋も、もちろん忘れてはいけません。
ついこの間まで架け替え中で、沈下橋みたいな状態でしたが、めでたく竣工致しました。
そういえばこの橋、「そうだ」 CMの1カット目に出てたな。親子が橋を渡るとこ。伊勢神宮っぽいの。
あんな先入観を植え付けられた奴が、現場を見たら、一体どう思うんでしょう。気の毒です。


放生会の舞台・安居橋へ寄ったなら、石清水祭の会場・下院にも寄るのが、筋。
しばらく前に改修された頓宮南門の朱色が、晴れ渡った空と良いコントラストを生んでます。
その左横には、高良神社太鼓まつりの記事では神木の写真を撮り忘れてたので、ここで御紹介。
樹齢700年のタブの木です。私が子供の頃は、この奥から山の中へ入っていったものでした。


高良神社を出て、頓宮を通り過ぎ、北門へ。
暗いですが、菊紋入り。昭和天皇の即位式に使われた春興殿正門が、下賜されてます。
門を抜けた先、左手には池、あり。かつて放生川がドブ川だった頃、放生会を行っていた池です。
さらにその奥、一の鳥居の先にあるのが、走井餅老舗。さあ、おやつの時間にしましょうか。


走井餅老舗、夏のおすすめ、走井餅しぐれ。
宇治抹茶のかき氷のサイドに、さりげなく八幡門前名物の走井餅が添えられてます。
「全然さりげなくない」 「餅が餃子に見えてしょうがない」 とか、思っても口に出してはいけません。
味は、かき氷と走井餅を足した感じ。食い方が歪なのは、私の性格を反映してるだけです。

こんな感じで、八幡市駅近観光は、おしまい。
客層は、本文中に書いてる通り、人自体がほとんどいません。静かなもんです。
飛行神社もらくがき寺も、B級スポットとかの失礼な呼称ではそれなりに名が通ったところですが、
では強烈な観光的魅力や面白味があるかといえば、そういうもんでもありません。
特に何かを期待することなく、散策主体で、のんびりとうろついてみて欲しい。
幼少期、このあたりが行動圏だった人間としては、そう願うばかりです。

そんな、八幡駅近観光。
好きな人と歩けば、より八幡なんでしょう。
でも、ひとりで歩いても、八幡です。

石清水八幡宮の夏の夜間特別拝観へ行ってきました。もちろん、ひとりで。
八幡ナイトウォークをやってみました。もちろん、ひとりで。


【ひとりに向いてる度】
★★★★
むしろ、18きっぷなどで適当な駅で降りて、
全然知らない、特にスポットも無い街を歩くのが
お好きな方には、結構おすすめ。

【条件】
土曜 12:30~15:00

飛行神社
京都府八幡市八幡土井44
8:00~17:00
京阪電車 八幡市駅下車 徒歩約5分

飛行神社WEBサイト – 公式

らくがき寺 (単伝庵)
京都府八幡市八幡吉野垣内33
土・日・月曜+正月三箇日 9:00~15:00
京阪電車 八幡市駅下車 徒歩約10分

単伝庵 – 一般社団法人 八幡市観光協会

石清水八幡宮摂社 高良神社
八幡市八幡高坊30
拝観終日自由
京阪電車 八幡市駅下車 徒歩約5分

高良神社 – 一般社団法人 八幡市観光協会

走井餅老舗
京都府八幡市八幡高坊19
8:00~18:00
京阪電車 八幡市駅下車 徒歩約2分

やわた走井餅老舗 – 公式